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シャーロキアンのホームズⅤ〜小さな依頼人と子犬の物語〜  作者: 語り部ファウスト


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7/7

第七幕:完結

やあ、君。僕はホームズだ。そして、ホームズを愛するシャーロキアンの一人だ。

なのにーーシャーロック・ホームズと名乗っている。


第六幕では、僕とワトソンがキレイに話をまとめようとしたら、部屋にグレグソン警部補が飛び込んできたのさ。


僕らはベーカー街にある虚実荘221Bーーその三階にある居間にいた。

トビー・グレグソン警部補は大きく息を吐いて、扉の近くにいた僕のとなりに腰かけた。

それから、目の前にある卓上に彼が抱えていた分厚い革表紙のファイルをゆっくりと置いた。

「そろそろ、お前たちに動いてもらおうと、スコットランドヤードの書類室に行ったんだ。ここには、我々警察が捜査を打ち切った事件の宝庫だからな。吾輩の出世のためのーーそれはいい!

問題はここからだ。吾輩が部屋に入った時に、すでにヤツがいた。」

僕は、うなづいて見せた。

「レストレードだね。彼は制服巡査だったと言ったがーー」

「そうだ。吾輩が部屋に入ったところ、ヤツは吾輩に気軽な挨拶をしたんだ。グレグソン警部補と言ってな。

ヤツは吾輩を知っていたーーバカにしてた!」

「別に今に限ったことはない。

原作ホームズを読んだら、君の名前はーーまあいいさ。それで、君。まさかぶん殴ってはないだろうな。」

「殴ってはおらん!ただ、『貴様は誰だ!なぜ、ここにいる!』と言った。怪しかったからな。」

「なるほど。」と僕は応えた。

「ヤツは、今日、刑事になったと言った。名前をジョセフ・レストレードと名乗っていた。ふざけた男だ。

女たらしのようなヤツだ。

長い金髪を後ろで束ねていた。目の色は、茶色。顔は女みたいにふっくらと整っていた。身体つきは華奢で、来ているものは、だぶついたチェスターコートの下から黒いズボンが見えた。」

グレグソン警部補は、そこで一旦黙った。彼の拳は震えていた。

「ヤツは、吾輩と同じ警部補になると言ってきた。近いうちにだぞ? そしたら、次は警部を目指すと言った。

これは、ライバル宣言だ!レストレードの名をした男からの挑戦だ!」


僕は考えるフリをした。

だって面倒くさかったし、お酒も飲んでいたからね。

「君の物語は、君の意思に反して劇的なものになってきそうだね。」と言っておいた。

「劇的?」とグレグソン警部補は食いついてきた。

「そうさ。最終的に、君は警部になる。おびえるなよ。

劇的なイベントは必要だぜ。

警部になった後、

部下たちと過去の話をする時にさ。

『吾輩はがんばった!』というより、

『ライバルと競い合って、警部になった』という方が尊敬される。

レストレードというライバルなら、君、やったぜ。一気に有名人だぞ。」

僕の話を聞くと、彼の頬から緩んでいった。

「なるほどな。ふむふむ、悪くない。

レストレードは、引き立て役なわけだーー」と彼は落ち着いたようだった。

彼はテーブルの革表紙のファイルを指さした。

「このロンドンの闇を持ってきたんだ。未解決だし、これから吾輩らの役に立つと思う。」

「そりゃ結構だーー」と僕がうなづこうとした時に、ワトソンは動いた。

「グレグソンさん。ボクらは無一文なんだ。お酒も満足に買えない。

お金を借してほしいな。

ーー後悔させないと思うよ。」とワトソンは根拠のない自信で金を借りようとしてた。

「ーー前にもかなり要求されたが。

ふだん、お前らは何にお金を使っているんだ?」

「ホームズもボクも事件を解決するために、必要なことをやっているだけ。

そしたら、お金はお酒を買えないぐらい減ったんだ。ボクらは悪くないよ。」

ワトソンは、そう言って酒瓶を強く抱きしめた。

「ボクらを信じてくれ、トビー・グレグソンさん。」

グレグソン警部補は、呆れたように財布から紙幣を取り出した。

ワトソンが、サッと手を伸ばし受け取った。あとで、彼から取り上げなきゃいけない。全部、酒になるからね。

「借しているだけだからな。お前たちは、このカシを返さねばならない。」

そういうと、彼は部屋から出ようとした。

僕は彼を呼び止めた。

「メイベル・アダムズをトレードしたい。他のハウスメイドはいないのか? 彼女、僕を始末したがっている。」

グレグソン警部補は肩をすくめた。

「彼女はプロフェッショナルだ。

君らをサポートするだろうよ。」

そういうと、彼は部屋から出て行った。


僕らは卓上に置いてある分厚い書類を眺めた。

「これが、ロンドンの闇かーー」と僕は呟いた。

「君のいう蜘蛛の糸が、これらに関わっているんだーー」

「やるべき事をやるしかない。」と僕は言った。

「ワトソン。グレグソン警部補からもらった金を分けよう。公平にだぜ。

僕らは二人で名探偵になるのだから。」



(こうして、物語は一旦幕を閉じる。)

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