表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

43/68

43 ネット全盛の時代って便利だったよね?

 我が家の置かれている状況の確認を兼ねて、改めてお姉ちゃんと二人で話し合いました。

 逆行した事実を二人とも内緒にしていたし、実際のところ逆行という現象自体が普通は有り得ない事です。その為、逆行前の知識の擦り合わせも必要でした。


「日和は結構色々とやってるんだね。私は自分の事で精一杯だった」


 逆行してからの出来事を説明していると、お姉ちゃんがちょっと落ち込んでいます。


「うん。前の人生で色々と妄想していたから。もし此処の株を買ってたら今頃大金持ちだったのになあとか考えなかった?」


「株とか全然興味なかったから考えなかった。恥ずかしい話だけどアメリカのテロとか、東北の震災とか、記憶にあまり無かった。大学卒業して、恋愛して、それこそ結婚を考えて、自分の周りの事しか見てなかったから。子供の頃に戻っているのに気が付いてからも自分の事で精一杯だった」


 そうかあ。確かに前のお姉ちゃんは毎日の様に遊びに行ってたし、働き始めてからもそれは変わらなかった。テレビのニュースとかも見てなかっただろうし、日々の生活を満喫していたのを覚えている。

 もっとも、それも小春ちゃんが生まれてから大きく変わったんだけどね。


「私はすぐにお母さんに打ち明けたから、そのお陰で色々と協力して貰えた。でも、逆行前のお姉ちゃんと今のお姉ちゃんの違いにすっごく戸惑ったけどね」


 私の言葉にお姉ちゃんは此処でも寂しそうに笑う。


「小春に対する贖罪かな。前の世界がどうなったのか、私があちらの世界にも居るのかは判らないけど娘にあれだけ言ってて自分がやらない訳にはいかないでしょ? それに、本当に子供の頃に戻ったのなら、やっぱり同じ失敗を繰り返したくないって思ったしね」


「うん、それは私も思った。だけどまさか医学部を目指す羽目になるとは思わなかった」


「日和は最後までブレてたわよね。突然獣医大学受けてみたり、よく棚田医大受かったわよね」


 お姉ちゃんの言葉にぐうの音も出ない。あれはやっぱり周りの影響だったと思う。私一人では絶対に集中力が切れて逃げていた。その点ではお姉ちゃんにも、高校時代の友人達にも感謝しかない。


「あと、今更だけどありがとう。日和のお陰でお金の心配しなくて済んだんだよね。私って昔から其処ら辺が笊だったから。今の人生でも親にお願いすれば何とかなるって思ってた」


「お姉ちゃんだったら国公立も行けてたからね。奨学金とか合わせれば何とかなってたと思うよ。お祖母ちゃんだっているし」


「どうかな? 塾の事もあったし、お金に余裕が無ければ実際は厳しかったと思う。だから日和には凄く感謝してる」


 両親二人の収入だけだったら厳しかったかな? でも、いざとなればお祖母ちゃんが助けてくれたとは思う。もっとも、これはお母さんの方のお祖母ちゃんであって、お父さんの方は一切頼りにならなかっただろう。


 その後も姉妹二人で話をしていくんだけど、やはり心配なのはこれからの生活だった。


「大学を卒業している私よりも、気を付けないと駄目なのは日和だよ。今どきの個人情報何て漏れ放題、我が家の預貯金の情報だって知られているって考えないと」


「個人情報に五月蠅くなったのって何時くらいからだっけ? 長者番付が無くなったのは助かったけど、やっぱり色々とバレているのかなあ?」


 実際の所、銀行関係者、証券会社、税務署、情報が漏れる可能性は無数にある。

 ただ、その事を悩んでいても解決される訳でもなく私達は思い思いに今後の対策を書き出していった。


「う~ん、やっぱり結構かかるわね」


「線引きが必要だけど何と言ってもボディーガードに掛かる費用が飛びぬけてる」


 我が家は分譲マンションとはいえ勝手に出来る事は限られます。その為、とりあえず玄関の鍵をよりセキュリティー性能の高い物に変更する事にしますが、それ以外で何かをするのは制約が厳しそうだった。

 その為、今何をしているのかと言うと警備会社がお勧めするホームセキュリティーのお見積りを眺めています。


「不在時の侵入監視と緊急ボタンは良さそうよ?」


 お母さんも含めた3人で提案書とお見積書、カタログを眺めている。


「うん、毎月7千円で収まるならそこは良いと思う。でも、こっちのボディーガード兼運転手さんが時給制だとは思わなかったなあ」


 見積金額を見ても、朝夕の往復で2時間として30日計算で36万円! 24時間警備何て怖くて頼めないです。


「24時間にするとしても常駐する場所なんてないよ。家の中に居て貰っても何をしてもらうの? 邪魔なだけだし、相手も気まずいと思う」


「そうねえ。まずは貴方たちの送り迎えだけで良いんじゃないかしら?」


 常に警備してもらうというのはマンションには不向きです。その為、まずは警備会社にお願いしてマンション用のホームセキュリティーに入る事にしました。

 色々と調べてみたのですが、GPSのタグとかは残念ながらまだ一般には出回っていないみたいでした。誘拐などが怖いのですが、普段一人でいるときは防犯ブザーで対応するしか無さそうです。


「送り迎えされるとすっごく目立ちそう」


「そこは我慢するしかないわね。誘拐されるよりはましでしょ?」


「そうね。すぐ慣れるわよ」


 家族間で一通りの打ち合わせが終わり、お姉ちゃんは自分のマンションへと帰っていきました。あちらはあちらで色々と対策をしないと駄目なので大変そう。特に美穂さんをどう説得するのかが重要? まあ、美穂さんなら全て打ち明けても変わらない様な気はしますけど断言はできません。



 で、とりあえず始まった送り迎えですが、気が付けば一月が過ぎました。警備会社からは今の処4名の人が交代で私の運転手を務めてくれています。一応4名の人は固定です。毎回人が変わったりしたら悪い人と入れ替わったりしでも気が付きませんから。

 あと送り迎え用の車も急いで購入したんですが、納車までに時間が掛かるので今はレンタカーを月単位で借りて対応しています。


「う~~~、情報量が少ない!」


 そんな私が今何をしているのかと言うと、自己防衛のための情報集めです。ただ、その情報が中々集まらないんです。警備会社の人と打ち合わせをして、出来る範囲での対応は勿論始めました。

 それ以外に何かないかと調べているのですが、前世の記憶や経験が邪魔をする? まあ、時代がまだ追いついていないだけなんですが。


 2014年はネット文化が根付き始めた時代。MMOなどのゲームが全盛? うん、良く解らないけど若い人たちがネットで情報を集め始めた頃。それでも、欲しい情報が上手に集められるかと言えば、まだまだ個人の技量が左右して難しい。

 特にネットの伝送速度やら、パケット通信やら、気を付けないと通信料が有り得ないくらい高くなるのがこの時代。まだ定額制だの1ギガうんたらなどが根付く前の時代です。


 そんな時代の中で私はせっせと自衛手段などをキーに調べるているんですが……ぜんぜん有効そうな情報が集まりません。


「そうねえ、個人が自衛すると言っても限界があるわよね。日和が格闘技を今から学んでも、自衛出来るとはとても思えないでしょ? そもそも我が家の遺伝子には運動神経は存在しないもの」


「運動神経何て言う遺伝子はありません!」


 私がネットで情報を集めている姿を、先程からお母さんは頬杖をついて眺めています。ただ、それも眺めているだけなら兎も角、私の独り言にいちいち反応してくれます。

 ちなみに、お母さんは既にお仕事を辞めちゃいました。今回の事でメリットよりデメリットの方が大きくなったので仕方が無いですよね。その為か暇を持て余しているので家に私がいると絡んでくるんです。


「はあ、これといった趣味もないし、外に出かけるような趣味なら意味が無いでしょ? お母さんもパソコン覚えるわ。先日教えてもらった動画とか見るのは楽しいし」


 うん、これからは動画全盛時代に入っていくと思うので暇つぶしには良いと思う。ただ、運動量をどうキープするかが問題だ。


「ジムとか行く? 運動不足になって太るよ?」


「大丈夫、誰も居ないとお昼とか面倒で食べてないし」


「それもどうかと思う。でも、パソコンで小説とか読めるし、ネットもどんどん発達して行くから良いとは思うよ」


 お母さんはそう言うけど、実際は家事をしてくれているので料理やら掃除やらで家にいても忙しくしているのは知っている。ただ、メリハリとかやる気とか、毎日の張り合いが無くなったのは確かだと思う。


「駄目ねぇ。どうしても主婦になると友人付き合いも疎かになるし、引っ越ししたからご近所との関りも無くなっちゃって」


「ママ友とかも一時的なお付き合いだけだよね。マウント合戦も凄かったんでしょ?」


「ええ、あれも日和が小学校を卒業したら無くなったわね。電話とかで時々連絡くれた人も金鯱へ進学したって言ってから連絡来なくなったわね」


 果たして子供が高校へ進学した事で交友関係が変わったのか、それとも私達が偏差値の高い高校へ進学した事で気持ちが変わったのか。其処ら辺は難しい所かなあ? うん、人付き合いって難しいね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
身の安全について一歩前進してホッとしつつも、妙に大人しいパパさんが不気味で気になる…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ