(1/4)雪の山形へ向かう
雪の山形へ向かう。
って、まるで演歌じゃん。
と頭に浮かんだ考えを有明貴理子は追い払った。
何で演歌には冬の東北、特に日本海側を歌ったものが多いんだ。
吹雪、冷たい風。単なるイメージの決めつけじゃないか。いつの時代だ。今や、日本中どこでも、いや世界中どこにいても同じだろ。
昼間だというのに曇りで薄暗い山道、しかも雪。チェーンを履いたレンタカーのハンドルを握りつつ、そんな事を考えていた。
しかし、この取材に自分が選ばれたのは、やはり山形出身だからだろうな、とも有明貴理子は考えていた。どんな形でも自分に与えられた仕事はきちんとやる。
有明貴理子はスポーツジャーナリストになりたかった。大学時代は女子サッカーをやっていたが全国レベルには届かなかった。社会人リーグに入る道はあったが、別の形でスポーツに関わりたいと考え、スポーツジャーナリストを目指した。中堅出版社に就職したものの厳しい業界だ。思い通りとはいかない。何でもやらなければいけない。
今回、上司から指示を受けたのはIT技術者の取材だ。それはいい。しかし取材場所が山形県の山奥ってどういう事。IT技術者って、港区あたりのオシャレなマンションに住んでるんじゃないの。
などと考えていたら目的地についた。丁度、指定された13時。
目の前にあるのは、畑の脇にある今にも崩れ落ちそうな古民家、いや納屋だ。
ここに、今回の取材対象者、中森トオル氏が住んでいる。らしい。
いやいやいや、これ、大丈夫か?
有明貴理子は呆然とその納屋を眺めていた。




