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59 幸せな家族、憧れの家庭

誤字脱字、文章の間違い、違和感などご指摘ありがとうございます。

非常に助かっております。

改めて、御礼申し上げます。

 加納さんは早々に休学して、授業には出て来なくなりました。休学してどうするのかとか気になる事は有ります。ただ、これを機にご両親は甘えた所を正しますと言っていたそうなので成長してくれることを祈りましょう。


 私を取り巻く状況ですが、加納さんの事が一段落したからといって直ぐに好転する訳では無いんですよね。加納さんが休学した事で、その言動に問題があった事は理解されているみたいです。


「鈴木さんが加納を訴えた事は知られているから、変な事はしてこないっしょ。そういう意味では良かったんじゃない?」


 何時ものように坂崎君が自習室へきて、私達のテーブルで色々と教えてくれます。ただ、これだけ私達と接触してて良く情報を集められるものだと感心します。


「もう変な噂が流れてなければ其れで良い。あれこれ悩んでも、悩むだけ疲れて損だって学習した」


 今回の事も蓋を開けてみれば良く解らない敵対心というか、あまりに小さな原因に肩透かしをされました。ストーカー事件なんか全然関係なかった。有る事無い事話をしたらしいお姉ちゃんの同級生だった二人も、内容証明付き郵便を出した途端慌てて謝罪連絡が来たそうです。


 まあ、慌てて謝罪して来たのは、加納さんが休学した事を深読みしたからっていうのもあると思うけどね。


 加納さんの事が一応の決着を見せ、中村さんの許嫁さんも転勤し、漸く穏やかな? 学園生活が戻ってきました。

 実際は大学での実習が増えてきて日々追われる様に時間が過ぎて行きますが。そんな中、忘れがちですがマンションの完成が近づいて来ました。


「入居開始は2月からになったけど、募集は12月から始まるんでしょ?」


「ええ、そう言ってたわ。お父さんと内見して来たけど、中々の雰囲気があったわよ?」


 外回りはまだ手を加えているそうですが、マンションの各部屋は既に完成しているそうです。本当ならもう少し早く完成予定だったのですが、なんやかんや完成が遅れちゃったんですよね。それでも、4月からの新年度をターゲットにしていたのでギリギリ間に合いました。


 そのマンションに関しては、何かと忙しくしていた私に替わってお母さんが動いてくれています。そんなお母さんは、お父さんが退職後二人でゴルフだ旅行だと遊び歩いているんですよね。まあ、仲良くて良いのですが、そんな暇人二人だから平日でも関係なく動いてくれるので助かってはいます。


「それぞれの部屋も簡単にだが見て来たぞ。流石に新築だけあって綺麗だなあ。引っ越しが楽しみだ」


 我が家も完成を待って引っ越しする準備をしています。引っ越し業者の手配も終わっています。新しい家具や家電製品も注文済みですが、今住んで居る所を売る訳では無いので気持ち的には楽ですね。荷物も慌てずに順次移動させるつもりです。


 もっとも、今度のマンションは幾らオーナーとはいえ、賃貸マンションなのでビル管理を委託している会社に家賃を払わないと駄目なんです。そこから手数料など諸費用が諸々が引かれ、私に家賃が振り込まれる事になります。


「警備員さんもいるし、今よりセキュリティーは厳しくなるから多少は安心だよね」


「そうね。1階をホテルみたいにしたから部屋数が減るし、管理費も高くなるからお勧めされなかったのに強行したものね」


 オートロックのマンションでも、セキュリティーという面では色々と問題を含んでいますからね。特にオートロックなのに共連れと呼ばれる行動の末、犯罪に繋がるケースが増えて行くのを知っています。


 私としては、マンションのロビーに警備員が居る事で犯罪の抑止になってくれると信じています。


「高級賃貸マンションをうたってるから、でも有用性が理解されるのにはもう少し時間がいるかなあ」


 嬉しくないけど世の治安は悪くなっていくんですよね。その時に他との差別化が図れるといいなあ。そんな事を思いながら、両親が撮って来た部屋の写真をみんなで見て行きます。 


「何も家具が無いからだろうけど1LDKでも広く見えるね。ほら、中村さんの部屋もこんな感じだよ? これで漸く一人暮らしできるね」


「うん。こんなに高いマンションで良いのかなって悩んだけど、割引してくれてありがとう。あと、もう少しお世話になります」


 中村さんは苦笑を浮かべるけど、他人の家に居候生活は精神的に厳しかったと思う。今回の騒動が始まるまでは左程親しい関係じゃなかったし、ましてや私の両親も一緒です。何かと気を遣う事も多いでしょう。我が家の引っ越しに際し、中村さんはもっと家賃が安い所を検討していたんです。でも私がセキュリティーの部分で口を挟みました。

 

「中村さんのお父さんが押しかけて来た時とか考えると、セキュリティーは高い方が良いよ? あと、女性の一人暮らしも何かと危険が多いし、我が家と同じマンションだと何かあった時フォローできる」


「でも、一人暮らしの学生が住む平均的な家賃の倍以上するから」


「そこはオーナー割引する! もし此処で妥協して中村さんに何かあったら寝覚め悪いし」


 そんな遣り取りで説得しました。


 本音を言えば、無理に私のマンションを勧めている訳だし家賃無しでもいいかと思ったんですが、そこは中村さんがウンと言いませんでした。そこで、近辺の1LDKの家賃を調べて平均金額を貰う事にしました。もっとも、私が貸したお金から払われるので、何となく複雑ですね。


「そして気が付けば12月! 間もなくクリスマスですね!」


 至る所でクリスマスソングが流れ、クリスマスの飾りつけで溢れています。我が家は別にクリスチャンではありませんが、それでも気持ちが浮き立ちます。


「そうねえ。で、クリスマスケーキはどうするの?」


 お母さんが机に肘を突いて私を見ますが、何を言いたいのでしょう?


「え? 普通に何時もの所で頼めば良いよね? っていうか、まだ頼んでないの?」


 家の傍にある小さなケーキ屋さんですが、誕生日もクリスマスもケーキは何時もそこで頼んでます。その為、今年もてっきり頼んであると思ったのですが、確か注文の締め切りは11月だったはず?


 焦る私を見ながら、お母さんは大きく溜息を吐きます。


「勿論頼んであるわ。あと、ローストチキン用の鳥も頼んであるし、日和の好きなチューリップもローストビーフも作る予定よ」


「なんだ、お母さんビックリさせないでよ」


 ローストチキンは私が高校生になってから、私が! 作るようになりました。

 うん、まあ電子レンジで割と簡単に作れるんですけどね。でも、お店で既に出来上がったローストチキンって小さいんです。お肉屋さんで予約すると、大きめの名古屋コーチンを用意してくれます。まあ、お値段はグラム換算なのでお高めになりますけどね。


「クローブと、ハーブソルトも忘れないで買わないとだね。このマンションで過ごす最後のクリスマスだし、どうせなら豪華にしたいね」


 所詮は家族パーティーですが、それでも色々と考えると楽しくなってきます。研修医になったお姉ちゃんは、忙しくて2年続けて不参加ですが、今年はどうなのかな?


「お母さん、お姉ちゃんは何か言ってた?」


「まだ休みが取れるか判らないから、不参加だと思っておいてって言ってたわ。まあ忙しそうだから仕方がないわね。日和も学生の内よ? のんびりできるのは」


「人って言うか、病院によるみたいなんだけどなあ。でも、病院の当たりはずれは結構あるって言ってた」


 お姉ちゃんによると、研修医といっても実際の忙しさは病院によるそうです。ただ、先々の事を考えて貪欲に経験を得たいお姉ちゃんは、何かと先輩医師の診察などに引っ付いて回っている為に異様に忙しいと言っていました。

 まあ、美穂さんも含め、いずれはという所で、出来るだけ色んな症例を経験しておきたい気持ちは分かる。美穂さんの所の病院に入った時に、そんな事も知らないのかと言われるのも嫌だしね。


「ただいま帰りました~」


 お母さんとそんな話をしていたら、出かけていた中村さんが帰ってきました。


 なんと中村さんはお兄さんから連絡が来て、今日はお兄さんと外で会って来たんです。


「おかえりなさい。お兄さんはどうだった?」


 聞かないのも変なので、一応尋ねますが、中村さんの表情を見る限り、そんな悪い話し合いにはならなかったかな?


「しつこいくらいに家から連絡が入ってたみたいです。ただ、ずっと無視してたら母が勤め先まで訪ねて来たって」


 苦笑を浮かべる中村さんだけど、今の処受け答えにも余裕が感じられる。


「父と兄は犬猿の仲なので、母が兄の所へと行ったみたいです。でも、兄の話では父から言われて来たみたいですね。母が自分から動くはずが無いですから」


 その後、中村さんの話を聞くと、驚いたことにお兄さんも実家に絶縁状を送っていたみたいです。その為、中村さんからの連絡もずっと無視していたみたいですが、今回図らずもお母さんから中村さんが家を出て行ったことを聞いて連絡してきてくれたそうです。


「そっかあ、まあ、今まで中村さんからの電話も実家からの何某かの連絡って思ったんだろうね」


 仕方が無い事と言えばそうなのですが、親子だけでなく兄妹間でも信頼関係が無いのかなあと悲しくなりました。


「うん、ただ私が家を出た事で、まだ在学中だからお金の事での相談だと思ったみたい。流石に私大医学部で通い続けられると思わなかったみたいだし、学費を貸して欲しいと言われても自分の今の稼ぎでは無理だと断るつもりだったって」


 苦笑を浮かべる中村さん。実際の所、今の段階で家を出たら流石に退学しか選びようが無かったことは自覚している。そして、まだ研修医でしかない兄に頼っても金銭的な解決は中々に厳しかっただろう。


「奨学金を今から借りるにしても、両親が居て、両親の収入が一定以上だと審査とかも厳しそうだし借りれたかは微妙だからね。それでも一応は申請してみたと思うけど」


「休学するにしても、在籍費用だっけ? お金が掛かるからね。あれには吃驚した」


 休学について一応調べたら、学籍を維持するのに年60万円以上掛かる。規定で決まっているんだけど、え? マジに? って吃驚しちゃった。まあ、教務課に相談すれば何か救済策とか教えて貰えた可能性がゼロではないけどね。


「兄も援助できる事はするって言ってくれたんです。ただ、もともと余り仲は良くなかったですし、家の中で一緒に暮らしてる他人みたいな関係だったから、今後も交流するかは微妙です」


 中村さんの表情には、特に無理している様子は無い。色々な家族の形があることは知っているけど、ちょっと寂しく感じますね。


 ちなみに中村さんのお母さんがお兄さんを訪問した理由ですが、中村さんが家を出た事により本家の後継ぎ問題が出て来たそうです。親戚などから今後本家をどうするのか問い詰められているそうで、お兄さんに家に戻るように伝えに行ったと言うのが本来の目的だったらしい。


「帰る訳が無いのになあ。帰っても良い事なんて何にもないし、帰らなくて済むなら帰りたくないよねって其処は兄と意気投合できた。家からの圧力とかに関してはお互いに協力していこうって話で終わった。まあ、会話の機会が出来たというのは良かったのかな?」


 今まで中村さんから聞いていた話では、お兄さんはジッと家を出るチャンスを窺っていたんだと思う。その中で妹を気遣う精神的な余裕は無かったのだろうし、妹に暴力を振るうと言う最悪なケースにならなかった事は不幸中の幸いなのだろうか?


「兄もだけど、私も幸せな家庭って築けるか不安だった。でも、鈴木さんの家でお世話になって、普通の家族ってこうなのかなって憧れた。お陰で何か家族を持つことに少し前向きになれたかな」


「う~ん、うちって普通の家族・・・・・・かなあ?」


「そうねえ、普通では無いかしら? でも、家族仲は悪くは無いわよ?」


 横で聞いていたお母さんは笑いながらそう答える。


「はい。鈴木家を見て私も仲の良い家庭を築きたいなって思えました」


 満面の笑顔を浮かべる中村さんを見て、まあ、問題無いから良いかと私は考えるのを止めるのでした。


来週13日(月)~16日(木)まで18:00に連続投稿致します。

うん、がんばりました!

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― 新着の感想 ―
更新嬉しいなあ!嬉しいなあ!ありがとうございますー!
まあ資産家としてはそれなりに普通なのかな?父親がヒモポジションだけど。
更新ありがとうございます。 途中で途切れてませんか? 確認をお願いします。
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