ロウド 2
ロウドの首が翠子の方に伸ばされる。
まるで請うように下から伸びた首が、優しく翠子の首に触れた。
ゆっくりと、絡まってくる。
翠子はゾクリとした感覚が体を走るのを感じる。
『美しいアキコ、さあ行こう。』
その声は翠子の脳に直接響いた。
(結局美しいは、つくの!?)
翠子はガックリと項垂れる。
ロウドがクツクツと笑う振動が、絡まった首から伝わった。
『アキコは誉められるのが苦手とみえる。』
「!?なんで聞こえているの。」
翠子は慌ててロウドから離れようとする。
多分、触れ合っているから互いの心の声が聞こえるのだろうと思う。
逃さずロウドはなお深く首を絡めてきた。
大丈夫だという意志が翠子に伝わる。
『わかるか?聞こえるのは明確な意志だけだ。』
はっきりと言葉にして心に思い浮かべない限り互いの心は読めないのだと、ロウドは教えてくれる。
……そういうことは先に言って欲しいと翠子は思う。
それが伝わったロウドは、「すまない」と心で返してきた。
互いに駄々漏れの思考に翠子は頭を抱える。
ロウドは楽しそうに笑った。
『アキコお前は幼い。竜同士の当たり前のやりとりさえもわかっていない。なぜお前のようなものが単体でこんな所に居るのかはわからないが、ここは我らの居る場所ではない。』
ロウドの首が空の一角に向けられる。
『帰ろう。我らの世界に』
おそらく、あちらに竜の世界があるのだろう。
翠子はピタリと固まった。




