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5月~汐 2周目 前



ゴールデンウィークに入って、朱斗に言われた通り予定を空けていたら携帯に電話がかかってきた。


「…もしもし?」

『もしもし、オレ…朱斗』

「どうしたの?」


まだお昼だから、部活があると思うんだけど。


『今日ミーティングだけでさ…この後時間あるなら、遊びに行かない?』

「遊びに?別に良いけど…」

『…じゃあ、迎え行くから出かけられるようにして待ってて。出来ればお洒落して』

「私にそれを求めるか」

『嘘嘘。いつも通りで良いから。それじゃあ、後で』

「ん、後でね」


電話が切れる。

とりあえず…準備しよう。


お洒落ねぇ…興味がないわけじゃないけど、そんなに可愛い系統の服は持ってないんだよなぁ。

機能性重視でジーンズとパーカーって組み合わせが多い。


とりあえず最低限は、と肩が出るタイプのシャツの上から

ジャケットを羽織ってみた。

下も、ジーンズではあるけど、スキニーにしてみた。


…これでいっか。


一時間もしない内に玄関のチャイムが鳴った。


「はーい!」

ドアを開けると、私服の朱斗。あの電話の後で帰って着替えたらしい。

…まぁ、そりゃかなり近いから出来るっちゃできるんだけど。


「迎えに来たんだけど…出かけられる?」

「大丈夫」

「じゃ、行こっか」


にこ、と普段は女子を虜にしているであろう笑み。

…私は見慣れてるから今更、って感じだけど。


「…で、遊ぶって言ってたけど、どこに行くつもりでいるの?」

「こないだオープンしたショッピングモール。本屋とかも充実してるらしいから、汐が好きそうだと思ってさ」

「なるほど」

そういうところがモテる要因なのかねぇ…。


バスに乗ってショッピングモールに来た。


「じゃあ、先に本屋見てく?」

「朱斗はそこまで本好きってワケじゃないじゃん。

流行の小説くらいしか読んでないでしょ?

しかも図書室で借りる派」

「…ごもっとも…」

私みたいに、じっくり読みたい派だからって理由で本を買うのとは違って、朱斗はさくっと読んじゃう派のはずだ。


「じゃ、あっちのスポーツショップ行ってるから…」

「少し見たらそっち行くね」

「えっ、オレが行くよ。女の子歩かせるわけにいかないしさ」

「いいって。すぐ見終わるだろうし」

朱斗、中学の時からテニスにハマりこんでるからなぁ…。

最初は何かスポーツがしたい、って感じだったって言ってたけど、今じゃレギュラーだし。


「すごいよなぁ…」

「何がですか?」

朱斗と別れて本屋で本を眺めつつ、そんなことを考えていたら口から出ていたらしい。


「…!松葉先生。こんにちは」

「こんにちは。お買い物?」

「まぁ、いろいろ物色しようと…先生もお買い物に?」

「各地の名産品フェアが目的なんですよ。

そうしたら佐藤さんがいたものだから」

「なるほど…」

「邪魔してしまいましたね。それじゃあ、あんまり遅くならない内に帰りなさい」

「はい。さようならー」

…驚いた…。


さて、そろそろスポーツショップに行くか。


「へぇ~、テニス好きなんだねっ」

「まぁ、中学からやってるからさ……」


…思わぬところで聖風さん。

まぁ、美凛曰く、恋愛イベントはなくても好感度アップに繋がるから気をつけて、とは言ってたけど…それか。


「っと、ゴメンね、連れが来たからさ」

「え?連れって、あの子?」

私のことを指さす聖風さん。

…人を指さしちゃいけないよ、うん。


「そ。佐藤汐。オレの幼馴染でさ。同じクラスのはずなんだけど…愛ちゃんって自分と関わらない子はなかなか覚えられないタイプ?」

「えーと…うん、そうなの」

「…でも、汐のことはオレがネタにしちゃったから覚えやすいと思ったんだけどな…」

そりゃあ、彼女は私のことを朱斗を落とすための脇役としか思っていないから覚えていないだろう。


「まぁいいや。そういうわけだから、じゃあね」

朱斗が女子に対しては珍しいあっさりした物言いで私の方に来る。


「ゴメン、待たせちゃったよな?」

「別にいいよ」

というか、私といる朱斗を信じられないって目でまだ見てるし。

そりゃ、私みたいな地味系女子はモテ系男子の朱斗には釣り合わない、って言いたいんでしょうけど?


「…もしかして、妬いてた?」

大体、私は幼馴染なんだ、一緒にいたっておかしくないだろ。


「うん」

「……ホントに?」

「…うん?」

私、今なんて言われて、何て答えた?


“…もしかして、妬いてた?”

そう言われなかったか?言われたよね?!


で、自分の独り言として“うん”って…。


「っち、違うからね?!決してそういう感情を抱いていたわけではないからね?!」

「…んー、でも、オレ自分のいいようにしかとらえないから、それも照れ隠しとしか思わないよ?」

「……あーもう…それでいいよ…」

妙に上機嫌な朱斗に、そう答えるしかなくなってしまった。


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