表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

夜の始まり

「いっしょに抜け出さない?」

あなたのいじわるな少し幼さの残る笑顔のせいか、数合わせというかおそらく引き立て役として呼ばれた合コンがつまらなさすぎたせいか、思わずこくんと頷いてしまった。


「ずっと白藤さんのこと、気になってたんだよね」

そう言ってはにかむあなたの笑顔にドキッとしている間に今までに触れ合ったことのない感触の、大きな手が私の手に飛び込んできた。私たちはもうお店を出ていた。

街行く人の香水が混ざり合って雑踏にしがみつくように残っている初夏の夜のことだった。


「どこか行きたいところある?」

そっと振り向くあなたの表情は真剣味を帯びた眼差しだった。さっきとはまた違う一面に私はもっとあなたのことを知りたい衝動に駆られる。昨日までは全く意識したことの無い人だったのに。

あなたのことが知りたい。そう無意識に口に出してしまっていた。

するとあなたの耳は瞬く間に赤く染まっていって、私たちはその場に立ち止まった。


「じゃあ、俺の家くる?」

少しあどけない、でも覚悟を決めたような真剣な表情で私を見つめた。あなたの瞳に私が写っていた。

行きたい。そう言ってしまった。この短時間の間に私はあなたに溺れてしまっていた。引き返すにはもう遅かった。


「わかった。案内する。」

とだけあなたは言って私たちは進み出した。赤々と灯る街明かりのせいなのか、心なしかあなたの頬や首までも赤く染まっているように感じた。

広々とした背中、少し伸びかけの襟足、全体的に明るい茶髪に生え際から真っ黒な地毛がのぞいている。

あなたの本当の姿が見える予感がした。


「ついた。今から開けるね。」

家の中に入ると、手のひらが風に触れてひんやりしたと同時に唇に柔らかい感触が走った。

壁に押し付けられ、あなたは舌を私のそれに絡ませ躍らせる。

先程まで私の手のひらに残っていた雄らしさのある手は私の手首を掴んで離さなくなっていた。


「脱がしていい?」

あなたは私の舌を一旦休ませると耳元でそう囁いた。あなたの温かい吐息が次は私の心を躍らせる。

うん、脱がして。と可愛いらしくも艶っぽいような慣れない声で言ってみた。

もっとあなたに溺れたい。あなたと一緒に溺れたい。

薄手のカーディガンのボタンに指をかけ一つずつ丁寧に外していく。キャミソールを脱がし、私を抱き寄せた状態でブラのホックを外す。肩紐を下ろすと、ずっと眠っていた果実があらわになる。


「俺のも脱がして。」

Tシャツとインナーを脱いで上半身裸になったあなたはいたいけな瞳に私を写す。ベルトに手をやり、チャックを下ろすと、均整のとれた筋肉質の足が私の心をまた躍らせる。お互い下着一枚になった状態でまたキスをする。キスをするとスイッチが入ると聞いたことがあるけれど本当にその通りなんだなと実感した。私の肩に乗っているあなたの手がずっしりと重く、温かくって妙に落ち着いてしまう。


私たちの交わっていく音が冷房をつけるにはまだ早い夜に溶け込んでいく。そんな、夜の始まりだった。

こちらの作品は、https://monogatary.com/

でも藍坂朱李として投稿したものと同一作品です。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ