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界渡りの物語  作者: 九重
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旅立ち 5

悲しい程にどこまでもセタに忠実なハヌの捨て身の攻撃がヤトを狙う。


ヤトはハヌを打ち払った。

しかし、それは同時に決定的な隙をセタに与えてしまう。


「死ね!!」


セタがヤトに剣を突き立てる!





その瞬間を翠子はスローモーションのように見ていた。


セタの剣がヤトの腹部に刺さり、ヤトの剣がセタを斬り裂く。


真っ赤な血が飛び散った。



「イヤァ〜ッ!!!!」



翠子の悲鳴が響く。

叫びながらも翠子の体は無意識に動き、あっという間のヤトの元にかけつけた。




腹部からドクドクと血を流したヤトの体がゆっくりと崩れ落ちる。


それを翠子は自分の口で優しく受け止めた。

決してこれ以上の傷を与えぬように慎重にくわえる。

翠子の口の中に鉄臭い苦い味が広がった。


同時にヤトを癒す力が湧き出て注がれる。


しかし、それが効いたかどうかはわからなかった。




ヤトをくわえたまま翠子は飛び立つ。

細心の注意を払って飛びながら、空中に停止して翠子を待っていたロウドに近づいた。


冷たい黄金の瞳が口を血まみれにして人間をくわえる翠子を見る。



『その人間を離せ。』


『イヤよ。』


一切口を動かさず思念で翠子は答えた。


『人間を連れて行くわけにはいかない。』


『置いて行けないわ!』


そんな事できるはずがなかった。


『いまだかつて人間が竜の国に入った事はない。』


『じゃあ今を、そのはじめてにして!』


翠子は一歩も引かなかった。



『ダメだ。』



ロウドもまた意見を変える様子を見せない。


ロウドを睨み付けた翠子は、そのまま翼をきってロウドに背を向けた。

風を纏い上昇する。



『アキコ!』



振り向きもしなかった。



『待て!アキコ。』



焦ったロウドが眼前に回り込んでくる。


『どこへ行くつもりだ。』


『どこでもいいわ。ヤトを安全に休ませて回復させられる所なら。』


『それは人間だぞ。』



『当たり前でしょう!そこをどきなさい!!』



翠子は、ひどく興奮していた。

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