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清吉の士官

士官をどうにかしたいと願う清吉に武士らしい名前を元武士である父から授かる。

そして、また、茶屋の屋号をつけた足利将軍様からのあり難き茶の文字を父は奉公する為に使う事に差し出した。

父の親としての温かい気持ちに前途が明るく見える

しかし、この先如何にして奉公が出来るか不安であるが、父の気持ちに清延と名を改めて武士として生きる覚悟を決めるのである。

実家に帰った清吉は、父親から奥の部屋に通された

「元服の折に渡さねばと思ったが、この店を継ぐのに、名前はどうでも良いと思って渡しそびれ」

「名前、、、ですか」

「中島の家ならば延が良いと思う」

父親の明延が見せた紙には、清延の文字が。

「きよのぶ」

清吉が呟くと、父は大きく頷いて笑った。

清吉は名前なんかに拘っていなかったが、まあ良き名前なのだと思った。

「あり難き幸せにござる」

武士らしく父に感謝の言葉を伝えた。

「しかし、士官するにも手柄を立てねば何処も無いのでは?最初からだと足軽からだが、そこはその土地の百姓がなるので、身分が違うと思うが、、、」

「父上、あの秀吉様も百姓の出自、それに信長の姑さまは油売りで我らと同じ商人ですよ」

「確かに美濃のマムシはなぁ」

父は大きな声で笑った。


「何処の出なぞ、関係なくその人となりを信じてご奉公出来る方が私は良いと思ってます」

「信じるとな」

「自分の目で見たことを的確に理解して、人の諫言などに惑わされず、私を信じてくださる方を探してまする」

「ほぉー、して見つかったのか、その様なお方が?」

「師匠は岡崎の方と」

「あー」

「これから向かう所ですが、何か手立てが無いか」

「ならば、これを」

「それは?」

父が懐に入れてた紙を出して広げると

そこには茶という一文字が書いてあった。


「足利義輝様からの字じゃ」


それは、足利将軍様が、この店に茶を飲みに来たのは幼い頃から知っていたが、この様な紙に書いて下さったとは思いがけず、貴重なものを目にした。

「これをその殿に見せては?」


そう言うとその紙を清吉に握らせた父親の真剣な顔に子を想う親心を感じた。


「この様な貴重な物を私に」


「我が家は既に茶屋という屋号は京の町では広まりこの様な紙がなくても、仕事が順調ならば余計な代物、しかし将軍になろうと思う武士の中には今の将軍にあやかって、将軍様の物を欲しがると思うのだが」


確かに、天下取りを目指す気運が強い今日この頃、今川が敗れてから、武田、上杉、そして織田、西国に至る、そして九州迄も戦乱の世になりつつあった。

父は元武士だけになかなか読みの深い人だと思った


「岡崎の殿様は小国なれど、あの今川様がお育てになられた若様であるから、大きくなりたいと思っておろうなぁ、清延よ」


足利家は落ちぶれても将軍家である。


その父の言葉で清吉は、清延と名乗る事に今日から決めた。


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