5月~汐 2周目 後
楽しかったゴールデンウィークもあっという間に過ぎ去り、もうすぐ中間テストの時期がやってくる。
このループのおかげで自分の弱いところを補えたから、あとはそこを踏まえてテストに向けての勉強を頑張るだけ、
なんだけど…。
「で、どうして4人揃って私が図書当番の時に勉強しにくるの」
カウンターにいる私の目の前で曖昧な笑みを浮かべているのは、万代に美凛、さらには朱斗と鉢梅君。
なんでも、朱斗に勉強を教えて欲しいと鉢梅君が泣きつきに来て、朱斗が断り、美凛を発見した鉢梅君が美凛に頼み込んだ。
そして万代が便乗し、図書室で勉強会をしようということになり、朱斗もついでだからと参加したのだそう。
…ちなみに万代は美凛と気が合うらしく、4月の時点ですぐに意気投合し、今では大事な話の時以外は3人で過ごしている。
万代のコミュ力半端ない。
「だって、汐のノートって要点書き込んであって絶対テストに出そうなんだもん」
それは、前回の時に出たところを忘れないように習う先からマークつけてたから当たり前だ。
…というか、美凛はしていないのだろうか。
「…あたしはノートとか板書オンリー派だから」
「……」
…ループの特権を生かそうと思わなかったのだろうか。
それとも私が現金なのか?
「あんまりうるさくしないでよ?他にも勉強とか読書してる人とか…いるんだからさ」
「りょーかーい」
万代がビシッと敬礼をして机に向かっていく。
「あっれー?…これって何て読むんだっけ?」
「えー、美凛が読めないなら俺ダメじゃん!」
「うっさい、ここでは先輩と呼びなさい先輩と」
「…へーい」
「…確かこの式はここに代入して…こうだよね?」
「え、でも答えと全然違うんだけど…何で?」
「…さぁ~?」
「この式はそれじゃなくて、こっちに代入するんですよ」
「わっ…橙貴、…先輩」
「苦手な人の多い図形の証明は得意なのに、数学の方程式はからっきしですからね、万代は…」
「う~、だったら教えてよ~…」
「…仕方ありませんね。その代わり赤点は回避して下さいね?角の生えた伯母さんを宥めるの大変なんですから」
「…はい」
万代、そういえば最初の時期の数学、赤点ばっかり取ってたっけ。
そのムラが原因か。
「ん…?鉢梅、その漢字、一本足んない。点引かれるよ」
「うっわ、マジですか…ありがとーございまーす」
…朱斗って、数学があるからアレだけど、国語の成績はめちゃくちゃいいんだよね…中学の時漢検取ってたし。
「えー…こんなの英語にしろって言ってもわかんねぇよー…」
「…って、銀アンタそれ動詞二つ使ってるよ」
「へ?」
…美凛は英語が得意らしい。
鉢梅君はもしかして…勉強がほぼ苦手とか…言わないよね。
この学校に入れるんだもん、大丈夫だよ、うん。
「…汐」
「っ~?!朱斗?どうかした?」
カウンターから顔半分だけ覗かせる朱斗。
軽くホラーだよ。
「数学なんて滅べばいいと思うんだ」
「そんなこと言ってないで、やらないと赤点だよ?ほら、見せて」
…朱斗のノートは字がきれいだ。
きれいなんだけど、数学は芳しくないなぁ…。
右側の応用ページ全部間違ってるし。
基礎も半分は合ってる…。
「あー、これ公式をちゃんと覚えてないんだよ。これとこれと…これ。当てはめてる場所違うし」
「…あ、ホントだ…」
「この式とこの式。ごっちゃになってるから間違ってるんだよ。ここに書くから、これに当てはめて解いてってみて」
「ん…そうする。ありがと、汐」
へら、と笑って椅子に戻っていく。
「汐先輩~…」
「…今度は鉢梅君か…」
「数学のここ…全然分からないんスけど…」
「うわぉ」
こんなにバツ印が並ぶノート、はじめて見た…。
一応教えたけど、どういうことになるか…不安な勉強会だった。
書き貯め分は放出してしまったので、
6月分からペース落とします…すみません。