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シャーロキアンのホームズⅤ〜小さな依頼人と子犬の物語〜  作者: 語り部ファウスト


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2/7

第二幕

やあ、君。僕はホームズだ。そして、ホームズを愛するシャーロキアンの一人だ。

なのにーーシャーロック・ホームズと名乗っている。


第一幕では、神さまが悪魔のような依頼人を用意した事を知った。

僕は一気に、未来に希望をなくしちまった。


ここは僕らのベーカー街にある虚実荘221B。その三階にある居間。

そこはとても居心地の良い空間だった。

僕はちょうどソファに横たわってた。

ワトソンももう一つのソファで横たわって、酒瓶を抱いていた。


ノックも敬意も何もかもを持ちあわせてないハウスメイドのメイベル・アダムズが、居間に入ってくるまでは気持ちよく会話をしていた。

この愛すべき酒樽女は、僕らをイヤなものでも見るかのように見てた。

小さな子を連れてきたから、

てっきり、アダムズ夫人である証明でもしにきたと思った。

この自意識過剰の太ったオバさんは、旦那がいると主張して、夫人を名乗ってた。

僕はーーついつい彼女のウソだといっちまったから、僕と彼女は同じ屋根で住む事すら忌まわしいと想い合う清い関係になったんだ。

一番許せんのは、床に落ちたものはゴミだとして処分するガンコなーーまあいいさ。

そんな女が連れてきた小さな女の子。

まともな育て方をされてないと睨んでたら、やっぱりだった。


少女は、指差す勢いで叫んだ。


「メイベル・アダムズ夫人!こいつらが、男同士で愛を育んでる恥知らずたちねーー!」と。

僕は心の広い英国紳士で通ってる。

そりゃ、ちょっと口が悪いかもさ。

でも原作のホームズだって、たいがいだぜ。コナン・ドイル著『緋色の研究』を読んでみなよ。

おっと、僕のこの思考は一秒にも満たない。

僕はこう返してやることにした。

「おい、クソガキたたきだーー」最後まで言えなかった。ワトソンが悲鳴のような叫びをあげたからだ。

「うわぁ、アダムズ夫人!なんて、可愛い子を連れてきたんだ。ねえ、ホームズ。そうだろ?」

僕は心に思った事は言いたくない。

だけどワトソンが、あんな態度をとるのには訳がある。こいつはマヌケだけど、変なところに勘が働いた。

「トビー・グレグソン警部補の妹だね。」と出まかせを言ってやった。

なぜかって?

推理する気にもならなかったからさ。

あんまり可愛くない子。

やけに派手なドレス。

普通の令嬢の言わない下品さ。

どれをとっても、推理する気がない。

「まあ、やはりお分かりになったの。さすが我が国の名探偵の格好をしてるだけあるわ。あなた、期待できそう。」

女の子は、そういうと低い鼻をツンと天井にむけて、こう名乗った。

「アタシの名前は、クララ・グレグソン。あの有名な名を受け継ぎし者なのよ。」

「呪いの名だね。」と軽くチャチャを入れた。ガマンできなかったんだ。

だから、この子に「なんですって?」と言われた。

「僕らは忙しい。君のいう愛を育むのにね。」と言って、ワトソンに笑いかけた。

「ははは、子どもの冗談には驚かされるね。」とワトソンは微笑んだ。

「冗談?メイベル・アダムズ夫人がいつも言ってるわ。二人とも一緒だって。いつか仲良くホームズ(ホームレス)だわ!」

アダムズ夫人の顔は真っ青になってた。

僕らくらいさ。ハウスメイドに、ここまで愛されているのは。

「それで、クララ嬢はボクらに何をしてほしいのかな?」とワトソンが優しく聞いた。

「あら、アナタたち探偵なんでしょ?

アタシが頼みたいものぐらい、分かるわ。」

「そんなムチャなーー」とワトソンは酒瓶を更に抱きしめることになった。

「犬だな。ーー子犬だ」と僕はニヤリと笑ってみせた。

答えは、彼女の服とクソガキ。

君は分かったかい?


こうして、第二幕はホームズの挑戦により幕を閉じる。

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