◆マスター◆
「空耳じゃないですよぅ!ココです、ココ。本の中で~す☆」
本がガタガタ勝手に揺れている。
「ギャー!!」
思わずキリヤは持っていた本をバタンと床に落とした。
「…っ、痛ったぁー!ちょっとちょっと!もう少し丁重に扱いなさいよ!!」
まったく、レディーになんて酷い仕打ちなのかしら…と本はぶつぶつ文句を言っている。
―イヤイヤイヤ、有り得ないだろオイ!夢か?夢なのか??夢だよな?…うん、夢だ。
「よし納得!寝よう。」ポンと手を打ってキリヤは布団を被った。
「ちょっ、…ちょっと待ちなさいなお兄さん!!現実逃避なんて許しませんデスヨ!?」
慌てた様に本は床の上で跳ねる。
「スミマセン、僕寝るんで静かにして下さい。」
「あ、ごめんなさい…。っじゃなくて!! 起きて下さい、お願いします!起きて、起きてヨォ…」
本は跳ねるのを止めてプルプル震えだした。
「起きろっつってんだろーがぁぁぁっ!!!!」怒鳴り声と共に本からキリヤに向かって青白い稲光が走った。
―ビリビリッ!!!
「うおぁったぁー!!死ぬ死ぬぅ!」キリヤは飛び起きた。
「最初からそうすればよろしいのよ、マスター!」
「だっ、誰がマスターだよ!!って布団燃えてるー!」
「ふんっ!」
ちょっとやり過ぎたと思ったのか本は「聖なる泉の精霊よ、癒やしの水を!!」と叫んで天井に浮かんだ魔法陣から水を召喚して火を消した。
「…で、俺にどうしろと?」キリヤは涙目になりながら本に言った。
「ですから、私が目覚めた時に私を所持していたのがアナタ様でしたので自動的に藍島キリヤが私のマスターになるんです。」
「はぁ、…んな雛鳥じゃあるまいし。」
「いえ、私達はマスターに相応しい人の手に渡るまで目覚めません。」
「ふーん…、でマスターって何すんの?」テーブルに頬杖をついて気だるそうにキリヤは訊いた。
「”青華聖戦“でどんな願いも叶える 伝説の花を手にする為
闘うんです。私と共に。」