ロウド 1
同時に翠子の力を解消させようという力が働く。
翠子は、ホッと息を吐いた。
上空から風が降りてくる。
見上げた先に居たのは、堂々たる体躯の竜だった。
その体は深い碧で目の前の湖より尚深い海を連想させる。
翠子より一回り程大きいだろうか?
翠子の竜の目でも、近付いてきた竜の翼の端から端までを映すのは難しかった。
黄金に輝く瞳が翠子を見る。
『止めるのだ。幼い眷族よ。』
竜はそう言った。
『そのモノはお前の力を受ける価値のないモノだ。そんな事をすればお前の存在が穢れる。』
竜の声は朗々と響き渡った。
「竜……」
本当に本物の竜の登場に翠子はポカンとした。
(スッゴイ。ファンタジー映画みたい。)
しかもどんなCGよりも迫力満点だ。
実物なのだから当たり前だった。
碧の竜はゆっくりと翠子の側に降りてくる。
やはり自分より大きなその姿に翠子は魅入った。
『幼く美しき眷族よ。先頃放たれた強大な力はお前のものか?』
ボーッとしながら翠子は考える。
(それって、ひょっとしてこの前、谷間の村で空に向けて撃ったあの力の事?)
それぐらいしか心当りはない。
「多分、私だと思います。」
翠子は慎重に答える。
竜はそうだろうなと長い首を縦に振った。
『力の波動が今ほどの力に似ていた。圧倒的にして恐ろしいほどに美しい力だ。我はあれ程の力の持ち主を探すために竜の長より使わされた者だ。名をロウドという。』
ロウドと名乗った竜を翠子は見上げた。
『幼く美しき者よ。お前の名は?』
「―――アキです。」
聞かれて翠子は素直に答える。
いつまでも、幼く美しき……なんて呼ばれていたら、恥ずかしくて穴に隠れてしまいたくなる。
なのに竜はそれは違うと言って首を横に振った。
『卑しくも竜たる者が人と同じような2文字の名前などありえない。本当の名を名乗れ。』
竜の説明によれば、この世界の名前は竜は3文字それ以外は2文字と決まっているのだそうだった。
もちろんそれ以外に家名があるのだがそれは普通は使わないらしい。
(苗字みたいなもの?)
翠子は首を捻る。
もっともその事を知っているのは竜だけで、人は単純に名前というのは2文字だと思い込んでいるのだそうだった。
(だからヤトは私をアキって呼んだのね。)
翠子としては、別に自分の名はアキでかまわないと思っている。体はともかく心は人間なのだ。
(それに、ヤトはアキって呼んでくれるもの。)
しかし、目の前の竜はどうやらそれでは気に入らないようだった。
「私は、アキコです。」
仕方なしにそう答える。
『アキコ、良い名だ。』
竜…ロウドは満足そうに頷いた。
名前が2文字だったり3文字なのは、別に作者が長い名前を考えるのが苦手だとかいう理由ではありません!(多分……)
ツィッターで呟く際に140文字制限のため短い方が良いというのが理由です。
ご了承ください。




