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界渡りの物語  作者: 九重
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旅立ち 1

2頭の竜が動く姿に、惚けていたセタが正気に返る。


「竜様!」


その声は風に阻まれ竜には届きもしないようだった。


(行ってしまう!…私の竜が!)


「竜様!私を見捨てないでください!」


声を枯らし悲鳴のように叫んでも、セタの声は届かない。




絶望の中でセタがダメかと思った瞬間――――


「アキ!」


声が聞こえた。

それは声量だけ見ればセタの叫びより余程小さな声だった。

しかし、その小さな声が、何故かよく通る。



「アキ」



そこには息を切らし肩で大きく息をする男が1人立っていた。

急いで走って来たのだろう。その表情は苦しそうに歪んでいる。



「ヤト」



呟きは、黒い竜……翠子から聞こえた。

ヤトがそこに立っていた。






ヤトは、あの後直ぐにアキを追っていた。


アキが、あの優しい竜が傷つき泣いているのだろうと思えば、ヤトの心は焦りに焦った。

アキが湖に戻っただろう事は、ヤトには直ぐに察しがついた。

そこ以外にアキが知っている場所はない。

だだ、人の身にとってこの湖は、谷間の村からはとんでもなく遠かったのだ。

結果ヤトは、翠子に飛ばされた場所が此処や王都に近かったセタに遅れをとってしまった。


来る道中、空にアキではない竜の姿を見た時は、アキの身に何が起こるのか本気で心配した。


そしてこの場に着き……ヤトは一目で状況を見てとった。


惚けたようなセタの姿。


寄り添い飛び立とうとする2頭の竜。




その様子に心底安心しながら――――ヤトの胸は何故か痛んだ。



「アキ!!」



ヤトは叫んだ。

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