使命を果たす為に
冬子婆ちゃん……。何だか変な気分。あー!むずがゆいぞ!しかたないけど。この世界のばあちゃん若いんだから冬子さん、だな。
「紅ー!飯の支度すっとをー!この家さいるうちはお客さん扱いはすねーからな。」
(ボーン、ボーン、ボーン!)…懐かしい婆ちゃん家で幼い頃よく、聞いてた時計の音だ。
一回鳴れば1時、二回鳴れば2時、三回鳴れば3時。今では何回鳴った?三回か?まだ夜中じゃないか?
「紅ちゃん!起きないと!戻されちゃうよ!」
梅干し?何でいるんだ?
「梅干し…お前は祠に帰ったんじゃないのか?」
「梅干しじゃないよー!梅だって!紅ちゃん!そんな事より早く起きてよ!もう。相変わらずできないやらない紅ちゃんなんだから。困っちゃうよ。」
「はぁ?こんな夜中にイラつかせないでよ!なんで婆ちゃんにおこされたんだ?いつもは明るくなってからなのに。」
「紅ちゃん!この世界は冬子様。つまりご師匠様だよ!」
(……なんだ?夢じゃなかったのか。あの女の人は婆ちゃんで、冬子さん。今は冬子さんつまり異世界の婆ちゃんでこの世界を私の力で何かをするんだっだっけ?)
意識が混乱する中渋々起きた。起きなきゃ動かなきゃ先に進まないような気がしたから。
「紅ー!」
冬子さん…あや、婆ちゃんが呼んでる。面倒くさいな。本当に。
「おい、梅干し…いや、梅。私のこの世界の使命はなをんぞや?守護神は来ないのか?」
「あー。これは御師匠様からの課せられた紅ちゃんの使命みたいだよ。」
「使命?何のために?この異世界を変えるのか?」
「そこまでは分からないよ!分かってても言えないよ!契約違反になっちゃうし。」
なんだ?契約違反?婆ちゃんと契約してたのか。
まーよい。
混乱してる暇はなかった。使命だの契約だの私には関係ない事。何のためにあの祠に導かれて今この場所にいるのかたしかめなくちゃ!
しかし、守護神はどこにいったんだ?
この世界に来る前はたしかに一緒にいたはず。
松や竹もどこに…
「紅ちゃん!早くいかないと!」
どうやら考えてる暇はなさそうだ。
私は冬子さん…いや、婆ちゃんの所にいそいそと向かった。すると、今はもう切られて姿を消した梅の木がたくさんの実をつけて私が小さい時に目にしたそのままの梅の木がそこにあった。
婆ちゃんとえだでつついてよく落としてた懐かしい梅の木。
「紅!遅い!呼ばれたらすぐ来なさい!」
…改めて婆ちゃん若いなー。違和感しかないわ。
「わかったよ!」
「なんだ?その返事は。分かりましただろ?」
「…分かりました。」
何だか違和感がありすぎて素直になってしまう。
「紅、紅は自分が何故ここに呼ばれたか分からないだろう。」
冬子さん、いや、婆ちゃんは梅の木を見上げながら少し微笑みながら話始めた。
「紅は自分の人生を恨んだことはあるか?おまえは小さい時から何にでも興味を示す好奇心の固まりのような子供だった。体が弱くいつも部屋から外を眺めては自然と会話をしてるようだった。しかし、紅自身では、きずかないだろうが、紅には不思議な力が、やどっておる。」
そう話すと、婆ちゃんは口をとざしてしまった。
梅の木…。懐かしい。緑が映える涼しい裏山に空を見上げながら風を感じていた。
当時は未来など気にもせず、今ある平和な日々を当たり前に過ごしていたのが懐かしい。
夏の暑い空気や匂い木々の音目を閉じて感じれる。
体わを包むように風か吹き抜けた時、身体中に力がみなぎるのが分かった。
梅の木の根本に何か光物を見つけた。
「婆ちゃん!…あや、冬子さん!見えますか?…話にくいな。あそこ、木の根もと!…です。だよ!」
「なんだ、なんだ?」
婆ちゃん、いや、冬子さんは光を見るなり私の手をつかみ、光の中に手を入れた!
「ちょっ!ちょっと!何?婆ちゃん!嫌だよ!」
「いいからだまって見てろ!」
「見てろって言う状況じよゆないよ!これは。婆ちゃん手放して!」
抵抗する私を横目に婆ちゃん、いや冬子さんはニヤリと私をみて微笑んだ。
梅の木の根本に何か感触かあった。
「ばあ、いや、冬子さん!」
「婆ちゃんなんだから婆ちゃんって呼べ!面倒くさいなや。」
(なに?面倒くさいだと?気を使ってやってんのに!全く婆ちゃんだ!やっぱり)
梅の木の根本の一瞬感じた感触は何かとてつもない力が働いている…。しかし、婆ちゃんは何を私にさせたいんだろう。全く分からない。
その時根本から淡く優しい光が空を登るようにゆっくりと出てきた。そして私の体をゆっくりと包み出した。