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界渡りの物語  作者: 九重
23/111

谷間の村 1

「アキ〜!乗せて。」


子供達が、わらわらと巨大な竜に駆け寄って来る。


「お手伝い終わったの?」


「うん!俺、芋の皮むき10個もしたよ。」


「私はお風呂掃除。つっかれたぁ。」


我も我もと子供達は、竜に申告する。


「そっか、みんな頑張ったね。乗っても良いよ。」


竜は子供達の前に、黒く大きな翼を差し伸べた。


自分の山のような巨体をよじ登り、キャァキャァと歓声を上げながら滑り降りる子供達を、翠子は温かな目で眺める。





翠子とヤトは、ヤトの知り合いが居るという深い谷間の村にお世話になっていた。


世間から断絶されたようなこの村は、自給自足の小さな村で、ひっそりと隠れるように存在している。

全員合わせても50人程の小さな村に、夜陰に紛れたヤトと翠子が現れた時の騒ぎを思い出し、翠子は複雑な心境になった。



(悪い人たちじゃなかったんだけど…)



男達の全てが武器を持って飛び出てきた時は、正直翠子はびびった。


「イヤァ〜、ごめんなさい!」


訳もわからず焦って、人間に対して平謝りに謝る竜など前代未聞だろう。

そんな翠子を苦笑しながらヤトが宥める。


「大丈夫だ。アキ。」



「!?…そのお声は、ヤト様!」



一番前にいた男が叫んだ。


(ヤト様?)


翠子は目を見張る。


「ヤト様、これはいったい?」


竜に警戒しつつ男が近づいてくる。


その男の前に、ヤトはひらりと翠子の背から飛び降りて見せた。

全員が目を丸くする。


「ああ。事情はこれから説明する。とりあえず武器をしまえ。アキが怯えるだろう。」


「怯える…誰が?」


男達はポカンと口を開けた。


「アキ…彼女のことだ。こう見えてアキは繊細なんだ。」


庇われて嬉しそうに擦り寄る翠子の首を、優しく撫でるヤトに皆が驚いていた。

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