飛翔 2
翠子とて自分の状態はわかっている。
あのふわふわ風船で浮くことが、飛翔と呼べるようなものでないことだけは間違いなかった。
「大丈夫だ。」
ヤトの言葉にも頷く事は出来ない。
「お前は既に空気を操っている。飛ぶ原理など俺には分かりようもないが、お前が飛べる力を持っている事だけは分かる。浮け!そして空を自由に飛ぶんだ。お前はその資格のある存在だ。」
例えその言葉が本当でも翠子は頷けなかった。
(だって…)
ヤトはそんな翠子の様子にフッと笑を浮かべた。
「大丈夫だ。俺なら死なない。」
翠子は目を見開く。
ヤトは、翠子が万が一失敗した時のヤトの生死を心配している事などとうにわかっていたのだった。
(こいつはそういう竜だ。)
だからヤトは静かに笑う。
「お前と共に在ることが俺の一番の安全だ。だから心配要らない。」
言い切るヤトの顔は自信に満ち…たまらなくイケメンだった。
(もうっ、もうっ、もう!)
そこまで言われて、できないなんて翠子には言えなかった。
ヤトの信頼に応えたい!
翠子は、今までで一番大きな風船を翼の下に想像する。
(軽くて丈夫で絶対破れない巨大風船!)
何かの商品のキャッチコピーのような呪文を翠子は唱えた。




