第七話
私は翌日、友達に聞かれた。
「昨日の放課後、職員室の近くに一緒に居た人って誰? 美奈が私たち以外の人と一緒に居るなんてすごく珍しいけど……」
そう聞いてきたのは私の数少ない友達の桐生由美ちゃんだった。
私の友達はあと二人いる。この三人は小学生の時からの友達で、いつも私を心配してくれている。だからこそ、聞いてきたんだと思う。
「えっと、宮野圭介君て言うの」
「名前はどうでもいいけど、無理やり連れまわされてるとかじゃないよね?」
「そんなんじゃないよ。寧ろ、私が迷惑かけてるような感じだし」
「信用に足るような人間なの? あんまり変に言い寄ってくるんなら……」
由美ちゃんは身を乗り出すように言ってきた。
「だ、大丈夫だよ。すごく優しい人だし……」
「そんなん、優しく見せてるだけかもしれないじゃない! その人って何年何組の人なの?」
「えっ、なんで行き成りそんな事聞くの?」
「もちろん、本当に信用に足る人間かを調べる為よ!」
由美ちゃんは息を巻いてそう言った。
「あのね、多分、カウンセリングの関係の人だよ?」
「は? カウンセリング? それってカウンセリング室に居る先生って事? じゃあ、何で普通にウチの制服着てるの? 趣味?」
「それは分かんないけど、でも、よくカウンセリング室に居るし……」
それに、圭介君は文系組にも理系組にも居ない。だって、名簿に名前が無かったから。
でも、それを本人に言ってしまったら、今すぐに私から離れてしまいそうで怖いから言わずにいる。
「は~。まあ、美奈がそれだけ懐くのも珍しいし、取り敢えず信用しておくとするわ。でも、何かあったら言ってきなさいよ?」
「うん」
私が微笑みながら返事をすると、由美ちゃんも笑顔を返してくれた。でも、直ぐにあっと言って、思い出したと言うように聞いてきた。
「そう言えば、美奈はその人の事どういう風に思ってるの?」
「えっと~、お兄さん? みたいな感じかな?」
「なんか疑問形な感じ満載だけどまあいいわ」
何がいいのかはあんまり分からなかったけど、由美ちゃんがにっこり笑って
「この話はもう終わり」と言った為、終わりにした。
まさか、由美ちゃんに圭介君といるところを見られるとは思わなかったけど、それ以上に抑え込んでいた疑問がまた浮かんできてしまった。『圭介君はいったい何者なんだろう?』という疑問が。