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5章 到着


「ねぇ」


「なんだ」


「お金と命ってどっちが大事?」


「時と場合にもよるが、今は……命だな」


バウワウと吠える声はもうすぐ後ろまでに迫っており、

とてもじゃないが金を心配している場合では無かった。


「もしかしたら逃げきれるかもと思ったんだがなぁ」


ぼやくように言ったガーランの目線は先に見えている白い街壁に注がれていた。


「俺の一ヶ月の儲けが……」


しかたねぇよなぁ、しかたねぇかぁ。とブツブツ言いながら

【サモン】

と一言唱えた。

するとガーランの胸元から一冊の本が飛び出してきた。

名は【護衛のススメ】


「あぁー!仕方ねぇ! この畜生どもが! 出血大サービスの大盤振る舞いだ!


受け取りやがれぇ!」


ガーランは腰にぶら下がっていた財布を本に叩きつけて後ろにぶん投げた!

ぶん投げた本は財布を吸い込むとばらりとほどけひとつの物を形作った。

それは人だった。

紙が集まってできたはずだが外見は人と見分けがつかず、右手には一本の長剣が握られていた。

そして荷台に着しすると伸びをして


「あ゛ー!久々のシャバだぜぇ……畜生、もっと呼べってんだご主人様よォ」


「馬鹿言うんじゃねぇ! お前呼ぶのにいくらかかってると思ってやがる!


白金貨1枚だぞバカ野郎!」


「それくらいケチケチすんなよ、お前んとこじゃそれくらい朝飯前だろ」


「バカ野郎!商会の金に手出せるか!自腹だよ! いいからそこの犬っころをぶち殺せ!」


男は胡乱な目をウルフに向けると


「あぁん、こんな可愛らしィー魔力を持ったワンちゃんが今回の相手ですかァ? まぁいいけどさ」


ついに追いついて飛びついてきた一匹に一閃。

真っ二つになったウルフはそのまま流れていき、

死体を避けたウルフ達がさらに追従してくる。


「なんだァ?やけに必死じゃねぇか」


まぁ、いいか。そう言いながら飛びかかってきたウルフを一撃を葬り去っていく。


「ガーランさん、彼は!? なにか本から出てきたけど! あとあの本ってどこから!?


胸から出てきたけど!」


「うるへー。お前さん本も知らねぇのか。 まぁ、あいつは護衛だな。 


名前はヨーヘイという。 本はまぁ、お前がこれから行くとこで教えてもらえ」


「これからいくところ?」


「あぁ、学園グリモア。様々な本があつまり、そして出て行く場所だ。 


お前も色々学ぶことになるだろうさ」


「おーい、ガーラン終わったぜ」


「おぅ、お疲れさん」


そのままヨーヘイは後ろの荷台に横になってしまった。


「また本にならないの?」


「あ?あぁ、ヨーヘイか、あいつは最低一ヶ月からの契約しかできねぇんだ。 


だから一ヶ月はずっとあのまんまよ」


「へぇー」


後ろを見ると手をひらひら振ってこっちに答えてくれた。

結構気さくな人なのかもしれない。


「結局使っちまったなぁ……」


「そういえばさっき白金貨って言ってたけどそれってどれくらいの価値があるの?」


「あぁ、普通に暮らしてりゃあ銀貨までか、白金貨があれば、そうだなぁ。


黒パンとうっすいスープを死ぬまで食えるんじゃねぇかな」


「……わかりにくいね」


「俺もそう思った……お、結構飛ばしたからな。もう入れそうだな」


目の前には先ほどちょっと遠くにあった外壁がもうすぐそこまで迫っていた。

跳ね橋が降りていて、そこに少しの列が出来ている。


「あそこで身分証明をして金を払ったりなんだりしてんのさ」


「私証明できるもの持ってないよ?」


紹介状は名前が読めないし、そもそも使えるかわからない。


「今回は俺が払ってやるから安心しろ」


話してると自分たちの番になった。


「ガーラン殿!お疲れ様であります!」


「おーぅ、お疲れー」


「となりの方は?」


「そこでちょっと拾ったやつだ。銀貨一枚で通れるだろ」


「ひ、拾ったですか。あ、いえ、なにも。はい、たしかに。」


「ヨーヘイはノーカンで頼むぜ」


「もちろんです」


「ありがとよ、それじゃあなぁ、あ、忘れてたわ、さっきそこでウルフ系の魔物が出たぞ」


「は!?」


「あ~ば~よぉー」


「あの、良かったんですか? ちゃんと話さなくて」


後ろを見るとなにやら叫んでいる兵士が目に入った。


「あとで俺の商会の方に来るだろ。 今は酒飲んで肉食って寝てぇ気分だ」


「私はどうしようかな」


「とりあえず学園まで連れて行ってやるよ。 それとあとで商会に連れて行ってやろう。


 一晩くらいだったら貸してやる。」


「ガーランさん優しいんだね」


「そりゃぁもちろん!と言いたいところだが、今回は特別だ。お前さんの背丈が娘に似ててなぁ、


見捨てりゃあ寝起きが悪いと思ったのさ」


「ガーランさん娘さんがいるの?」


「おぉ!いるぞ!名前はノンって言ってな?赤いくせっけが嫁さんに似ててな?


顔もそりゃあ可愛くてもう、俺の天使ちゃんだぜ。 商会に行ったとき紹介してやるよ」


ギャクではない。


「う、うん。ありがとう」

(ガーランさん親バカなのかな?私の家族に似てるかも)


「お、着いたぞ、ここがグリモアだ」


そこにあったのは白亜の城だった。

汚れ一つない綺麗な建物で、その手前には石畳のみち、目の前には大きな鉄格子の門が開きっぱなしになっている。


「すごい豪華だね」


「まぁ、俺たちの人生を決める場所だからな」


「決まるの?」


「あぁ、本の適正だの、自身の能力なんかがよくわかる場所だ。

それを合わせて大体のやつはここを出るまでに自分のできる職につく。 

ほら、行ってこい。 紹介状があるなら門前払いってことはないだろうぜ」


「うん。ありがとうガーランさん」


そう言って馬車から降りる。

後ろをちらっと見たけどヨーヘイさんは寝ていた。

門を通って入口から中に入る。

中には受付と書いてあるところがあって、そこに行けば案内してくれるだろうという考えのもと話しかける。


「すいません」


「はーい、あら、可愛らしいお客さんね。今日はどうしたのかしら」


奥からパタパタと走ってきたのは女性だった。


「ここの紹介状を持ってるんですけど、どうしたらいいですか?」


「あらあら、それじゃあちょっと見せてもらえるかしら」


「どうぞ、これです」


懐から紹介状を取り出し、渡す。


「……!ちょ、ちょっと失礼しますねぇ。ここで待っていてください」


少し焦った様子でまたパタパタと奥へ走っていってしまった。


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