レイ
コオウは暗闇の中に佇んでいた。
体がいう事を利かず、思うように寝返りすらうてない。
不意 にコオウの視界に二人分の足が見えた。節々の痛みにむち打って顔を上げると、そこにはいる はずのない者・・・カイとスーシャがコオウを見下ろしていた。
「カイッ、スーシャ!生きてたの?!」
コオウの問いにカイ達は答えない。かすかに嘲笑を浮かべスーシャはコオウの上にかがみ込んだ。
「クックック。王子は何を言っているのですか?俺は貴方のせいで獣に殺されたんですよ?生 きている訳無いじゃないですか。ほぉら・・・。」
そう言ってスーシャは自分の首に手をやり、首から上を取った。首の切り口からは血が滴りコ オウの額をぬらす。
コオウは叫びたかった。だが喉が張り付くような感覚で声が出ない。
「フフフフ。王子は何をおびえてらっしゃるのですか?貴方の手はすでに血にまみれていると いうのに・・。ほら、俺の喉を裂いたのも貴方の手だ。」
カイは自らの手で喉の傷を広げ、コオウに見せつける。ついにコオウは這うようにしてそこか ら逃げ出した。
「コオウ。コオウ。こっちにおいで。そこは怖い所だ。」
「コオウや。私達の大事な息子。」
不意に横から父と母の声が聞こえてコオウは手を伸ばした。その手は握られコオウは抱きしめ られる。
「助けて父上!母上!」
だがコオウの必死の叫びに父と母は不可解な答えでもって返す。
「そこは怖い所だ。でもなコオウ。私らはもっと怖かった。」
「そうよコオウ。とっても苦しくて痛かったのだから・・・。ふふふ。何で貴方だけ無事なの かしらねぇ。」
そう言うと父と母の胴体が弾け、あの苦悶に満ちた表情となった。そして首だけとなった後も 笑い続ける。
コオウは後ずさろうとするが背中に何かが当たって動けない。振り向くと、それ はカイ達で、彼らもまた無惨な姿で笑っていた。
「コオウ。みんな貴方のせいで死んだのよ。うふふふふ。」
「私達は苦しんだ。お前も私達の元に来い。」
「俺は声を上げることすら許されなかった。こんなんじゃ死にきれねぇよぅ・・・。」
「お前は人殺しだぞぉ。俺はお前に殺されたんだぁ。信じていた王子にぃ・・・。」
くっくっくっくっく・・・
ふふふふふふふ・・・・
ははははははははは・・・
あーはははははは・・・
コオウは耳をふさぐが否応なしに声は心に届いていた。
「いやだああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
コオウは自分の上げた悲鳴によって目を覚ました。
「はぁはぁはぁ・・・」
荒い息を付き顔中にじっとりとかいた汗を掌で拭うと自分が寝台の上で寝ていることに気が付 いた。
「夢・・・?」
「目が覚めましたか?」
独り言に返事が返ってきたのでコオウは驚き顔を上げると寝台の横の椅子に一人の青年が腰掛 けていた。
色白で整った顔立ちの青年は立ち上がるとテーブルの上にあった水差しを取り、 コップに注ぐとコオウに手渡した。
「飲みなさい。のどが渇いているでしょう?」
コオウは無言で受け取り口を付ける。青年の言うとおり確かにのどが渇いていた。コップに注 がれた水をゆっくりと飲みながらコオウは青年を観察する。
背丈はキークよりも高く、年 もキークよりかなり年長に見えた。首元で蒼いリボンによって束ねられている濃蒼の髪は 腰よりも長い。黒いワイシャツに黒いズボンで闇に融けそうな人だと思った。
不意に先ほどの 黒いローブの男かと危惧したが、明らかに声が違った。
そして何よりも印象的なのはその瞳。 オッドアイ。左は澄んだアイスブルー。右が・・・銀だった。色素が薄く、『邪心の瞳』と呼 ばれる銀色の目。コオウの視線に気づいた青年はにっこりと微笑む。
「大丈夫ですよ。貴方の敵ではありません。城壁の所であなた方を見つけ、ここまで運びまし た。私は能力者で、少しばかり力が使えます。この部屋には結界を張っておいたので、当分の 間は平気でしょう・・・。安心してください。」
コオウは飲み終わったコップを青年に返し、はっと気が付く。
「そうだ!キークは!?・・ええと、あの、僕と一緒にもう一人倒れていませんでしたか?」
青年は人差し指を口に当てそっと背後に目配せした。
「まだ眠っています。力の消費が激しかったのでしょう。じきに目を覚ますと思います が・・・。」
青年がそう言ったときキークがむくりと起き上がった。
「ふわあぁぁ。よく寝た!ん〜〜!」
キークは大きくのびをするとコオウの方を向きあっ!と声を上げ、コオウのもとに走り寄り、 青年に敵意の視線を向けた。
「誰だお前!!何者だ!?」
「ち・ちょっとまってよ、キーク!この人は僕達を助けてくれたみたいなんだ。」
コオウの声にもキークは警戒を解かない。
「違うコオウ。こいつはおかしい。気配が・・・気配が無色なんだ。」
普通、人の気配は色を持っている。死者は別として、色を持たぬ者がいるという話をキークは 聞いたことはなかった。青年はため息を付き椅子に腰掛けて話し始めた。
「あぁ、貴方も能力者なのですね。・・・確かに私に疑うべき要素は多々ありますが、今は信 用して頂くしかありません。私はレイと申します。私も能力者なので貴方の言うおかしいの意 味も理解できますが・・・これは生まれつきなのです。出来ればこの瞳も個性の一部だと思っ ていただければ嬉しいのですが・・・。それとあのローブの方は追い払っておきましたよ。」
そういってレイはきれいに微笑んだ。キークは一呼吸置いて警戒の色を消した。
「すまん。疑って悪かった。・・・今俺達はそんな場合じゃないんだが・・・」
キークの返答にコオウが答える。
「レイさんが結界を這っておいたからしばらくは平気だって。」
「あの・・・『さん』は付けないで下さいね。あなたのほうが身分が上です。」
コオウの言葉にキークの眉がぴくりと上がる。
「おまえ・・・レイとか言ったな。結界がはれるって事は相当な使い手か?だがここには結界 特有のピリピリした感じがねぇ。・・・というか、ここは何処だ?」
キークの鋭い質問と、最も根元的で目覚めて最初に問うべき質問にレイは答える。
「ここはコオンの宿屋です。私はたまたまあの平原に通りかかったのですが、あなた達を見つ けたので、連れが獣に襲われ落馬して気絶したと言って運んでもらいました。このフードをか ぶせていたので素性はばれていないと思いますよ。」
そういってレイは茶色い布を持ち上げ、話を続ける。
「えぇと、キークでしたね。私にはその結界のピリピリした、と言うのがよく分からないので す。たぶん系統が違うからだと思うのですが、私達の結界は調和するための結界なんです。調 和し敵の目を欺く・・・もちろん弾くための結界もできますが。ですから・・・」
レイの話が難しい方向に行きそうだったのでキークは慌てて遮った。
「ま・待った!こんな所でそんな話はいい!言ったって小難しい話は俺にはわかんねぇし。こ こがコオンの宿屋でしばらくは安全って事が分かれば十分だ。」
慌てるキークにレイは笑顔を崩さずに答えた。
「分かりました。・・・では夕食にしませんか?」
その言葉でキークとコオウは自分たちが空腹で、随分と長い間眠っていたことに気が付いた。
夕食を宿屋の下の酒場から買って来ると言ってレイが部屋から出ていくとコオウとキークは盛 大なため息を付いた。
「・・・しっかしまぁ、よく俺達は助かったなぁ。死んだかと思ったんだが。」
そう言って首をコキコキと回すキークにコオウは答える。
「そうだね。でも何でキークに出来ないことが出来たのかなぁ?・・・あの人はいったいどう いう人なんだろう?それにあの人、僕達が狙われているって知ってる様な口調だった し・・・。」
コオウは小首をかしげる。その仕草はまだまだあどけなさを残していた。
「・・・そうだな。確かにあいつは素直に信用するにはちょっとな・・・。気配は無色で『邪 神の瞳』。物腰が良いのに髪は長い。疑うには十分だ。だが・・・悪い奴ではなさそうだぜ。 気配は透明でも濁りはなかったんだ。・・・あのな、悪い事しようとする奴の気配は濁った り、よどんだりするんだぜ。」
高貴な身分の男性は髪を短くそろえるのが一般的だ。切り整える手間と費用がかかるため下の 身分になるほど髪を伸ばし続け、それに伴って大抵の者が暮らしの不自由さから荒んでいく。 コオウは短髪だし、キークも肩に掛かる程度だ。
「そうだね。僕も悪い人ではないと思う。・・・僕は取りあえず信用することにするよ。助け てくれたのは事実みたいだし・・・。」
「あぁ俺も信用するさ。一応だけどな。・・・ところでコオウ。お前はこれからどうするつも りだ?こんな所にいなくても城に戻ればもっと安全に匿ってもらえるんじゃないのか?」
コオウの脳裏に夢の中の人たちがよみがえってきた。どう答えようか迷っていると、コンコン コンと控えめなノックの音が聞こえ、コオウが返事をすると扉が開きレイが器用に三枚の皿を 片手に持って入ってきた。
「お待たせいたしました。下の酒場から適当に見繕ってきたので食べましょう。少し狭いです が・・・。」
そう言ってレイは、小さなテーブルに皿をおくとコオウの寝台のそばへ持っていき椅子を引き 寄せた。コオウとキークは寝台に腰掛けたまま食べることにした。
「・・・これからの事ですが・・・」
コオウは鳥の塩焼きを口に運びながら切り出す。
「・・・僕はしろ・・・えぇと家に戻ります。ここにいてもレイやキークに迷惑がかかる し・・・。みんなは、カイやスーシャは・・・僕の・・・・僕のせいでっ・・!」
しばらく落ち着いていたコオウだが、自らいなくなってしまった人の名を口に出すことで悲し みがわき上がってきた。すすり泣くコオウにレイは困ったように問いかける。
「すみません。私には話が見えないのですが・・・。それは出来ないと思います。先ほど酒場 に行ったのですが、賞金首の話で持ちきりでした。」
「!ふぉれってまふぁくぁっ!!・・・ごはっ!けほっ!けほっ!」
キークはシーフードサラダを口に含んだまま叫び、ドレッシングにむせた。
そんなキークが収 まるまで待ってからレイは言った。
「えぇ。あなた達のことでした。国王・王妃・王子殺しの罪。ただし名前はありません。金の 髪に茶の瞳で年の頃16〜17。茶の髪の少年が協力者。本人である証拠があれば生死は問わ ない。新王になられるリューイ様の元に届けた者には金貨100枚を与える・・・。二人であ る場合は200枚だそうです。酒場のごろつきの話なので金額に誇張はあると思います が・・・。」
キークは勢い良く水を飲むとレイにくってかかる。
「それでなんだってんだっ!!俺を差しだそうって言うのかっ!?」
コオウも負けずに言う。
「変だよ!それ・・・だって第一!王子の僕は生きてるのに!!」
言ってコオウは慌てて口をふさぎ、キークと顔を見合わせしまったという顔をした。その顔に レイは微笑み答える。
「やはりそうでしたか。確か王子の名はコオウと言ったと思ったので・・・。いえ、そんなに にらまないでください・・・。あなたを差しだそうなんて思っていませんし・・・ですが酒場 の噂は本当です。」
ニコリと言うレイになおもキークは言い立てる。
「差し出すんじゃなきゃどうするつもりなんだよ!?」
くってかかるキークにかまわずレイは続ける。
「・・・国王・王妃・王子の遺体は公開されたようです。王子の方は炭化した死体であったと か・・・。たぶんこれは偽装なのでしょう。問題はあなた達が本当に国王・王妃を殺したかな のですが・・・」
レイの言い分にコオウが反抗する。
「 違う!!僕達じゃない!キークは誰も殺してない!!僕も父上や母上の事は知らないん だ!!・・・でも・・僕は・・・」
言いかけたコオウを手で制し、レイは微笑み言った。
「・・・そうですか、私はあなた方を信じます。あなた方の気配は澄み渡っているし、王宮か らの布令よりも筋が通っていそうです・・・。よかったら私に話していただけないでしょう か?どうせ今夜はここに泊まるので時間はあります。」
コオウとキークは顔を見合わせうなずくと互いに知っていることをポツリポツリと話し始め た。
「そうですか・・・。それは・・苦しかったですね。」
レイはカイの下りから話すことが出来ないほどずっと泣き続けているコオウをそっと抱きしめ た。
「これが俺達の知っているすべてだ。」
カイの事以降、一人で話し続けたキークは水を一気に飲み干した。
「ありがとうございます。おおよそのことは分かりました。つまり何処かの呪術師がコオウを 含め国王・王妃の暗殺を企てた。だが王子はキークや私に助けられたので代わりに誰か・・別 の少年を殺して焼き、あたかも王室一家殺害をしたように見せかけた・・・。」
レイは思案するように虚空を見つめる。
「ひっく・・・。うっうっ・・。でも・・・叔父上は生きて・・・てくれて・・・うっ く・・・よかっ・・・た・・・。」
レイにしがみつきながらコオウは言う。だがコオウを見るレイとキークの顔は苦々しかった。
「なぁ、コオウ。俺は嫌な予感がするんだ・・・。俺は一度もそのリューイって奴にあってい ないんだ。なのにどうして俺の特徴が分かるんだ?」
「?・・だって・・・それはキークを見た誰かが・・・伝えたって・・・事じゃないの?」
レイから顔を離しコオウが尋ねる。レイはコオウの目の高さまで屈み込み、肩に手を置く。
「・・・コオウ。もし、もしもですが、伝えたのがさっきのローブの男、もしくは話の中の赤 黒い獣だとしたらどうでしょう?それに話を聞けば、少年は貴方の事だと貴方の叔父上は分か るのではないでしょうか?それなのに『生死は問わない』とは随分無茶な気がします。逆に貴 方の叔父上がそれを望んでいるのならば、つじつまが合います。貴方は王子ですから国民に顔 を見せることはなかったのでしょう?」
この問いにコオウは頷く。
「・・・うん。正式に王位を継承するまでは公の場では顔を隠すのがきまりだから・・・。 ・・・そのおかげで遠乗りとかは少ない騎士で行けたんだ・・・。」
「つまり国民やごろつきは貴方の顔を知りません。王子の敵、もしくは金の為、嬉々として貴 方を殺す可能性があります。・・・どうもおかしいと思いませんか?」
レイの発言にコオウは大きく目を見開き頭を振る。
「そんな!?叔父上がそんな事するはず無いよ!だって・・・だって父上は実の弟なの に!?」
コオウの意見に今まで考え込んでいたキークが答える。
「・・・俺はユーカを出てからお前に会うまで、街道を行く旅人以外誰にもあっていない。レ イの言うとおり誰もはっきりと俺の顔は見ていないんだ。・・・あのローブの男と赤黒い獣以 外は・・・。」
キークの言葉にコオウの瞳から新たな涙が零れた。
「・・・けど、叔父上はそんな人じゃないよっ!そんな僕達を憎むようなこと・・・一度だっ てそんな素振り見たこと無かった!」
レイはコオウに言い聞かせる。
「・・・落ち着いて下さい、コオウ。これは今、推測でしかないのです。新王からの布令で あっても城の他の者がそそのかしたのかもしれません。ともすると犯人は他にいることになり ますし、サーム人の髪は大抵茶色ですから貴方が死んでいると新王がお思いなら、サーム人が 手引きしたと考えたかもしれません。少なくてもあのローブの男は新王本人ではなかったので しょう?・・・それに・・もし、もしですが、仮に新王と呪術師が手を組んでいたとしても、 代わりの貴方の死体を用意したと言う事は、新王とその呪術師の関係はあまり良好ではないと いう事です。」
レイの言葉にコオウは頷いた。その時不意に扉が叩かれた。 レイはキークとコオウが死角に隠れるのを見て扉を開けた。
「すいませんねぇ、夜分遅くに・・・。」
扉から顔を出したのは宿屋の亭主だった。少し髪の薄い壮年のサーム人だった。
「ご主人、どうしたのですか?こんな時間に何かありましたか・・・?」
レイが人当たりのよい笑顔で迎えると主人は口早に告げた。
「いえね、別にたいした用じゃないんだが、明後日の収穫祭は中止になったそうで・・・。何 でも王室一家が殺害されたそうでして・・・。これから王の軍隊が取り調べに来るというお達 しが来たんで、荷物等は見やすいようあらかじめ広げておいてくだせぇ。」
「そうですか。道理で酒場が騒がしかったのですね。・・・分かりました、ご主人。わざわざ ありがとうございます。・・・ではあの・・明日の開門は何時になりそうですか?」
レイの問いに主人は眉間にしわを寄せる。
「あんたがたは明日立つんかね?・・・やめといた方がいいよぉ。たぶん八時頃開門だと思う けんど、監査が厳しいと思うぞ・・・。何つっても事が事だけに『疑わしきは殺せ』らしいか ら・・・。」
主人の答えにレイは苦笑で答えた。
「・・・わかりました。親切にどうも。ではまた後ほど・・・。」
レイは主人が次の部屋に向かったのを見て慌ててドアを閉めた。 隠れていたキークは顔を出すと開口一番にこういった。
「おいおい、やばいんじゃねぇの?どうすんだよ?」
「まずいですね。相手は呪術で私達の居場所を探すかと思って結界を張りましたが・・・人を 使って探されたのでは意味がありません。これは早々に逃げた方が良さそうですね。」
レイがそう言った時、
「あぁ!キーク!レイ!」
窓際にいたコオウが二人を呼び、キークとレイは外を見た。
「・・見て、あれ!国軍だ!!」
コオウが指さした町の高台には騎士達が群をなしていた。
「数は三十人強と言うところですか・・・。キーク、貴方はどうしますか?」
目を細めレイは呟く。
「・・・俺はこんな所で死にたくない。逃げてみせるさ。あんた達こそどうすんだ?」
「私も共に行きましょう。もともとコオンに立ち寄るつもりはなかったですし、貴方が逃げれ ば宿の台帳に記入した人数と違うという事で、逃亡の手引きをしたと疑いが掛けらます。私は まだ死ぬわけには行きませんし、拷問にかけられるのもまっぴらですから・・・。コオウ。貴 方は騎士達と共に城に帰っては・・・」
レイはそこまで言って騎士達を眺め言い直す。
「・・・無理そうですね。騎士達の気配に黒くまとわりつくものが見えます。」
レイに並び外を見ていたキークは言う。
「あぁ、操られてんな・・・。少なくとも呪術者はまだコオウを狙ってるって事か・・・。正 気に戻したところで、掛けた呪術者が王宮にいれば同じ事だな・・・。どうすんだ、コオ ウ?」
コオウは唇を噛み締めて言う。
「僕は・・・僕も一緒に逃げる!逃げるけど、今は逃げるけど・・・僕は許さない・・・。み んなを・・・父上を、母上を、カイ、スーシャ、城のみんな、それにキークやレイを巻き込ん だ人を絶対に許さない!!だから・・逃げる。逃げて生き延びていつか犯人を見つけるん だっ!」
キークとレイはコオウの気配が大きく燃え上がるのを見た。
「決まりましたね。・・・時間がありません。この夕闇に紛れて行きましょう。」
「おう!」
「うん!」