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87 藤巻一族との邂逅?

 藤巻家の頭首であるお婆さんとの挨拶は終わり、そこから長老と呼べそうな人達とも一通りの挨拶は終わりました。


 まあ、今時では無いですが旧家あるあるで頭首の権限は強いらしいです。藤巻君の場合は、医学部の学費まで負担して貰っているので頭は上がらないでしょう。


 う~ん、まあ将来結婚したとして、何か気になる様なら返しちゃえば良いし。それこそ投資で稼いだお金を使わなくても、専門医になってからの収入で十分余裕はあるでしょう。


 そんな事を考えていると、先程話をしていた里美ちゃんがもう少し年上の女性達と連れ立ってやって来ました。


「邦君の彼女さんですよね? 初めまして、林明菜って言います。邦君のお父さんの姉の子です。簡単に言うと従姉です」


「あ、私は藤巻早苗です。邦君の再従姉です。ちなみに既婚です」


「藤巻陽子です。同じく従姉です」


 挨拶を受け、私も慌てて挨拶を返します。どうやら、先程まで藤巻君を質問攻めにしていたようで、あとは男性陣に任せて私の方へと流れて来たみたいです。


「ごめんね、邦君に彼女が出来るとは思ってなかったから。容姿の批評は置いとくとして、一番は愛想が無いよね? 私達は小さい頃から一緒だし、まあ悪い子じゃ無いって知ってるけど初対面だとちょっとじゃなかった?」


「あ~~、まあ、そういう所はありますね。でも、周りに流されない所に助けられた事もあるので」


 何と回答して良いか判らないながらも、藤巻君を弁護します。ただ、私の発言に何かを感じたのか、3人揃って興味津々で尋ねて来ます。


「んん? 何かあった?」


「まあ、邦君はあんまり周りを気にしない点は強いよね」


「空気読まない所は凄いね」


 とても褒めてはいないと思いますが、その後も色々と聞き出そうとする早苗さん達です。ただ、まあ当たり前にプライベートな事ですし、其処まで親しい訳では無いので笑顔を交えて話をはぐらかしました。


「まあ、二人の事だから仕方ないか。そういえば日和さんも4月からお医者さんに成るんですよね? 邦君と同じ病院?」


「あ、いえ。藤巻君は大学病院での研修で、私は別の病院です。姉がちょうど研修を終えて他の病院に勤めるので、その空きに入る感じです」


「え? お姉さんもお医者さんなの! うわぁ、凄いね!」


 早苗さん達が目を丸くして私を見ます。ただ、そこは噓を言っても仕方が無いので肯定しておきます。


「鈴木さんは、もしかしてお医者さんの子なんです?」


「お医者さんの家系?」


「お医者さんの家系かあ、いいなあ」


 3人揃って何か勘違いしてしまったみたいで、私は慌てて否定しました。ただ、そうなると医学部へ子供二人を通わせる事が出来たという事がクローズアップされちゃいます。


「いえ、違います! うちの親族には医者はいません。私たち姉妹が初です!」


 ただ、やはり姉妹揃って医者というインパクトは大きく、3人から交互に色々と質問をされます。でも、質問の内容的に奨学金の事とか、家族構成とか、何となくですが探りを入れられてます? 自発的なのか、誰かに調べて来いと言われているのか、ただ、情報収集を担っているのは間違いが無さそう。


「ごめんね~、まあ気が付くよね。まあ、うちにも色々と心配する人達がいるんです。まあ、素で興味津々な所はあるんだけど」


「うちらも、やっぱり一族で良くも悪くも色々あるのよ。昔は兎も角、最近はそこそこ牧場も上手く回るようになって、お金目当てで近づいてくる人とかも現れたり」


「いくら高級牛を生産しているからって、そんなに余裕がある訳じゃないんだけどね」


 私の表情に現れていたのか、3人とも思いっきり苦笑いを浮かべている。


「あ、説明役が来た! おばちゃん、あと宜しくお願いします。思いっきり不信感買っちゃったかも」


 早苗さんの言葉に、やってきた藤巻君のお母さんがこちらも苦笑を浮かべていました。


「はいはい、後は引き継ぐから。ほら、行った行った」


 藤巻君のお母さんが追い払う様に手を動かすと、待ってましたとばかりに早苗さん達が席を立ちました。まあ、ちょっと露骨でしたし、私に気が付かれても良いと思ってたのかなって感じでしたね。


 それと、藤巻君のお母さんは、終始食事の用意や配膳などで天手古舞だった。だから説明に来たというよりは、漸く食事にありつけたといった感じで私の横に座ると目の前の食事を摘み始めました。


「ごめんなさいね。別に深い理由も無いし、裏と思えるような話でも無いのよ?」


 そう切り出す藤巻君のお母さん。ただ、その手は休まずに料理を摘まんでいます。


「邦彦も一族だからね。やっぱり色々と心配する人もいるのよ。どちらかと言えば閉鎖的な一族とも言えるから、どうしても外から来る人を警戒しちゃうところもあるのよ」


「あ、それで色々と聞かれていたんですね」


 笑いを含んだような口調で話す藤巻君のお母さんですが、若干何か含んでいるような?


「そうね、邦彦がお医者さんになれば、そこから新しい藤巻一族が出来るかもしれないって考える人もいるの。何かと色々と深読みする人もいるし、私達の家業でもある畜産業も決して楽観出来ないわ。それこそ、2010年には口蹄病で牛を処分しないとって事だって起きたもの。あの時の恐怖は今も忘れないわ」


「廃業の危機だったものね」


 お向かいに座り食事を始めていた女性が、私達の会話に入って来た。


「初めまして、私は邦彦君の叔母のって言えば良いかしら? 邦彦君のお父さんの従兄弟の嫁ね。本当は親戚のおばさんが正解だけど高谷の叔母さんって言われているわ」


 そう話をする40代かな? って感じの女性。そして、挨拶をすれば何と先程色々と聞いて来た早苗さんのお母さんでした。


「高谷さんは一族では珍しく牧場で働いてないの。だから、多少は邦彦の参考になるのかしら?」


 藤巻君のお母さんはそう言って笑うけど、そうか、一族全員が牧場という訳じゃ無いのかと変な所で納得する。


「あら、何も一族全員が畜産業って訳じゃ無いのよ? うちの旦那は学校の先生、娘の旦那も市役所で勤めてるし、ここ最近は子供を外で働かせるのが主流? 外で働いていても人手が足りなくなったら戻せばいいし、何かあった時の保険みたいなもの? もっとも、口蹄病の流行で意識が変わったわね。一族共倒れの可能性だってあったもの」


「そうねぇ、それまではやっぱり牧場で働かないとちょっと肩身が狭かったわね。そういう意味では助かったのかしら」


 そこから聞く話は、つい数年前に実際に起きた出来事。


 勿論、私もニュースなどで口蹄病の出来事は知っていました。それでも、それはあくまでもテレビの中の出来事で実際に畜産業を営んでいる人達の恐怖は聞いていても半分も判っていないと思う。


「あれから子供を無理に牧場で働かせるのに慎重になったわね。でも、その影響が出るのは今中学生くらいの子以降よね。当時の早苗なんかも今更勉強なんて無理って言ってたもの」


 そう言って笑う早苗さんのお母さん。ただ、僅か数年前の出来事だし致し方ないとは思う。


「どの家も男の子は牧場勤め、女の子は嫁に行くが主流だったわ。うちは一人っ子だったから、色々と気を使ったもの。外で遊ぶより家の中で本を読んでいる方が好きな子で、誰に似たのか勉強が出来たから医学部に進めたのよね」


「お医者さんという事で特別に許可されたみたいな感じだったものねぇ」


 藤巻君が医学部に進む事を決めたのは、当たり前だけど口蹄病が騒がれる前の事。特に一人っ子だから周りから色々な事を言われたのかもしれない。ただ、そもそも個人の希望や夢を許す許さないという考え方がなんだかなあって気持ちにさせられます。


「子供の未来を狭めるのはどうなんでしょう? 今の時代に合ってない気はしますが」


 私がそう告げると、いつの間にか周りで私達の会話に聞き耳を立てていた女性達が一斉に笑い出した。ただ、それは私を馬鹿にするような笑い方ではなく、どこか肯定するような響きを感じる。


「流石はお医者さんよね。ズバッと言うわねぇ」


「うちの子達は揃って頭が悪いから。頭を使うより体を動かしている方が好きな子ばかりで。それに、牧場に入るのを嫌がってないから良いのだけど」


「頭が良いって言えば、未来ちゃんは戻ってくるのかしら? 夢子さんは必死に戻って来るように言ってるみたいだけど、北海道で就職しちゃったんでしょ?」


 やはり最近は子供達の意思を尊重する雰囲気はあるみたいです。ただ、父親など男性達は未だに古い考え方を中々変えれないみたいですが。


 そして、女性陣の話を聞いていると、どうやら夢子さんというのは本家跡取りのお嫁さんらしい。そして、未来さんというのが跡取り娘? ただ、何やら色々と本家は本家で問題を抱えていそうです。


「邦彦君は独立勢力みたいな物よね。あの子は昔から頭が良かったから。本当なら未来ちゃんのお婿さん候補筆頭だったのにねぇ」


「あら、未来ちゃんと邦彦君だと性格的に合わないんじゃないかしら? 未来ちゃんはちょっと派手好きでしょ?」


 ん? 何やら聞き捨てのならない話が出て来ました。その為、ついその話を口にした女性へと視線を向けてしまいます。そんな私の視線に気が付かず、会話はそのまま進んで行きます。


「あら、跡取りは総一君がいるわよ? やっぱり年も上で長男だし、それに未来ちゃんは自由過ぎるから」


「でも、北海道で最新の畜産を勉強してるんでしょ? 頭も良いし、それなら跡取り候補でも良いんじゃない?」


「これから畜産業もどうなっていくか判らないでしょ? 総一君だとちょっと不安じゃない?」


 聞こえてくる話から、何となくお家騒動の気配が感じられます。私は視線を戻し、変に関わり合いにならない様に気を付けましょう。そして視線を戻せば藤巻君のお母さんと早苗さんのお母さんは、何やらニヤニヤと笑っています。


「大丈夫、邦彦と未来ちゃんは何にも無いから。邦彦はちょっと苦手にしていたくらい?」


 まったく気にならないかと言えば勿論そんな事はないのですが、聞こえて来る未来さんのイメージはどうみても陽キャ? 確かに藤巻君としては苦手そう。


「貴方達もいい加減な事を言うのは止めなさい。鈴木さんが気にしちゃうでしょ? それに、このまま邦彦君と一緒になれば夫婦でお医者さんよ? 貴方達だってお世話になるかもしれないでしょ。あと、無暗に馬鹿な話しないの!」


 早苗さんのお母さんがそう言うと、みんなバツの悪そうな表情で静かになる。


 まあ、女性が集まればこんな物かな? でも、恐らくこの人達は賑やかしで、色々と気にしなければ駄目なのは上座の人達なんだろうな。藤巻君のお婆さんの周囲に座る人達は、男性女性含め静かに食事をしている。特に男性達は慌てて食事を終わらそうといった様子は無いので、一族内でも役割というか、地位というか、やっぱり色々と面倒そう。


「邦彦が無事にお医者さんに成ったから、一族の外に出たって思われるの。良し悪しもあるけど、でもそのお陰で大半の面倒事には関わらないで良くなったから安心してね。女性が結婚する際に感じる不安の大部分は、相手側の家族付き合いだと思うから」


「ありがとうございます。そうですね、うちは親戚付き合いが希薄なので、こんなに大勢が集まる事に吃驚しました。普段の藤巻君からは想像できませんでした」


 大勢の中で育ったのになのか、大勢の中で育ったからなのか、もっとも自分自身も人付き合いが苦手な方なので私が何か言う事ではない。それに、もし結婚して暮らすとしたら、恐らくだけど名古屋市内になるだろう。


「あの子は昔から人付き合いが苦手だから。興味のない人にはトコトン愛想も無いし」


「そうねぇ、叔母さんとかあんまり会話した記憶が無いわ」


 その後、自然と私の家の話になり、姉も同様に医者に成っている事。奨学金などは借りて無く、姉妹揃って母方のお世話になったと説明した。


「ごめんなさいね。何か変な事を聞いちゃって」


「いえ、奨学金と言っても借金ですし、気にされる人は気にされるって知ってましたから。結婚してから返済がってなると片方に負担が偏りますよね」


 実際の所、藤巻君のお母さんにはそれと無く説明しておくつもりでした。まあ、それなり資産はあって、藤巻一族の支援などは必要ないと言っておかないとです。


 ある程度はお互いに理解が得られたかなっていう所で、漸く藤巻君が戻ってきました。ただ、こちらは此方で思いっきり疲れきっていました。


「お疲れ、目的は達した?」


「ああ、変な勘違いされない様にしてきた」


 誰かが言っていた様に医者に成ったからと言って、新たな派閥? を作るつもりなんて無いのにね。

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藤巻くんが畜産の家の子ってことを、しっかりと現実を見たやりとりで丁寧に結婚を書いてるの好き
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