表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王城でスローライフ〜勇者パーティを追放されたので可愛い魔王たちとのんびり暮らします〜  作者: マグローK
第一章 勇者パーティ崩壊

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/59

第21話 装備も買えない元勇者たち

「なんかやけに暑い気がしないか?」


「確かにそうですね。この辺はもっと過ごしやすかったような」


 僕の言ったことに対して、マジュナだけでなく全員が頷いた。


 僕たちは今、ヒルギスの言う近くの村を目指していた。馬車も、テレポートのための魔力もない僕たちは、徒歩で移動しているのだが、やたらと暑さを感じていた。


 移動中、いや、休憩中も戦闘中もだ。今まではいつでも、どこでも、どんな服装でも、快適な気温で過ごしていたはずだ。


 それが急にどうしてこんなに暑くなってるんだ。


「もしかして……いえ、なんでもないです」


 ヒルギスが僕の顔を見て何かを言うのをひかえた。


 誰よりも察しがいいヒルギスはすでに気づいていたのだろう。


「わかってる。これもカイセイのおかげだったってことだろ? 全く。僕はどうしてカイセイの力を見抜けなかったんだ。こんなことになるなら、いっそ魔王城に行った時に、呼び戻そうとしておけばよかった」


「だが、まるでそんなことできる雰囲気じゃなかったがな」


 ガードンが珍しく否定的だ。


 まあ、あの時のカイセイはどう見ても僕たちに敵対していた。


 あんな人間をどう説得して連れ帰るんだって話だ。


「ああ。思い出しただけで悔しさが込み上げてくる。絶対にあの嵐の壁だけでも壊してやらないと気が済まない」


「そうですバドン様。バドン様はたとえ他人に認められなくても、勇者なんですから」


「そうだな。僕は勇者。他人の不可能を可能にする者」


 いつの間にか、王に認められて勇者になっていたが、そもそも僕の家系は代々勇者なのだ。


 資格がなくとも勇者であることに変わりはない。


「それにしても、村にはいつになったら着くんだ?」


「もう少しです。はい。もう少しの、はずです」


 暑さでやられてきているのか、不測の事態に動揺しているのか。ヒルギスのサポートもいつもより精度が落ちている。


 これもカイセイがいないせいだとは思いたくないな。


 このままでは他の一般パーティ以下になってしまう。


 さっさと装備を整えて、魔王城に向かわなければならないというのに。




 しばらく歩いて村にたどり着いた。


 だが、うん。王の伝令の方が早く着いていたらしく、僕たちを見るなり村人は家の中に入ってしまった。


「ここ。見覚えあるな」


「ああ。ここは俺たちが勇者パーティとして王都を旅立ってすぐ、魔獣による被害を受けていたところを助けた村のはずだ。感謝はされても、警戒されるようなことはしなかったはずだが」


 つまり、僕たちがしてきたことよりも、カイセイに対してしたこと、王の言い分の方が村人にとっては納得できるってことか。


 なんだそれ。あいつの方が、僕より信頼されてたってことか?


「気にしても仕方ない。今必要なものを揃えるだけだ。金さえあれば売ってくれるはずだろう」


「さすがですバドン様。切り替えは大事ですからね」


「そうだな。こんな時こそ、冷静冷静」


 あんまりじっともしていられない。


 僕たちは、村の武器屋に移動した。




「売れない」


「売れない!?」


 店に入るなり言われたことがこれだ。


 おいおい。そんなことってあるか?


 これが恩人に対する態度か?


「おかしいだろう。売れないなんてことはないはずだ。金だって用意してある。この村で買うには困らない額のはずだ」


「あんたらから金をもらったら、俺まで立場が悪くなるだろ。帰ってくれ。確かに感謝はしているが、それとこれとは別の話だ」


 くそ。金を積んでもたかだか武器一つ買えないなんて。


 どうしてだ。感謝してるなら恩を返すものだろ。


 そうやって教わらなかったのか? こいつは。


 僕たちのやっていることが正義だというのに。


「おい」


 僕がカウンターに手をついたタイミングで、店のドアが開けられた。


 入り口に立っているのは一人の少女。


 武器屋に来るような見た目じゃない。普通の女の子だった。


「何しに来たんだ? 今は危ない。帰るんだ」


「いや、私がほしいものを買いに来たの。誰がいようと関係ないでしょ」


「そりゃそうかもしれないが、こんなところにほしいものなんて」


「私武器がほしいの」


「は?」


 武器屋のおじさんも少女の言葉に面食らったようだ。


 僕も話が飲めない。


 将来冒険者志望ということか。


 大人も引きこもって出てこないというのに、なかなか度胸があるらしい。


「そんな話聞いたことないぞ。親御さんは許したのか」


「私のことは私が決めるわ。だから、ほら」


 少女は懐からお金を取り出し。乱暴にカウンターに置いた。


 この店で装備を買い揃えるには十分な額があるようだ。


「これで、勇者と戦士と魔法使いに聖女の使える武器を用意して」


「そんなに必要か?」


「私はこれから何になるか決まるんだから。どれになってもいいようにってこと」


「まあ、ならわかるが、勇者ってことは」


「わからないでしょ!」


 おじさんは僕たちのことをチラチラ見ている。


 確かに僕たちのメンバー構成と同じご注文だ。


 しかし、僕はこの少女のことは知らない。


 前に来た時に会ったのかもしれないが覚えていない。


「ありがとうございました」


「お、おう。こちらこそありがとうな」


「あなたたちのほしいものは私が買ったのでもうありませんよ」


「そうか」


 これ見よがしに少女は言うと店を出て行った。


「さあ、売り物がなくなったんだ。帰った帰った」


 少女の言葉は冗談ではなく、本当に品揃えの悪い店だったらしい。


 いくら元勇者でも、ないものは買えない。


「わかった。みんな。この村にもう用はない。出よう」


 それぞれ思うところはある様子だが、仕方ない。


 こうなったら、ダンジョンで取り漏らした装備を探すか?


 もしくは、かなり遠回りだが、自分で鍛治スキルを鍛えるか?


 どちらにせよ面倒だ。




「なんだあれ。なんだあの態度。おい、バドン。よかったのか? あんな寸劇に付き合わされて。ありゃ、あらかじめ話し合って決めてたぞ。どっか探せばまだ在庫があるはずだ」


 店を出るなり、ガードンが激昂して言った。


 悔しい気持ちはわかる。がしかし。


「よそう。今の僕たちに権力はないんだ。それに、これ以上悪評が立つのも困る。今以上に動きづらくなるだろうし、たとえカイセイの首を取っても元の地位に戻れないかもしれない」


「ぐっ。確かにな。悪い。頭に血が登ってた」


「いいんだ。僕だって、どうしたらいいかなんてわかってないんだからさ」


 何も状況は改善していない。


 未だ装備はボロボロの状態で、次に撃つ手も思いつかない。


 僕にはもっと人望があると思っていたが、どうやら勇者という資格によって、人が群がっていただけだったようだ。


 僕が持っていたものは全て、ただのまやかしだったらしい。


「はあーあ。ん? 君はさっきの」


「あ、あの」


 膝に手をつきため息をついたところで、先ほどの少女が僕の服の裾を引っ張ってきた。


 明らかに警戒する仲間たちを大人しくさせ、僕は少女の目を見つめた。

いつも読んでくださりありがとうございます。


「面白い!」


と少しでも思っていただけたら、下の☆☆☆☆☆から作品への評価をしてくださると創作の励みになります。


また、ブックマークもしていただけるとモチベーションにつながります。


よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ