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4月~汐 2周目 中

とぼとぼといつもの帰り道を歩いていたら、おかしな光景に出くわした。


「どうして帰れてないの?!もう、アイツは逆ハーエンドまで制覇した…だからあの子は満足なはず…あたしたちを元の世界に帰してくれるんじゃないの?」

「何を勘違いしてるの?契約は、まだ満たされていないよ。だって、もう一つの逆ハーエンドとやらが終わっていないらしいから」

「そんな…じゃあ、あたしだけでも帰してよ…!もう、堕ちるあの子を見ていたくない…」

どう見ても悪魔な風貌の男と、悲痛な表情の古庄さん。


「俺が契約したのはあの娘。お前は生け贄だからね。俺と契約を結ぶ権利も、戦う権利もないよ。ただ一人…この無限ループに気づいた、そこの娘以外はね」

男は、私をまっすぐ見ていた。


「!」

「…佐藤汐…?」

「そう。灯桜の幼馴染で、彼のルートではとんだ勘違いをされる彼女だ」

「っ…佐藤さん!」

「?!」

必死の形相で古庄さんが迫ってくる。


「お願い…!あたしの幼馴染を助けて…!堕とさせないで…!」

「と、とりあえず落ち着い…」

「どうする、佐藤汐。君は望んでいるはずだ。時が進むことを。俺とのゲームに勝ったら…このループを終わらせてあげる」

「もし、負けたら?」

「そうだな…君の命くらいはもらおうかな。契約を一つ破棄するのって、それくらい大変だからさ」

何というか…ハイリスク、ローリターンなゲームだな。


「それ、ねじ曲げた世界が元に戻るだけなんだから、命がけって……リスクだけが、高すぎない?そんなのゲームじゃないよ。相手であるアンタ自身も命をかけてよ」

「分かってないなぁ。今の無限ループを止めるってことはね、ゲームに参加する権利を得た古庄美凛が、最終的にはこの世界に残るか去るかの選択肢を再び得ることが出来て、ゲーム中の努力次第では君たちの幼馴染も聖風愛に堕ちることはない。聖風愛が何の努力もなく異性をひきつけ、同性にも好ましく思われるという理不尽を解消するってことなのさ。俺はそれを全て処理するんだ。そんなことをすると神の座から堕とされることもあるしね」

つまり、神だったのが人となって、死ぬ可能性を持つことになる、とでも言いたいらしい。


何とも自分勝手な理由だ。

…って、そこまで理解できたところで思う。

私、ファンタジー好きでよかった。


「……いいよ。ゲームに乗る。どんなゲームか、そして勝利条件、敗北条件を聞かせて」

「命を賭けて、未来を掴むか…人間は面白いね。まぁ、前提として、この世界は乙女ゲームの世界だ。だから、まぁ、言うなれば君はライバルキャラになってもらうよ。そして、君が恋愛感情で一人、友愛感情でその他の攻略対象の好感度をある程度まであげて彼らの共通点である…態度に隠された本性を全員分見なければならない。それも、3月までにね。何周でもチャンスはあげるけど、聖風愛が全員の本性を先に見て、真・逆ハーエンドを達成した周の時点で君の負け。逆に、そのエンドを達成させず、君がいわゆる本性受容エンドを迎えれば君の勝利だ」

「…意外とシンプルだね」

「そう?結構複雑だよ?まず攻略対象と出会う機会を作らないといけないんだからさ。現に君は最後の一人とは会っていないしね。でも、このゲーム形式だとまだ聖風愛が有利だから…君の携帯に細工をしておいてあげるよ。それじゃ、せいぜい頑張って」


神は、目の前から姿を消した。本当に神様だったんだ、アイツ。


あれから、ループ脱出作戦会議は明日の午後に落ち着いて、ってことになって、入学式の片づけも終わった今、私と古庄さんはカラオケボックスにいた。


「…つまり、古庄さんは近くにいたからと神に生贄として選ばれて、勝手につれてこられた、と…」

「そう…そのことは別にいいんだけどね、もう受け入れたことだし」

「じゃあ、何が嫌だったの?」

「隣に住んでる幼馴染がね、攻略キャラだったの。彼が堕とされている様子を、何度も…、だから、もう見てられなくなっちゃって」

「大好きなんだね、その幼馴染のことが」

「…弟みたいなものなんだけどね。元の世界にいた時は一番好きで、幸せになってほしいと思ったキャラでもあったんだ」

その顔は、恋する乙女そのもので。


「だけど、ここは現実。無条件で努力もなしの人を顔の良い男子ばかりが好きになるなんてあり得ない。そのあり得ないことに巻き込まれている、この世界…ゲームじゃなく現実にいる彼を助けたい…」

「…確かに、人の心を操作するのはちょっとアレだもんね…」

「佐藤さんは、いつループに気づいたの?」

「前回の4月。

変だなーって思ってさ、この日記を付け始めたんだよね」

カバンから日記を出して見せる。


「……そういえば、灯桜君が幼馴染だって言ってたけど…彼については何も考えてないの?」

「んー…朱斗の好きにすればいいと思ってたけど…アレが心を操作されてたんなら、少し考えようかな…努力次第って、そういうことだよね、たぶん」

「ゴメン、大変な役割押しつけちゃったみたいで…」

「いいよ。3年になりたいし」

「…そっか。あ、攻略対象、教えないと…」


古庄さんが教えてくれたのは、

河桐 蒼哉、灯桜 朱斗、地萩 橙貴、鉢梅 銀、松葉 浅黄の5人。

驚いたことに、河桐君は聖風さんの昔の幼馴染なんだとか。


「待って、鉢梅って誰?」

「あたしの幼馴染。1年だから…しばらくしたら会わせるよ」

「分かった。とりあえず…二人で頑張ろうね」

「うん。あ…汐って呼んで良い?」

「別にいいよ。じゃあ、美凛って呼ぶね」


今日から1年頑張りますか。





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