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悪役令嬢に転生しましたが婚約破棄されました

掲載日:2026/02/02

「お前との婚約を破棄する!」




交通事故にあったら乙女ゲームの悪役令嬢に転生していた。そして、テンプレにストーリーを改変しようとして、失敗して、婚約者の王子に断罪されている。

「私は何もしておりません!」

「そうね、あなたは何もしなかった、だから何も変えられない」

そう王子の横にいる、ピンク髪のヒロインが言う。

「何を言うの…!」

「だってあなたには、何もなかった、美しさも、賢さも、強さも、正しさも。物語の悪役令嬢の持つ美点はなにも」

「なにを…!」

その途端、私の姿が変わった。美しかった姿は、前世の姿に変わる。

「いや、なんでこの姿…!」

冴えない私。何も持たない私。見たくない。見ないで。

「そもそも、このゲームに悪役令嬢は存在しなかったでしょう?」

そうだ。このゲームに悪役令嬢は存在しなかった。あったのはヒロインと王子達の、優しい恋物語だけ。

「あなたは正しい被害者の立場を望んだ。でもそんなもの、始めからなかったのよ」

ヒロインと王子の顔が、クラスメイトの顔に変わった、やめて、見たくない!

世界が崩れる。そして、白い光で目が覚めた。



ジリリリリリリ。

スマホの目覚ましで目が覚める。どんな夢を見たかも覚えていない。部屋から出て、鏡を見ると、いつも通りの冴えない私。母親の作った料理を食べ、少し遅れて学校に向かう。

教室では既にクラスメイト達がそれぞれのグループに固まって会話している。この中で特に輝いている二人。クラスの1軍ってやつ。なんだか、二人の顔を夢で見た気がする。

「おはよう、××さん」

「おはよう、顔色悪くない?」

二人とも、三軍の私にも朗らかに話しかけてくれる。二人は手を繋いでいる。恋人同士なのだ。クラスじゅうから祝福されている。


自分のいつもいるグループに行く。

「おはよう、貸した乙女ゲーム、どうだった?」

「おはよう、うーん、私には合わなかったかも」

「そっかあ」

パッケージの中央にいるイケメンは、どこか恋人同士の片割れに似ていた。


…別に、彼に恋していたわけではない。誰にでも分け隔てなく優しくて、顔がよくて、スポーツも勉強もできて、爽やかで、そんな彼が選んだのは自分に似合いの優しくて可愛い、これまた完璧な女の子。たとえ私が好きでも、相手にはされない。優しくできるのと、対等に愛せるかは違う、私はそれを理解している。

だけど、でも。私が悪役令嬢だったなら、婚約者とか、彼の傍にいるのが正当な立場だったら違ったんじゃないかって。自分を選ばない事を罪だと責めて、思いっきり傷付ける理由ができるんじゃないかって。そう考える事がある。

…なんだか今日の私は変だ。こんなことを考えるなんて。私はただストーリーを読んでいるだけ。悪役令嬢を応援してるだけ。そんな他意なんて存在しない。しないはずなのだ。家に帰ったらまた悪役令嬢ものを読もう。きっと、私にいい夢を見せてくれるはずだから。

そう思いながら、手を繋ぐ二人のほうを見ないようにしていた。

…見たらきっと、夢を思い出してしまうから。

悪役令嬢の見た夢、のマイルドバージョンという感じです。

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