死んでも俺は、ハーレムをあきらめないからな!
16歳の誕生日を迎えたその日――
――俺は死んだ。
「あっ、……ぅあ、がっ…………」
死に間際。
自動車にひき逃げされた俺は、土砂降りの中もがいていた。全身を蝕む死の恐怖に精神を苛まれながらも、全身の骨が軋みながらも、約束の場所に行くために起き上がろうとした。
だけどもう、意識すら失くしそうで、視界の端が白く染まりつつあった。
血塗られた手がだらりと脱力して、アスファルトに叩きつけられそうに――
「君はまだ生きたいのかい?」
いつの間にか、そいつは俺の傍に立っていた。
だが、そいつには生気というか存在感が希薄で、どこか浮世離れしていた。透けそうなぐらい真っ白な肌と、血色の悪そうな唇をして、黒いレインコートを着込んでいた。顔は中性的で、薄暗いこの時間帯では性別はわかりづらかったが、女だったらかなりの美人だ。
そしてなによりおかしいと思ったのは、降り続ける雨がそいつの肩には――当たってはいないこと――だった。
「…………た………い……」
もはや虫の息である俺から口から漏れたのは、意味を伴っていない言葉。だが、そいつは「そうか……」と呟いてなにやらわかったふうな態で頷いてる。
「残念だけど、君はもうすぐ死ぬよ。それは君が一番よくわかっているだろうけどね」
そいつはコートの中から黄色い札を取り出すと、なにやら指を噛み出す。出血した手でなにやらお経のようなものを札に書き込むと、文字が鈍く光りだす。
「――だけど僕は君を生き返らせることができる」
湧き出た希望の言葉に瞳を見開くと、そいつは険しい目つきになった。
「でもそれは生者とも死者とも違う。いわば、化物と呼ばれる修羅の道を歩むことになるだろう。幾多の敵に、せっかく拾ったその命を狙われるかも知れない。……それでも君は、仮初の命に縋るかい?」
コクンと首を縦に降ることしかできない。そしてなにより、霞がかった頭じゃなにを喋りかけているのか半分も理解できていなかった。
俺の濡れた髪の毛をかきあげ、額にピタリと札を張ると、そいつの顔が近づいてくる。
「これは奇跡なんかじゃない、ただの呪いだよ。それを……ゆめゆめ忘れないでくれよ」
目を瞑ったままそいつは俺の唇に吸いつく。
「…………うっ…………」
口元の水気が沸騰するかのように熱を帯びる。そのままそいつは俺の身体を抱き寄せると、膝に乗せる。そのままゆっくりと俺の身体は五臓六腑の隅々まで温かなものが浸透していく。
そして、初対面の奴にキスされながら――
――俺は死んだ。
……完!!www
魔桜先生の次回作にご期待下さい!!