竜の国 2
ガァグルゥゥ〜!と竜が咆哮する。
グォォグルゥ〜!とロウドが返す。
咆哮は咆哮なだけで意味などないのだが、無限の空に響き渡る轟音に翠子は圧倒される。
遠くに見えていた竜達は、あっという間に近づいてきた。
それは胸のドキドキするような壮観な光景だ。
3頭の竜が翠子の目にはっきりと入った。
赤と鈍色、黄褐色の竜だ。
編隊を組んで飛んできた竜は、飛び続ける翠子とロウドの周りをクルリと旋回し、その後両脇に2頭が並び、残りの1頭は後ろにつく。
飛びながらも、彼らの驚愕が翠子に伝わってきた。自分の背には人間のヤトがいるのだから当然だろうなと翠子は思う。
なのに――――
『ヒェェ〜!物凄い美竜!どうしたんだ?』
聞こえてきたのはそんな声だった。
(え……私のこと?)
3頭の竜に注目されて、翠子は面食らう。
『うるさい。黙れ。彼女は私が長の命を受けて案内してきた竜だ。近づくな!』
その3頭に対するロウドの剣幕は凄かった。
『へぇ〜?じゃあ彼女が例のとんでもない力の波動の持ち主なのか?とても信じられないな。』
しかし、ロウドの怒りなどものともせずに、翠子の右隣を飛ぶ、最初に話しかけてきた赤い竜が、驚き覗きこんでくる。長い首が伸びて、顔が近づいた。
ロウドよりも幾分小さいその竜は、3頭の中でも特に小さく見える。
(っていうか、ロウドは特に大きいんだけど……色のせいでそう感じるの?)
深い碧色のロウドの姿は、他の竜より抜きんでて大きく見える。
話しかけてきた竜は赤竜とでも呼ぶのだろうか?小さくて光をはじくと赤く光る鱗がなんだか可愛らしい竜だった。
「こんにちは。」
思わず笑って翠子は挨拶する。
『!…………っ。か、か、か――――』
何故か赤い竜がどもった。
「か?」
翠子は首をかしげる。
『か、か――――可愛い!スッゲェ、可愛い!何、この可愛い娘?!』
赤い竜が、大声で叫んだ。
 




