番候補 4
翠子も他の竜も驚いてロウドを見る。
ロウドは本当に嫌そうだった。
「だからと言ってヤトを認めた訳では絶対ない。」
ロウドはヤトを睨みながら言葉を続ける。
「それでも、ヤトは我らがアキコの元に行けなかった間、アキコを守ってくれた。何も知らず人間の国に表れ、下手をすれば人間に利用されるだけの存在にされたかもしれないアキコを。その件に関してだけは感謝する。感謝を向ける相手を訳なく否定はしない。……竜の矜持にかけて誓う。」
ロウドは、そう宣言する。
「ロウド!」
翠子はあまりの嬉しさに、ロウドに体当たりするように飛びついた。
多少よろけはしたがロウドはしっかりと受け止める。
「まだヤトを認めた訳ではない。偏見を持たぬと決めただけだ。」
「それでもいいわ!ヤト自身を見てくれれば、それで!」
翠子に満面の笑みを向けられてロウドの尾は嬉しそうに揺れる。長い首を翠子の首に絡ませようとした。
しかしそんな2頭に、横やりが入る。
「あ〜!ずるいロウドってば、可愛い子ちゃんからそんなにスリスリされて。……わかった。それなら俺もその人間をわけもなく蔑むのは止めるよ。」
ギョクはそう宣言する。
他の竜が苦い顔でギョクを見た。
ギョクは、どうだと言わんばかりに胸を張る。翠子に向けて赤い翼を広げた。
「可愛い子ちゃん♪何時でも飛び込んで来てくれて良いよ!」
翠子は面食らう。
「え?」
「近づく必要はない。」
ロウドがサッと翠子とギョクの間に体を割り込ませた。
「え〜っ?ロウド横暴!」
「お前の調子が良すぎるだけだ。」
「酷いよね。ロウドってば。ねぇ、人間さんどう思う?」
ギョクはそう言って、はじめてヤトの方を向いた。
「ロウドみたいな俺様を可愛い子ちゃんの番にしたらたいへんだよ。人間さんなんかきっと苛められる。その点俺ならおおらかだし、人間さんが可愛い子ちゃんの傍に居ても気にしないよ。――――ねぇ、俺を選びなよ。」
気安く言われて、ヤトは苦笑する。
「ロウド様だけではないでしょう?竜は愛情深いと聞いています。貴方達が、ご自分の番を独占したがらない訳がない。誰もが同じ。……ならば私は、私を“ヤト”と名で呼んでくださるロウド様を好ましいと思います。」
ヤトの返事に、竜達はポカンとした。




