5月~汐 2周目 中
ショッピングモールに行ってから二日位が経った日。
階下から母さんに呼ばれて行くと、そこには朱斗のお母さん。
「こんにちは」
「こんにちは。汐ちゃん、悪いんだけど朱斗にお弁当届けてくれないかしら…」
「え?」
「アンタ最近部屋で本読んでばっかりだから、少しくらい運動したらいいと思って」
母さん、それは一言余計だ。
でも、確かになぁ…ここ二日、あんまり外出てないし…。
「じゃあ、朱斗に弁当、届けてきます」
「ごめんなさいね」
「いーえ」
朱斗のお母さんは、見た目が若い。
うちの母さんはまぁ、年相応っちゃ相応…って口に出したら恐いから黙っておこう。
一応制服に着替えて、学校に向かうことにした。
「えーっと、テニスコートかな」
「テニス部に何か用事ッスか?」
「え?」
私の独り言が聞こえていたらしい。
天然パーマで人懐っこそうな男子が立っていた。
「えーと、2年の灯桜朱斗に忘れ物を届けにきたんだけど…」
「!じゃあ、先輩ってもしかして、佐藤汐先輩ッスか?」
「え?ああ…そうだけど…?」
「やっぱり!じゃあ、直接届けて下さい!こっちッス!」
後輩クンに案内されて行くと、昼休み中らしいテニス部の部員たちが弁当を食べたりして過ごしていた。
「灯桜先輩ー!」
「ん?何だよ、鉢梅…って、汐?!どしたの?!もしかして、見に来てくれた?」
「いや、弁当届けに来たんだよ。忘れてったんだって?」
「あー…急いでてさ…ありがと。助かった」
大事なものを受け取るように、弁当を手に取る朱斗。
「…そんなにお腹空いてたの?」
「ま、まぁ…」
「灯桜先輩、俺にも話させてくださいよー」
「は?」
「恐っ!俺、1年の鉢梅銀って言います!
佐藤先輩の話、美凛からよく聞いてるッス!」
「え、あぁ…美凛の言ってた幼馴染…」
彼だったのか。
「そうッスよ。家も隣なんです」
「へぇ…」
「汐、ついでだしさ、見てかない?」
「え?でも…」
「今日、試合するんだ。だから、見てって欲しいなーって…」
「…んー、どうせ暇だし…見ていこうかな」
…美凛に「誘いは断らないこと!」って念押しされたからなぁ…あの子もヘビーなプレイヤーだったんじゃないだろうか。
「オレの試合、絶対後悔させないよ」
「…って対戦相手俺じゃないッスか…お手柔らかに頼んます…」
「うん、無理」
ちなみにこの日、彼はこの瞬間が一番爽やかな笑みだったらしい。
…鉢梅君、なんか幼馴染がゴメン。
ちなみに二人とも、青春してました。
正直テニスに真剣に向き合ってるの見たら見惚れてました。
…何か悔しかったです。
(あれ、作文?)