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4章 拾われ物

ハッとして目が覚めた。 ここはどこだろ。ガタンゴトンと地面が揺れている。

どうやら馬車に乗ってるみたい。


「おや、嬢ちゃん。目が覚めたかい?」


前―馬が見えたから前と思った―から男性の声が聞こえた。


「……おじちゃん、誰?」


その男性は馬を止めてこちらを向いた。

彼は彫りの深い顔をしていて、髪と目は黒だった。

座っているだけでもかなり身長が高いことが伺える。


「おっと、こいつは失礼。 俺はガーランってもんだ。 商人をやってる。


 北から南まであらゆる場所で商いをする旅から旅の行商人さ。

 お嬢ちゃんの名前は?」


「私の名前はリグル。 ねぇ、なんで私は馬車に乗っているの?」


「それはだな。 俺のいつもの行商ルートを進んでいると、

道の真ん中でリグルちゃんが倒れていたのさ。 

逃げ出した奴隷かと思ったが首輪がない。 

じゃあ盗賊の罠かと思えばどこからも襲ってこない。 

じゃあなんだと思ってみてみれば、こいつをもった嬢ちゃんだったというわけさ。 

捨てていくのも忍びない、

それじゃあ優しいガーランおじさんが目的地まで届けてやろうと思ったわけさ」


そういって私の近くに落ちていた紙と袋を持ち上げてみせた。


「それはなに?」


「嬢ちゃんと一緒にあったもんだぜ。 ひとつは推薦状。 もう一つは金だな」


受け取ってみてみれば確かにお金だった。

中には金貨や銀貨、銅貨がごちゃごちゃと入っていた。

推薦状と書いてある紙を開いてみれば


「……【リグル・サーティスを学園グリモアへ入学】……?」


まとめるとそういうことだった。

最後に書かれてあるであろう名前は文字であることはわかるのに読むことができなかった。


「最後の名前のところ読める?」


「いや、俺は読めねぇな。 

どうやら見せたい相手にしか見えないよう魔法がかかってるみたいだ。」


「魔法?」


そんなもの聞いたこともない。一体何だろうか。


「嬢ちゃん魔法も分かんねぇのかい!? こりゃあ記憶をなくしてるかもしれねぇな……」


ガーランは無精髭をぞろりと撫でて考える。


「それで、魔法って何?」


「魔法ってのは……まぁ、そうさなぁ。 

自分の中の本に書かれた魔法っていう欄に呪文があれば自分の魔力を消費していろんなことができるもんらしい」


らしいってのは俺が使えねぇからなんだ。でも一般知識だぜと笑いながらガーランは教えてくれた。


「自分の中……?……!!!」


思い出してしまった。あの夢のことを!

あの気持ち悪い感覚を思い出してしまった!


「うっ……」


「どうした嬢ちゃん!? 吐きそうなのか!? これを使え!」


そう言って渡してくれたのはツボだった。

私はそこに胃の内容物をぶちまけ、嘔吐く(えづく)


「ハァ……ハァ……ガーランさんありがとう」


「おぅ、いいってことよ、 それよりどうしたんだ?」


「夢のことを思い出しちゃって……」


「嫌な夢でも見たのか……そうだ!嬢ちゃん!一緒に御者のとこに乗ってみねぇか?


 風景を見ればまた気分も変わってくると思うぜ!」


その言葉からは優しさや気遣いに溢れていて。

気分が少しスッとするのを感じた。


「うん。じゃあお願い!」


御者の席は少し狭かったが乗れないことはなかった。

周りはひたすらに草原が広がっていてぽつぽつと背の高い木が生えている。

馬車の進む道は踏みならされていて人が通っているのだとわかった。


「風景っつってももう1時間くらいは草原がずっと広がってるまんまなんがだなぁ」


「でも、楽しいよ。 ありがとう!」


「そう言ってくれるんなら見せた甲斐があるってもんだ!」


はっはっは!と笑ってガーランはくしゃくしゃとリグルの頭をなでた。












30分後


「……飽きた……」


「……はっはっは、まぁ、変わらないってのはいいことだ。 特にここら辺はな」


「なんで? いろいろあったほうが面白いじゃん」


「色々起こるっていうと大体が獣か盗賊の襲撃なんだよ。


 つってもここら辺は遠くまで見渡せるし、すぐに逃げることはできるが。」


逆に見つけられやすかったりするがな。と言って少し道をそれた馬の軌道を元に戻す。


「……何も起こらない方がいいっていうのはわかったけど、やっぱり暇だー!」


「ははは……っと、なんだあれ……」


その声に反応して後ろを向くと遠くにポツポツと黒い影が見えた。

その数12。

正体を確かめようともっと目を凝らす。


「……!やべぇな。 嬢ちゃん、暇じゃなくなりそうだ。」


先に気づいたガーランはハイヤッとムチを馬に叩きつけ急かすようにして

馬車を前へ走らせた。


「あれ、なんだったの?」


「あれか?あれはなぁ、魔物だ。 くそ!めったにここにゃぁ出てこねぇってのに!」


「魔物?」


「あぁ! 魔をその身に宿す化物だ! あいつらは人や家畜、見境なしに喰らう! 


さっさと逃げるぞ!」


こちらも見つかったのか後ろからあざ笑うかのように遠吠えが聞こえてくる。

―オーーーーーーーーン―


「クソが!ウルフ系か! ゴブリン系ならまだなんとかなったものを! 


あいつらは足が速い、 


このままじゃ追いつかれるな」


「なんとかなるの?」


「今のままじゃなんともならん……あー、なんとかする方法もあるが」


「あるけど!?」


「高い」


「えっ」


「高いんだ。 俺のひと月稼いだ金に匹敵する」


「命とどっちが大事なの!? 襲われたら危ないんじゃないの!?」


「時と場合によるが、今は金の方が大事だ」


さらに急かすようにハイヤッとムチを打つ。

遠くにぽつんと見えていたのが少しづつはっきりと見え始めていた。


ガーランさんは鑑定と呼ばれる魔法ちょっと手前の技術を身につけているのでどのような細工が施されているのかわかっています。

本文でも出てくるかも。

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