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シャーロキアンのホームズⅤ〜小さな依頼人と子犬の物語〜  作者: 語り部ファウスト


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5/7

第五幕

【物語】シャーロキアンのホームズⅤ(5) 〜小さな依頼人と子犬の物語〜

【第五幕】

やあ、君。僕はホームズだ。そして、ホームズを愛するシャーロキアンの一人だ。

なのにーーシャーロック・ホームズと名乗っている。


第四幕では、クララ嬢が老人から犬を盗んだことが分かった。


老人はオーストリア=ハンガリー帝国からやってきた移民の一人で、この国の言語が話せなかった。ワトソンは、どうやら過去に、その国に住んでいたらしい。

「前に住んでた時にさ。ボクのーーかつての仕事は言葉が通じないじゃ、済まされなかったからーー」と彼は意味ありげに微笑んだ。

「で、どうしようか。彼から譲ってもらう?ボクら金なんてーーほとんど持ち合わせちゃいないよ。」

「グレグソン警部補は、最近仕事で忙しいからね。まあ、僕のおかげでもあるーー」

そうーートビー・グレグソン警部補は、現場で頼られるようになった。

僕の知性が、彼を優秀に見せたんだ。


そのせいで、彼とはなかなか会えずーー彼に金を借りる機会が減った。


そして、調査に必要なはした金は一気になくなる。ーー辛いことさ。


でも、グレグソン警部補への助言は、成果にはならない。彼も恩として感じていない。もっと難事件を解決しなきゃ、警部なんて夢だろうね。

「なんとかならないかーー」と僕はワトソンに聞いた。

「この老人は、お金ではイヤだって。

彼、ロキを神さまの遣いと思っている。普通の人は神さまの遣いを売らないよ。」

「僕は売るぜ。生活には変えられない。」

「この老人は君じゃない。

でもーー犬を売るために、使ってはいたよ。白いビーグルは目立つからね。

オックスフォード・ストリートで、あの老人は、子犬たちを売ろうとしたんだ。ーー無許可でね。」

「そりゃあーー」と僕は聞きながら後ろ髪をかいた。

「子犬たちは警官に没収されるね。」

「そうだ。そして、警官に通報したのが、彼女だ。クララ嬢だよ。」

「とことん、クソガキだな......」


僕は肩をすくめた。老人を殴りつけて、犬を取り上げるホームズなんていない。僕らは降りるしかないゲームに乗ったバカなギャンブラーだ。

犬を連れてこなくても、

犬を連れてきてもホームズではない。

なら、どうするか。

「おい、じーさん。他の犬なら売っていいんだな?」とワトソンに通訳させた。

「アンタは、この犬を手放したくない。それは、生活があまり貧してないからだ。なんとか持ち直そうとしてる。だから、こんなホームレスになっても、神の遣いがほしい。ーー他の犬を持っている。それも、ビーグル犬だ。そう、たぶん、染める予定の子犬たちだ。白い犬は売れるとアンタは知ったからーー」

ワトソンは苦笑を浮かべると、彼に僕の言葉を伝えた。

老人は、みるみる顔を青くした。


「ボクらを悪魔の遣いかと聞いてきたよ。一応、違うと言ったけど、彼、信じられないみたい。」とワトソン。

「ーーこの公園で、放し飼いをさせているな。その犬たちを白く染めて売るつもりだ。大したジジイだよ。

子犬を自分のところに戻るように仕込んだな」

「おい、子犬がそんな事できるのかい?」

「栄養失調の犬たちだ。そこまで、子犬じゃないかもしれないぜ。」

「つまり? この老人は詐欺を企んでたの?」

「ーーそうだよ。そして、僕らは彼から一匹もらう。警察に通報しないかわりにね。」

僕は笑いを抑えきれなかった。

きっと、このじーさんは僕を悪魔だと確信しただろうね。

「そして彼女にも、僕は言う。

『この犬は、君の罪の象徴でもある』ってさ。彼女、泣くかもしれないぜ。

僕に弱みを握られたと思ってさ。」

「子ども相手にーー英国紳士じゃないよ。それに彼女はバカじゃない。

犬の毛を染めても、すぐに元に戻る。」

「彼女は、その白い子犬を本物と思う。思いたいんだ。」と僕は言った。

「子どもだからこそ、白い犬をもっともかけがえのないものと思ったからね。

大人なら詐欺の可能性を考えた。

白い犬に、そんな価値を見出さないからね。

ーーだけど、彼女はどんなに賢く装っても、子どもなんだ。

大人の思考とは違う。

彼女は、白い犬を本物と思う。

毛が生え変わろうとーー」と僕は話すのをやめた。

ワトソンは静かに僕を見つめていた。



そして僕らはーーこの素晴らしいアイディアを実行した。


(こうして、第五幕は悪魔の計画により幕を閉じる。)

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