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9 友達

案内されてウェスタンドアを開き、中に入る。

中は大きな木のホールのようになっていて、

正面には数人の女性が壁の端までつくテーブル越しに座っている。

左右にはコルクボードに紙がはり付けられており、様々な人がそれを見ている。


「帰ったぞー!」


ガーランさんが声を上げると周りの人たちは気づいて声をかけてくる。


「ガーランさんおかえりなさい」


「今回も無事で何よりです」


「てっきりもう帰ってこねぇかと思っちまったぜ!」


「ガーランさんその子は?」


「拾ってきたんですかい?」


「ノンちゃんを私にください!」


「おう!今帰ってきたぜ。 まぁ、無事っちゃァ無事だが無事でもねぇな。

 バカ野郎。俺が死ぬかよ。 この子はまぁ、あとで紹介する。

 まぁ拾いモンだ。 誰にもやらねぇよ!!」


ガーランさんはひとりひとりに言葉を返して奥まで歩いてく。

私もついていくけど……うぅ、視線が痛い。


「やぁやぁ、受付嬢諸君。ノンは元気してたかね。」


「えぇ、いつも通りでしたよ」


「……俺がいなくて泣いたりしてなかったか?」


「いえ、別に、いつもどおりでしたよ」


「……俺のことが心配とかそういうこと」


言葉を遮るように


「いつもどおりでしたよ」


「……ガーランさん……?」


「なんでもねぇよ。案内するぜ。こっちだ」


ガーランさんは静かに涙を流しながらテーブルの端を押してその向こうの階段へ案内する。


「前にも話したと思うけどよ。うちにはノンって名前の娘がいるんだ。本が大好きでいつも本を読んでばかりいる。そのせいで友達も少なくてよぉ。是非仲良くしてやってくれ。自己紹介したならもう友達だ……っと、ここだ。おーいノーン。帰ったぞー!お父さんだ!」


ノックを三回すると扉がキィと開く。

扉を開けた少女はくせっ毛の髪を撫でながらガーランを見上げる。

目はどこかぼんやりとしていて、服はゆったりと体を覆うものだ。

もしかしたら寝巻きかもしれない。部屋着かもしれないが。


「……おかえり」


「ただいま!今日はノンに紹介したい奴がいるんだ。ノン。彼女はリグルちゃんだ」


「はっ!はじめましてっ!」


「……はじめまして」


「今日リグルちゃんはノンのところに泊まるからいろいろよくしてやってくれ。

 頼んだぞ」


「……わかった」


そういうとガーランさんはノンちゃんの頬にキスをするとそのまま下に降りていった。


「えっと、私どうしたらいいかな?」


「とりあえず入って」


ノンは手招きして部屋に入る。


「あ。うん。お邪魔しまーす」


中はベッドと机がある隅以外の辺はすべて本棚になっている。


「すごい本だね!」


「ここの本はガーランが勝手に買ってくるの」


「そうなんだ!」


見てみると棚ごとにジャンルが分けられていて、様々な場所から買ってきたことが伺える。


「ノンちゃんは本好き?」


「まぁまぁ好き。ひとりでも時間がつぶせるし、知識が増えるのは嬉しいこと。あと」


そう言うとノンは少し顔を赤くしてこう言った。


「わ……私のことは……ノンで、いいよ?」


「わかったよノン!私のこともリグルって呼んで?」


「うん。わかった。リグル。それじゃあ立ってるのもなんだしベッドに座ろ?」


ベッドはとても大きくてノンのサイズなら5人は一緒に寝られそうなほど大きい。


「おっきいねぇ」


「うん。ガーランが『ベッドはやっぱりでかくねぇとな!お姫さまだ!』っていってこれを置いた。

 最初は天蓋もあったけど外させた」


「なんで外したの?」


「……恥ずかしいじゃない。お姫様ベッドって」


「うーん。私は見たことないからわかんないなぁ」


「そうなの?それじゃあえーっとね」


そう言うとベッドの横につけられている机から紙とペンを取り出し、何かをサラサラと書いた。


「こんな感じ」


紙を向けられたので見てみると、そこにはカーテンに書かれたベッドでリグルが寝ている絵だった。


「わぁ!ノン絵うまいねぇ!これが天蓋かぁ……たしかにちょっと恥ずかしいかもね」


「でしょ?」


「うん……あっ!自己紹介がまだだった!私の名前はリグル・サーティス。この前十歳になりました。

 もしかしたら学園に通うことになるかもしれないからその時もよろしくね!」


「うん。私はノン・ランドヴェル。今年で12歳。今は学園の3年をやってる。

 本はもう開いてる。よろしくね」


「うん!本、開いてるんだ、いいなぁ。私はどんな本が出るのかなぁ」


「本はその人の人生に強く影響される。

 剣を使っていれば剣について、学問なら学問について、商業なら商業についての本になる……といっても人間なにかひとつにずっと打ち込むなんてことはないからひとつのジャンルというわけではないの。強いて言うなら……そう、日記帳。人生の記録のような物」


「人生の……記録?」


「そう。詳しいことは知らないけどそんな感じだったはず。この前読んだ本に書いてあった」


「へぇ……ノンは物知りだねぇ」


「……ほかの人よりも知識を持っているという意味ではそうかもしれない」


「ほかの意味は……?」


「最近流行りのアクセサリーや香水。そういうのはわからない。商会の娘なのにね……

 そういうことをやりとりする人もいないし、私も興味が持てなくて」


そういうとノンは少し顔を伏せる。


「あ……こういうことは言わない方がいいよね。ごめんね?」


「ううん!いいよ!だって私たち友達だもん!」


「友達?」


「うん!自己紹介したならもう友達ってガーランさんが言ってたよ!それに私、ノンと友達になりたい……いいかな?」


そう言うとノンははっと顔を上げてこちらを見た。


「私でいいの?」


その瞳は期待と不安に揺れていた。


「ノンだからいいんだよ」


「でも私面白くないよ?」


その手はひどく落ち着きがなく、そわそわとしていた。


「そんなことないよ!話してて楽しかったもん!」


「私取り柄ないよ?」


顔はまたうつむきがちになっていた。


「ノンは物知りだし、絵だって上手じゃない」


「私……私でもいいの?」


その顔は何かに耐えるように歪んでいた。


「うん。ノンだからいいんだよ」


そう言ってノンを抱きしめる。


リグルにはノンが何を思っているのかわからなかったが、その様子はひどく怯えているようにも見えたし、恐れているようにも思えた。

だから抱きしめた。昔、不安なときはこうされていたと思い出しながら。


「大丈夫だよ……大丈夫」


「うん……」


ノンもリグルリグルを抱きしめると声を押し殺して泣いた。


「ありがとう……リグル……」


お気に入り登録者数が二倍になってました!やっほう!ありがとうございます。これからも楽しんで書いていきたいです。

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