BET.1 ALLIN TOBA
『タスティエーラ、松山騎手と共に16番ゲートに収まって』
――はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……。
『有馬記念ゲートイン完了、スタートしました!』
――キュランダ……キュランダ……。
『まず1周目、先行争いです。11番ミステリーウェイ押していますが……』
――キュランダ……キュランダっ!
『さぁ10番コスモキュランダが出てきました。あーコスモキュランダが先頭、並んでミステリーウェイーー』
――キュランダ、来た! 頼む、決め切ってくれ!
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賭芭元貴、25歳。
俺に残されたのは300万の借金と、手元の現金8万4千円。
取柄もなく手に職もない。人生の敗北者……。
競馬にパチンコ、競艇競輪で膨らみ続ける借金と、返済に追われる日々に疲れ、俺は今日全てを賭けて勝負する。
5番1番人気のレガレイラ、10番12番人気のコスモキュランダ。俺の誕生日5月10日の誕生日馬券に全てをぶつける。勝てば49.8倍。払い戻し400万。借金を返して人生をやり直す。
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「出ろキュランダああああああああ、タケシいけえええええええええ!」
握り締めた片道切符。行く先は天国か地獄か。
ギャンブラーとしての脳が、チリチリと焦げ散っていくのを肌で感じる。
『11番ミステリーウェイが先頭で、馬帯を外離して6番のメイショウタバルが先頭並んでいきました。更には10番のコスモキュランダと先団は三頭です』
1コーナーのキュランダの位置は完璧、レガレイラはルメールが乗っているから信頼出来る。
『2番手にメイショウタバルが上がって10番コスモキュランダが三番手、前三頭が抜けます2コーナー』
先頭の三頭が4馬身、5馬身と後続との差を広げていく。
そんな中1番人気のレガレイラは最後方で足を溜めていた。
『外黒い帽子4番ミュージアムマイル1000m切って14番アラタ、あとは後方3番ジャスティンパレス、5番レガレイラが最後方グループ――』
レガレイラ、ミュージアムマイルは最終コーナーから差す。
大事なのは前が塞がれない位置取り。頼むぞ、ルメール!!
『勝負どころ3コーナー残り800を切って6番メイショウタバルが先頭に変わりました。リード1馬身』
4コーナーを前に一気に馬帯が団子になってきた。
それを引き金に徐々に中山の熱気も、観客のボルテージも上がっていく。
『4コーナー残り400一団となってきた。4コーナーカーブから直線コースを抜いて、今度はメイショウタバルをコスモキュランダが躱して先頭に変わった。2馬身リードを取った――』
――く、くる!
「キュランダあああああああああああああああああ!! そのままいけええええええええええええええ!!!」
まさに奇跡。オッズ111.5倍の12番人気がここで1位に躍り出た。
この最高の瞬間、涙と共に俺の歓声は会場の一部となる。
ゴールまでのラスト一直線、坂を前にして塞ぐ者無し。後方との差2馬身以上。
その時、俺はレガレイラの存在を目で追った。
大事なのは前が塞がれない位置取り、だというのにレガレイラの前には12、1、9番と三頭もの障壁が――。
『直線コースの攻防、外からダノンデサイル伸びて200を切りました。さらには4番ミュージアムマイル、その直後が5番のレガレイラです――』
坂を前にして前4頭。先頭を2馬身差で駆けるコスモキュランダは3着内ほぼ確定。
つまり現在前を走る16、4、9の誰かを抜かなければいけない。
「ルメール出ろ! 出てくれルメェエエエエエエル!!」
レガレイラが前に出ようと加速した。
その瞬間、なんと16、9番のダノンデサイルとタスティエーラに道を塞がれた。
目の前が真っ白になっていく。ゆっくり、ゆっくりと時間が進んでいくように。
対して4番のミュージアムマイルが外から一気に突き刺さるような差しを見せた。
『坂を登ってくる10番コスモキュランダ、外から4番のミュージアムマイル、間9番のダノンデサイル、4番のミュージアムマイル、ミュージアムマイル差し切ってゴールイン!!』
悲鳴と歓声。その中で飛び交う罵詈雑言に紛れ、俺の天国への片道切符は一転、こうして地獄への直行便へと変わったのだった。
『4番ミュージアムマイル! クリスチャンデムーロ、大きく手を挙げた!! 3歳馬ミュージアムマイルです!!!』
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その日の某駅にて――。
『お客様にお知らせ致します。ただいまこの電車におきまして、人身事故が発生致しました。駅到着までしばらくかかる見込みがございます。列車到着まで、今しばらくお待ちください』
一件の人身事故が発生したのだった。




