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8 買い食い

「へぇ、じゃあリグルちゃんはどこで生まれたか覚えてないの?」


「はい。家族と過ごしていたことは覚えているんですが、顔も思い出せないんです」


「災難だったねぇ。よし!これからは私がおねえちゃんになってあげる!」


「ホントですか!?えへへ、うれしいなぁ」


「(か、可愛い!何この子!)」


アルデミランとリグルは学園長と話を終えたあと、入学するためにリグルの情報を紙に書いていた。

ただ、リグル自身ひどく曖昧な記憶を糸を手繰るようにして思い出しながら書いていたので、

あまり埋まってはいない。

紙には入学届けと書かれており、


名前   リグル・サーティス

性別   女

年齢   10歳

本    未

住所   不明

家族構成 不明

連絡先  不明


といった具合だ。これで入学できるのがおかしいが、

学園長のゴリ押しでなんとか入れることになった。

今は全て書き終え、アルデミランとの雑談を楽しんでいる。


「ところでリグルちゃん。これから泊まるところあるの?」


「はい、ガーランさんが部屋を貸してくれました!」


「あらぁ、よかったじゃない!それでガーランさんはいつ来るのかしら?」


「うーん?時間は聞いてないです」


「あらあら!それじゃあこっちから行ってみる?歩いて町並み見てみたいでしょ?」


「はい!それじゃあお願いできますか?」


「あ、ちょっと待ってね。ほかの人に受付変わってもらってくるから」


そういうとアルデミランはパタパタと別の部屋に入っていった。

少しするとまたパタパタと戻ってくる。


「お待たせっ!それじゃあ行きましょうか」


「はいっ!」


そうして二人は手をつないで仲良く街へ繰り出した。





「いろんなものがあるんですねぇ」


「学園がある街は大体大きいのよ。むしろ学園があるから大きいのかしらね」


「そうなんですか?」


「そうなのよ。どこにでもあるわけじゃないのよね。

 誰もが通る場所だから自然と商人なんかが集まってきてって感じね」


「なるほど!あっ!アレなんですか?」


リグルが指差したのは露天で売られている紫色の粒が鈴なりになっている果物を指差した。


「あぁ、あれは風鈴葡萄ね。皮がとっても固くて、風に吹かれると風鈴みたいに澄んだ音を出すのよ。 あれのジュースは美味しいわよ!お酒もね」


アルデミランの手をつないであたりをキョロキョロと見回すその姿は見ていて可愛らしく。

風鈴葡萄を売っていた店主はジッと見られているのことに気づいたのか、にこやかな笑みを浮かべてこちらを見ている。


「初めて見るみたいだし、買っていきましょうか!」


「いいんですか!?」


「えぇ!食べたいものは食べたい時に食べるものよ!」


そういってアルデミランはリグルの手を引いて露天に近づいた。


「へい、いらっしゃい。風鈴葡萄はどうだい?今が旬だよ!」


「ひと房もらえるかしら?」


「あいよ!8リーンだ。嬢ちゃんたちは綺麗だからもうひと房おまけしちゃおう」


「おほほほ、嬢ちゃんだなんてお上手ね」


そう言ってアルデミランは店主に10リーンを握らせる。


「毎度有り!いろんな果物揃えてるからまた来てくれよな!」


金払いのよさに笑みが少し濃くなった店主をあとにしてまた二人はガーラン商会へ向かって歩き始めた。


「これが風鈴葡萄ですかぁ」


ひとつもいで見てみればそれは紫色の宝石のように透き通っており、芸術品のようだ。


「えぇ、皮が噛めないくらい硬いから注意してね。大体はハンマーか何かで叩いて中身を食べるのよ。でもね」


そう言うとアルデミランは豊満な胸に手を当てる。


すると微かに発光し、胸元から手帳ほどの本が飛び出してきた。


「アルデミランさんも持ってるんですね」


「ふふ、持ってない人なんていないわよ。リグルちゃんもちゃんと持ってるわ。まだ見えていないだけ。それで風鈴葡萄の食べ方なんだけどね」

アルデミランは葡萄をリグルから受け取ると、一言。

【氷結】

と唱えた。

すると右手に乗っていた葡萄に霜が降り、そして凍ってしまった。


「凍らせると皮と一緒に食べることができるのよ。はい、あーん」


アルデミランが一粒掴むとリグルに向ける。


「あ、あーん」


ころりと口の中に転がり込んできた葡萄を噛むとカリッとした感触のあとに、冷たさと甘さが来る。皮はパリパリと飴細工のようで、中の実はシャーベットのようだった。


「美味しいっ!」


「それは良かったわ。私ジュースも好きだけどこの食べ方も好きなの」


「ジュースも飲んでみたいなぁ。時間があったら街探索したいな。アルデミランさんもその時一緒に

来てくれる?」


必然と上目遣いになったリグルにアルテミランが射止められる。


(やっぱり可愛い!一緒に行くならお着替えしてー、カフェで昼食食べてー。うふふふふふ)

「もちろんよ!絶対呼んでね!」


「はい!ありがとうございます」


そのままあれは何?これは何?と話しながら進んでいく。


「それでね、あ、着いたみたいね」

(もうちょっと話したかったなぁ……)


「ここまでありがとうございました!」


「いいのよー。あと、学校じゃなければ敬語じゃなくてもいいわよ!私たち友達じゃない!

 それとも、姉妹がいいかしら?」


「え、えっと、じゃあ、お友達でお姉ちゃんじゃだめ……かな?」


期待した目を向けられたアルデミランは


「もう、リグルちゃん可愛すぎ!」


がばっと抱きついた。


「きゃっ!ちょ、ちょっとアルデミランさん!?」


「アルデミランでいいわよぉ。あぁ、お肌ぷにぷにすべすべ、羨ましいわぁ」


「おいおいおい、お前ら人の店ん前で何してんだ。イチャつくなら中でやってくれ」


「あら、ガーラン。遅かったじゃない。連れてきちゃったわよ」


「アルデミランさん!離して~。ガーランさん助けてっ!」


「そろそろ迎えに行こうかと思ってたんだよ。こんなに早く申請通るとは思ってなかったぜ」


「それはあとで学園長から話があると思うわ。

 それより男ならしっかり女性をエスコートしなさいよ。

 レディーを待たせるなんてナンセンスだわ」


「無視っ!?」ガーン


「あぁ、そいつぁ悪かったな。次は気をつけますよマダム」


「その言い方、好きじゃないわねぇ」


「おぉ、怖い怖い(笑)」


「血は見たくないから、そろそろお暇するわ。それじゃあねリグルちゃん」


「ぜぇ……ぜぇ……は、はい。それじゃあよろしくお願いします」


「えぇ、申請は通ると思うから安心していいわ。それじゃあね」


「はい」


ばいばーいと手を振り、何度も振り返るアルデミランを見えなくなるまで見ていた。


「そいじゃあ入るか」


「はい!お願いします!」


「案内するぜ。自慢の我が家だ」


お気に入り二名になってて自分でびっくりです!ありがとうございます!

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