谷間の村 7
「あなたは私を探してきたの?」
恐る恐る翠子はセタに訊ねる。
「そうです。至高のお方。辺境にあなたがいると聞きつけ、ぜひお目通り願おうとお伺いしたのに、あなたは私の目の前で飛び立ってしまわれた。それでも、我が国から出た様子はなかったようなので、ずっとお探ししていたのです。」
セタは頭を下げた。
…元凶確定である。
翠子は冷や汗ダラダラだった。
このままでは自分のせいで村の人達に迷惑がかかってしまう。
「わ、私はあなたになんか用はないわよ。」
「そういうわけにもまいりません。どうやらあなたは、ご自分の存在の大きさに無頓着でおられるようですね。」
セタは困ったように笑った。
「竜は全てを統べる最強にして最大の生物です。あなたの意志1つで我が国、いいえ人という種族の命運が決まると言っても過言ではありません。そんな存在を放っておけるはずがないでしょう?…しかもよりによって、反逆者の村などに。」
セタは、呆れたように話す。
翠子は、びっくりして目を見開いた。
(それって、どんな化け物?)
最大なのは認めてもいいけれどと思ったところで…翠子は母の言葉を思い出す。
そう言えば界渡りはその世界の頂点に立つ生物に変化するのだった。
翠子が竜になったという事はつまりはそういう事なのだろう。
「へっ?アキってそんなに凄い奴だったのか?」
キサが驚いたように呟いた。




