4月~汐 2週目 前
物語の始まり、4月が巡ってきます。
…また、2年生だ。
日記は今年の日記で、こんなの見られたら絶対ヤバい。
だから、鞄に入れておくことにした。
「おはよー、汐」
「万代。おはよ」
万代とのやりとりも、私が自覚してからだと、3回目。
「今年はすっごいクラスだよ、みた?」
「…いや…特には…朱斗が一緒なのは見たけど」
「もー!知り合いしか興味ないんだから。
剣道部の河桐君も一緒だよ。クールなんだけど意外と親切なんだよね」
「…あぁ…そういえば、備品運び手伝ってくれたんだっけ?」
「そうそう!あの嫌味生徒会長とは大違い!」
これは変わらないらしい。ほら、背の高い影が。
「…僕が…何だって?」
「ぎゃぁああ?!」
聖風さんといる時は、万代なんて見向きもしていなかった。
話しかけても、邪魔扱いで。
「佐藤さん、引き続き、このバカ娘をお願いしますね」
「…はい」
この時点では万代に対する目は優しいもので、純粋に心配して私に頼んでいるのが分かる。
「失礼な…」
「はは。とりあえず、教室行こうか?」
「…ぶぅ」
頬を膨らます万代。やっぱり可愛い。
教室に行くと、前と同じようにかなり空席が目立つ。
やっぱり繰り返してる。
「汐っ、席決まってないなら、こっち…隣、来ない?」
また、朱斗に声をかけられる。
よくよく彼の顔を見ると、それは緊張している時の顔だった。
…そっか、声かけられてばかりだから、相手に声をかける時は朱斗なりに緊張もするんだ。
「汐?」
「うん、そうしようかな。万代もいい?」
「いいよー、新しい友達も増えそうだし」
確かに。
朱斗に恋愛的な興味のない万代の場合、愛想もいいから普通に友達としてつき合えるだろうしね。
…私も友達増やしたい。
「…よかった。断られるかと思ってた」
「でも、もっと可愛い子が座りたがるんじゃないの?」
「んー…よく知らない香水臭い女子が隣に来るより
汐が隣の方がいい。何か花とか果物の匂いするし…安心する」
…へへ、と笑う顔。久しぶりにちゃんと見た気がする…。
3人で喋ったり、朱斗の友達が近づいてきて結構大勢で話してると、チャイムが鳴って、教室のドアが開いた。
「おはようございます。実は、このクラスに転校生が入ることになっていますから、始業式の前に紹介しておきましょうね。どうぞ、入ってきて下さい」
「はい」
鈴を転がしたような可愛らしい声。
聖風さんだ。
…彼女の席、どうなるんだろ。
「聖風愛です。これからよろしくお願いします」
「聖風愛さんです。自己紹介は後で全員分やるので、この辺にしましょう。聖風さん、空いている席にどうぞ。荷物をおいたら移動しましょう。
始業式ですよー」
…そっか、朱斗の隣、なくなってるから…。
適当なとこしかないんだ。
始業式が終わって、自己紹介タイム。
3回目だから知ってるってば、とは思うんだけどね。
「聖風 愛です。早くこの学校に馴染めるように頑張ります!」
まぁ、無難だよね。
馴染みすぎて学園一のイケメンキラーになってるけどね。
「…河桐蒼哉」
剣道部の河桐君。
万代はクールっていってたけど…ただの無愛想じゃ…。
「えーっと、テニス部所属、灯桜朱斗。数学は超苦手なんで、松葉先生、お手柔らかにー」
…これ以上松葉先生がお手柔らかにしたら、本気で小学生でも分かる算数のレベルになる気がするよ、朱斗。
「話を振られたので先生も。松葉浅黄、担当教科は数学です。灯桜君のお願いは却下の方向で」
クラスの笑いを掴んだ。やるなぁ、松葉先生。
「水火土日向、新聞部です。良いネタがあったら私まで!」
「金木月実です。吹奏楽部に入ってます。よろしく」
…そういえば、この二人聖風さんの友達になるんだっけ。
って、次は私か。
「佐藤 汐です。一応家政部に入ってます、よろしく」
「オレの幼馴染なんで、告白するならオレに勝ってからね、テニスで」
勝てるかー!や告白しねぇし!という男子の声。
前半、乗ってくれてありがとう。お世辞でも何かほっこりしたよ。
後半、自分の顔は分かってはいるが気持ちを考えろ表出ろや。
「演劇部の相須万代です!汐の親友なんで、告白する人はあたしを通してねー!」
だから人をネタにして笑いを取るなと…!
「古庄美凛。弓道部に所属しています。これからよろしくお願いします」
…目立たないくらい静かな人だけど、よくみたら美人だよなぁ…。
「みなさん個性的で、これから一年楽しくなりそうです。
じゃあ、今日のHRはここまで。明日は入学式なので、先生方がつけないため、部活は中止です。それぞれ気をつけて帰って下さいね」
松葉先生の号令で、放課となった。
朱斗からカラオケに誘われたが、断った。
いや、カラオケは好きなんだよ?
けど、今日は二人からネタにされまくって傷心なんだ、私は。
万代は朱斗たちとカラオケに行くことにしたらしい。
友達作りたがってたもんなぁ。