表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/11

4月~汐 2周目 後


あれから二週間。もうすぐゴールデンウィークだ。


美凛によると、一人につきイベントは愛情友情合わせて11個ほどあるそうだ。

一ヶ月に一つ、とするとイベントの条件時に自分が側にいてイベントに似た出来事をこなしてしまえばいい、とは美凛の案。

意外と大ざっぱだなあの子。


そして、なんと朱斗の一つ目は既に私が奪っていたそうだ。

…隣の席になる、というイベントだそう。

そりゃ、奪ってるわ。


「…携帯に細工って、こういうことか」

好感度のメーターになっているらしい。


だから、鉢梅君とやらの場所は黒くなっているし、何故か逆に朱斗のところは好感度が最初から高い。

あ、地萩先輩も普通よりちょっとあるくらいになってる。

万代の友達だからか?


「ん?」

好感度を眺めていると、ちょっと変になっていた。

鉢梅君の好感度が、知り合ってもいないのに友好状態なのだ。


「…?」

首を傾げたそんなとき。

ころん、と紙の塊が机に載る。


…手紙?


「……」

朱斗を見ると、開け、とジェスチャーをしていた。

直接言えばいいのに…。


えーと。

“数学退屈ー、無理、分かんない。後で教えて。

今日、家政部ある日だよな、帰り、ちょっとだけ待ってて。

久しぶりに一緒に帰ろ?”

そして誘っているのにお願い、の顔文字。


…まぁ、いっか。


“まじめに聞きなさいまじめに。

別にやることもないし、いいよ。一緒に帰ろう。

っていうかお願いしてどうするの…”笑い、と。


ぽん、と投げ返す。

そうしたところでチャイムが鳴って、数学が終わった。


「はぁ~…もー数学やだ…」

「灯桜君かわいい~」

「アヤ君、あたし教えよっか?」

…休み時間になるなり、囲まれてるよ…すごいな、モテるって。


「あ」

そういや、図書委員が国語の辞書取ってくるように言ってたっけ。

…何で図書委員に押しつけるかなぁ。


立ち上がって、教室を出る。

階段を上がろうとしたところで、後ろから何かがぶつかった。


「うわ…っ」

バランスを崩しかけたところで、誰かに支えられる。

…誰だ?


「…大丈夫か?えぇと…佐藤?」

「……河桐君?」

「…ああ…」

「あ。ごめんね、ありがとう、助かった」

「いや…ぶつかったの、俺だから…佐藤、図書委員だっけ」

「まぁね。ってヤバ!ホントありがとー!」

「……ああ」


私は知らなかった。

これが彼のイベントに類似していて、仕事を手伝ってもらおうとしなかったことで河桐君の好感度が上がっていたことに。


…。

……。

………。


あっという間に放課後になって、部活も終わったことだから、教室でのんびり待つことにした。


「そこで残ってるのは…佐藤さんですか」

「!あ、地萩先輩。先輩は…生徒会ですか?」

「それもありますが、万代を待ってるんですよ。ほら、演劇部は遅くまで残るでしょう?声は大きいけどひ弱なので」

「…大切なんですね、万代が」

「そ、そういうわけじゃ…っだいたい、あの子は人が良いから悪い人間に騙されないか心配…ってこれも嘘で…っ」

「隠さなくていいですよー、羨ましい限りです」

「…羨ましい?」

「万代、何だかんだで地萩先輩のこと大好きですしね。相思相愛じゃないですか」

「……そういってもらえると、救われますね。さて、見回りの続きにでも行きますよ。それじゃあ」

地萩先輩は教室を出ていった。


その直後、携帯が鳴る。

これは…メーターの方だ。


「え?」

地萩先輩の本性が出てる…今のが?


「あ」


―「一番見やすいといったら、たぶん地萩先輩。図星を指されることで、本性のツンデレで余裕のないところが出るの」―


確かに、ツンデレだ。万代に対して。

余裕もなかった。顔真っ赤だったし。


「ゴメン、やっと終わった」

「そんなに待ってなかったけど…走ってきた?」

「え?ま、まぁ…でも何で?」

「…くせっ毛だから、そこら中ハネてる」

「う、わぁ…かっこ悪ぃ」

「直そっか?確か櫛入れてたはず…」

鏡とセットになった櫛。

お買い得って書いてたから買っちゃったんだよね。


「……」

「どしたの?」

朱斗の髪を櫛で整えていると、彼は急に黙り込んだ。


「ん…」

「眠い?」

「…んー…」

…くせっ毛ってよりは猫毛と言った方がいい朱斗の髪。

ワックスつけてる割にはふわふわしてさわり心地が良い。


「…汐の手、好きだなぁって」

「え?」

「綺麗な手してる」

そんなはずはない。

家政部であるが故に私の手はハンドクリームはまだいらないまでも荒れてきている。

ましてや可愛らしい女子によく囲まれている朱斗は、もっと手が綺麗な人をたくさん知っているはずだ。


「はは…お世辞でも嬉しいよ」

「お世辞なんかじゃないんだけど。家政部に入った理由だって、お前の母さんを手伝うためだろ?お前のそういうとこ、オレは好きだよ」

「…しょ、正面から言うなっての~…」


そういう褒め言葉を女子に臆面もなく言えるのが女好きだと思われる理由なんだと思う。


幼馴染に言われると、妙に照れるなぁ…。

そんな帰り道、ゴールデンウィークを空けておいて欲しいと言われた。

…とりあえず、美凛によるとゴールデンウィークは恋愛イベントが用意されていない珍しい例であったため、予定がなかったので、一応OKしておいた。


…イベント、ないんだよね?





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ