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41 お互いの擦り合わせ

 私が逆行転生している事をお姉ちゃんにカミングアウトすると、驚いたことにお姉ちゃんも逆行転生しているって言い出しました。

 思いもしない発言に、お母さんと二人驚いて無言になります。すると、お姉ちゃんは私達を見ながら真剣な表情で話し始めました。


「日和と何処まで同じなのかは判らないけど、私も何でか突然子供の頃の自分に戻ってた。戻る前に覚えてる最後の記憶は、お母さんが慌ててお父さんが息をしていないって呼びに来た事かな。

 私は小春とお父さんのお弁当を作っている所で、慌ててお父さんを見に行った。そうしたらお父さんはベットの上で寝てたけど息をしてなかった。体も冷たくなってて、そっから慌てて救急車を呼んで、家の前で早く来ないかと救急車を待って、救急車のサイレンが聞こえて来た所で気が付いたら子供になってた」


 時系列的にいって私と同じようなタイミングでお姉ちゃんは逆行しているっぽい。ただ話を聞く限りでは、お姉ちゃんの方は私と違って切欠らしいものが見当たらない? 私は思いっきり事故が原因だと思うけど、私が逆行したからってお姉ちゃんもするとは思えない。それでも、よく考えてみたら小説とかみたいに事故が切欠とは限らないんだよね。


「日和はどうだったの?」


 お姉ちゃんと自分の違いを考えていると、お姉ちゃんから質問されました。


「時間的には同じくらいなのかな? 私はそのお母さんからの電話で慌てて家を飛び出して、駅に向かう途中で車に撥ねられた。てっきりそれが切欠で逆行したのかなって思ってたけど、お姉ちゃんもとなると別の理由がある?」


「どうなのかしら? ただ、過去に戻った事は間違いないと思って、そこからは同じ後悔をしないようにと頑張って勉強したかな。小春にあれだけ将来後悔しないように手に職をつけろって言ってたでしょ? 選択肢を広げるために勉強しなさいってあれだけ言い続けてた私が頑張らない訳にはいかないってね」


 そう言って小さく笑うお姉ちゃんだけど、その声には明らかに寂しさが感じられた。


「それで、何が起きてるの? 日和が原因なの? そもそも、車に轢かれたって言ったけど」


 私は逆行してからの経緯をお母さんに補足してもらいながら説明して行く。ただ、説明を聞くお姉ちゃんの表情が次第に何とも言えない困惑した表情に変わっていった。


「大体は以上かな? 今は前と違ってお金もあるし、このまま静かに暮らしていければって思ってた。そうしたら先日アメリカ領事館に呼ばれたの。そこで身の回りに気を付ける様にって感じの事を言われた」


「お母さんも一緒に聞いていたけど、あの感じは忠告に思えたわ。それ以外は雑談にも思えたから、本来の目的は忠告だった様な気がしたわ」


 実際にそうかもしれない。未来は既に大きく変わってしまった。その中で私の知っている未来の記憶を聞いてもどれ程の意味が有るだろう? ましてや、アメリカの人達に直接関係する事は全然覚えてない。


「忠告かあ。まず問題はそこなのね。う~ん、そう考えれば一番に注意しないと駄目なのは強盗とか誘拐? そう考えると一軒家ではなくオートロック付のマンションに引っ越して於いて正解だったね」


「え? そうなの? 何で?」


 なぜマンションに引っ越して正解なのか首を傾げていると、お姉ちゃんが溜息を吐きます。


「一軒家だと強盗に入られやすいでしょ? オートロック付マンションの上層階だと入るのも大変だし、エレベータとかで上層階に向かうにも第三者に見られる可能性だってあるし、そもそもエレベータに防犯カメラが付いてる。そういう意味ではマンションの方が襲われる可能性は減ると思うよ? ニュースで流れてた強盗とかも被害にあうのは一軒家ばっかりでしょ?」


「あ、そうかも。お金目的とかで狙われてたのは一軒家ばっかりだった」


 成程、マンションの方が危ないような気がしたんですが、よく考えたら確かに一軒家のほうが危なそう。強盗何かはそのまま押し入れそうです。


「コンシュルジュのいるマンションとかに引っ越すのも一つの手ではあるけど、結局は信じられない人だと意味無いし。それより一番考えないといけないのはお父さんかなあ? 特にお金の事は慎重に話さないと。お母さんはどう考えてるの?」


 うん、お姉ちゃんはまだ良いのですよね。此処で問題になって来るのはお父さんです。何と言っても自己顕示欲が強いですから、周りに思いっきり自慢して危険を増やしそうです。


「そうねえ。あの人がお金があるって聞いたら思いっきり贅沢しそうよね」


「うん、自分で稼いだお金じゃないからって遠慮するタイプでもないし。でも、内緒にしていても問題だよね?」


 お母さんと顔を見合わせて困ったねって話していたら、お姉ちゃんがまた溜息を吐きます。


「はあ。お金を稼いで貰った身分で言うのも何だけど、二人とも危機感無さすぎ。まずお父さんで心配するのはハニートラップ! お母さんだって億単位のお金を持ってるんでしょ? 今離婚ってなっても半分は獲られるよ! それを狙う悪い連中が居ても可笑しくない。それに、私達全員に何かあったら相続権はお父さんに移るからね。何百億っていうお金の為だったら、平気でお父さんを騙して私達を殺して遺産をって考える人が普通に出て来るよ!」


 うん、家族全員から信用の無いお父さんです。でもですね、日頃からの行いってこういう時に影響してくると思います。


「浮気しての離婚だったら思いっきり争うわよ? お金は有るんだし。それに絶縁してお父さんには相続権が無いってすれば良いんじゃない?」


 お母さんは争う気満々ですが、あくまでも例えであって、今現在お父さんが浮気しているっていう話じゃないからね! 慌てて宥めますが、確かにお父さんは我が家の弱点ですね。


「お父さんの浮気は兎も角、自分達の身辺には気を付けた方がいいわ。どこからお金の話が広められて、危険な目に合うか判らない。そもそも、相手の狙いが判らないのだから出来る対処には限りがある。私達に対してのハニトラだって普通に考えられるよ」


 うん、ちょっと考えただけでも今置かれている状況って結構危険なんじゃないだろうか? でも、身辺警護の為にボディーガードを雇ったとして、四六時中私を守るなんて出来ないだろう。


「貴方達、態となのか判らないけど、肝心な事を忘れているわよ? こっちならお父さんの事以上に簡単だわ」


「え? まだ何かあるの?」


「ハニトラって言うより、合法非合法問わずあなた達と結婚すれば良いのよ。結婚さえ出来れば、お金は使い放題でしょ?」


「そっかあ、確かにそれが一番近いかも」


「非合法って勝手に偽造した婚姻届けとかも考えられるって事? うわあ、其処まで考えるとすっごく怖いんだけど」


 心配しだすと私達のような一般人でも此れ位思いつく。そもそも、私やお姉ちゃんは相手によっては騙しやすそうな小娘にしか見えないですよね。まあ、実際も似たようなものと言われても否定できませんが、それでも前世の経験は多少なりとも生きているはず。


「あとやっぱり一番怖いのは、身代金目当ての誘拐とかかな。あれは気を付けていても一人だったら避けきれないかも? スマホが漸く普及してきたけど機能的にもまだまだだし、ボディーガードは一般的じゃないかあ」


「大学の往復とかで運転手付きの車とか? 大学構内だと余程でなければ安全だと思うんだけど」


「外へ出る機会も増えてくから、引き籠るなら兎も角現実的じゃない」


 身を守る為にボディーガードとか良いのかもしれませんが、そもそも何処に頼めば良いのかすら判りません。ドラマの様に探偵事務所とかは有り得ないというのは分かりますけど、警備会社も違いますよね? そもそも、掛かるお金が凄い事になりそう。


「せっかくなんだからアメリカ領事館の人とかに聞けば? あっちはプロが居そうな気がするし。態々警告してくれるっていう事は、ある程度は信用しても良いはず?」


「そうねえ、ただ、どれくらいお金が掛かるのかしら?」


「考え出したら切りがないって、どうせなら大学卒業後とかが良かった。此処まで頑張ったんだし、医者にはなりたい!」


 大学を辞めて直ぐにでも引き籠るのが正解な気がしてきてします。ただ、それでは今までの頑張りが総て無に帰します。流石にそれは納得が出来ません。


「まず出来る事は、極力一人にはならない事かな。あと警備会社とかも一応聞いてみよう。それと、セキュリティーの厳重なマンションを早急に建てる! そして引っ越す! ガードマン付きのマンションとかにしよう。日和も大学卒業したらマンションを建てる計画してたでしょ? それを早めよう」


「うん、それは計画してたから良いけど、まだ土地すら決めてないよ?」


 私もお姉ちゃんと同じようにマンションを一棟建てる計画ではいました。ただ、一応は大学卒業後を考えていたんですよね。


「あなた達、それもだけどお父さんも呼んで説明しないとよ? ただ、あの人が娘のお金で自分には権利が無いって考えられるかしら? 家族なんだからとか、今まで育ててやったんだからとか言い出しそう。そこが心配だわ」


「お姉ちゃんのお給料が幾らかって聞いてきたんだよね? う~ん、不安しかない」


「お父さんの実家が無心して来たみたいだし、恩着せがましくお金貸してあげちゃいそう。そんな事しても後々トラブルになるだけなのにね」


 3人で顔を見合わせて溜息を吐きました。


 何か最近溜息の数が増えたような? 溜息を吐くと幸せが逃げるんだよね? そう考えると幸せがどんどんと逃げて行っている気がする。


「あとは、日和のこの名刺が何処まで効果を発揮できるかかな? とりあえず5枚ほど貰っといて良い?」


「うん、あ、お母さんにも渡しておくね」


 今の処、警察の人の対応は悪いと感じた事は無いです。ただ、緑警察署に相談しておくにしても、何と説明して良いかが判りません。何と言ってもまだ被害はまったく無いのです。


「事前に対策を取るって言っても難しいね」


「そうね、色々と考えちゃうわね」


 お母さんと顔を見合わせます。お姉ちゃんは何やらスマホでメールしはじめてますが、美穂さんにでも送っているのかな?


「美穂さん?」


「うん、流石に今日は帰れないなって。ただ、美穂にも気を付ける様に言わないとだから、手が空いたら電話くれる様にメールした。流石に電話で説明しないとだよね」


「そうね。周りにどれくらい影響が出るかわからなわね。それにしても、何で今更狙われるのかしら? 他にお金持ち何て幾らでもいるでしょう?」


「う~ん、良く解んないけど、個人資産で言ったら日本でも上位だと思うよ? でも、確かに……ん? 日和、何か心当たりあるの?」


 お姉ちゃんがじっとこっちを見ます。それに合わせてお母さんも私を見ました。私は、ちょっと引き攣った笑顔を浮かべるしかありません。


「ほら、素直に白状しなさい! 何やったの!」


「えっと、ほら、マンションを建てるでしょ? だからお金が減っちゃうから、銀行に置いておいても碌に金利が付かないから、え、えへ?」


「また投資してたの! あんたなにやってるの! それで幾ら儲けたの!」


「え、えっと、今の時価だと50億くらい?」


「何をやってるの~~~!」


 お姉ちゃんの怒声が響き渡りますが、仕方がなかったんです! お金が減るのが怖かったんです! 私は小市民なんですよ!

40話での内容で、宝くじについては既にお姉さんに説明済みとのご指摘を頂きました。

近々にて修正させて頂きます。ご指摘ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
日和また株で儲けてたんですねw 確かに銀行に預けるより、株に投資した方がましらしいですけど、50億はやりすぎかな?w
ついに、新章突入おめでとうございます㊗️ それはそれとして、まだ儲けんのか笑笑
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