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界渡りの物語  作者: 九重
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旅立ち 12

ヤトを連れて行くことは決まったが、深い傷から回復したばかりのヤトの体調を考え、今日はこのまま此処で一泊する事になる。


先刻からやたら翠子にかまってくるロウドを振り払い、翠子はヤトと休むため大地に丸くなった。

いつも通りにヤトは翠子の柔らかな毛の部分に潜り込もうとする。



『!…な、な、何をしているんだ!!』



しかし、その瞬間、ロウドが物凄い勢いで怒鳴った。


翠子とヤトはキョトンとする。


「寝ようとしているんだけど?」


翠子の言葉に、ロウドは尚怒り出す。


ヤトは訳がわからないといった顔をしながら、何気なく手を翠子のふかふかの毛皮に触れた。



『その手を離せ!!』



ロウドが絶叫する。



『お前が触れているそこは、そこは…!』



ロウドは、もはや言葉も出ないようだった。




その様子を見て、翠子はようやくロウドが何を言おうとしているのかに思い当たる。


(そうよね。やっぱりここ(・・)ってここ(・・)よね。)


体は竜になっても体の各器官への感覚はどうやら間違っていないようだ。

翠子のやわらかな毛に包まれたこの場所は……竜の生殖器官のようだった。

つまり、その……なんなのだ。



ヤトも思い当たったのか、顔を赤くする。


しかし――――


「別にそんな気にしなくても。私とヤトで間違いが起こるはずもないんだから。」


そう、人間と竜ではどこをどうしても何もあるはずがない。


(犬に口をなめられても気にしないのと同じよね。)


……しかし、その考えはダメなようだった。



「そんな訳あるか!」



翠子は思いっきり叱られる。

しかもロウドのみならずヤトまで怒ってきた。


「何故最初にそう言わなかった!」


「だって、ヤトが暖かくて気持ちいいって。」


なんだかいい香りがするとまで言って、匂いまで嗅がれてしまったのは恥ずかしい思い出だ。

もちろんそんな事まで言わないが、翠子のせいだけではないと思う。


ロウドの体からは、先程より余程大きな怒りのオーラが立ち上った。



「いくら俺がそう言ったとしても、ダメなものはダメだ!」


「え〜っ?」


それは理不尽と言うのではないだろうか?


翠子は口を尖らせる。



しかしその後、翠子は、ヤトとロウド2人がかりのお説教をみっちりとくらってしまったのだった。

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