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飛翔 1
「アキ?」
「何でもない。今絶賛反省中…」
不審そうなヤトに、翠子は力なく笑う。
自分のしてしまった勘違いが、ものすごく恥ずかしかった。
「あ、でも大丈夫よ。私、ヤトの言うことなら何でも聞くから。」
それでも翠子はなんとかそう話す。
それは翠子の間違いない思いだった。
その言葉にヤトは、心配そうながらもホッと息を吐く。
「よし。じゃあ、早速逃げるぞ。飛べ!アキ!」
「…へっ」
(飛ぶ?)
翠子は一瞬固まる。
そんな翠子の様子に構わず、ヤトは木から飛び降りると、何時でもコンパクトにまとめてある荷物を持って再び木に昇り、そこからヒョイっと翠子の背中に飛びうつった。
「え?え?ヤト?」
「ちょっと我慢してくれ。」
言いながらヤトはロープで自分を翠子の体に固定する。実に見事な手際だった。
「よし!いいぞ。」
ロープがしっかり結ばれ自分が振り落とされない事を確認してヤトが声を上げる。
(え?いいって…)
「飛べ!アキ!」
「って、む、無理!」
翠子は長い首を大きく左右に振った。




