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純情レストラン洗濯船  作者: 田子作
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第12話 『罪を憎んで人を憎まず』は部外者の香り

ほんと、こんな人いるんですよね。でも決して悪い人ではないのが困りもの。

「今日はいつもの配達弁当に加えて、昼に取りに来るオードブル、夜は貸し切りディナーのフルバージョンだぞ!ボヤっとしてたら間に合わんぞ!」

まだ夜も明けきらぬ午前4時。

田子作は玄関のドアを叩いてエーコを起こそうとする。


「まだ眠いですぅ~・・」

寝ぼけながら返事をするエーコにいら立ちを隠さない田子作は何やらごそごそ始めた。

それではと再び眠りの続きに入るエーコ。


エーコが起きる気配がないことを確認すると田子作はエーコの部屋の鍵の掛かっていないキッチンの小窓を開けて黒い布のような物を投げ込んだ。

数秒後。


「・・グッハッ!!」

堪らずエーコは目を覚まし金ぴかドームから這い出て来た。


「長雨が続いたおかげで俺の靴下が熟成されたぞ。」

靴下の悪臭はドーム内にも侵入したようである。

玄関を開けたエーコをニヤニヤしながら田子作は見下ろす。

エーコはキッとした顔で田子作の七分丈の短パンから出ている足のすね毛を数本すかさず引き抜いた。


「ぎゃっ!!」

今度は田子作が悲鳴を上げた。


「お返しです!・・はぁ、死ぬかと思った。」

エーコはトングで靴下をビニール袋に入れるとギュッと口を縛り田子作へ突き返した。

こうして田子作達の一日は騒々しく始まるのであった。


店内の開店準備を手短に済ませるとエーコはいつものごとく竹ぼうきを持って道路へ出ようとする。


「おい!今日はそれどころじゃないぞ。もう7時だぞ、調理を手伝えよ!」

田子作は慌ててエーコの行動を封じようとする。


「えー、いいんですか?掃除で結界を張らないと『邪』が来ますよ?」

本物の神族ゆえにエーコは抵抗する。


「お前工学部卒なのにそういうのは信じるんだな?とにかく後にしろ後に。」

本当に時間が無いことが理解できたエーコは渋々店内に戻る。


「ふんっ、知りませんからね、私の勘が『今日は邪神が来る』って言ってますけど?」

聞く耳持たない田子作は次々と野菜や果物を切り込んでいく。

エーコも仕方がないと諦めて弁当箱やオードブル皿の用意に取り掛かった。


時刻は11時20分を少し過ぎた所で店の前の道路の向こう側に一台の軽自動車が止まるのが見えた。

「ほらー、やっぱり!!『邪神』が来たじゃないですか!!」


車から小太りの中年男性が下りてきた。

「わちゃー、こんな時間の無い時に!!」

田子作も露骨に嫌がる。


「ここ最近は毎朝欠かさず道路掃除をして結界を張ってたから来なかったのにぃ。」

悔しくて仕方がないという表情を丸出しのエーコ。


「こんちわ!!」

見るからに七福神の釣り竿を持った神様のような中年男性は明るく挨拶しながら暖簾を潜った。


「あー、権田さん、今から配達に出るので時間が無いんですよぉ。また今度!!」

田子作はいきなり追い返そうとする。


「おー、こりゃ大漁やな!良い事じゃないですか。おめでとうございます!」

全く田子作の話を聞かない『権田さん』。


「いや、だからもう配達に出ないといけない時間なんで、すみません。」

流石に年上の彼に『出ていけ』とは言えない田子作。


「あ、お構いなく!それでな社長、私んところはもうお弁当から撤退しようと考えてるんですわ。」

やはり効果無しである。

同業者の先輩だが週に2,3度は店に来て長時間に渡り愚痴や陰謀説を語っていくのが彼の日課なのだ。

彼が立ち寄る他の飲食店では「営業妨害レベル」とまで言われているが本人は一向に気にしていない。


「私、車持ってきますね!」

エーコは車のキーを掴むと急いで駐車場へ走る。


「だから言ったのに!!」

走りながら結界を張らなかったことを呪った。


エーコが車を店の前に横付けした時もまだ喋っていた。

二人は権田さんに完全に無視を決め込みどんどん弁当箱の入った袋を車に詰め込む。


「すみません鍵を閉めるので出てきてもらえませんか?」

12時までに配達しなければクレームの電話が掛かってくる。

田子作は怒りを噛み殺しながら丁寧に接する。


「あ、社長、ちょっとトイレ貸して。」

そう言うと店の奥のトイレに入ってしまった。


『この野郎!いい加減にしろよ!!』と声を出さずに口パクで怒鳴る田子作。

それを運転席で虚しく見つめるエーコ。


「どんなに忙しくても明日からは絶対掃除しよう。」

そう決意する二人であった。



こんな時皆さんならどうします?

撃退法募集中!!

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