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プロローグ
目の前には扉がある。何の変哲もない極普通の扉が。
特別重い訳でも、鍵が掛かっている訳でもない。
それなのに私は開けられずにいる。
開けないといけないのは分かっている。なのに、体が、心が拒絶する。
それでも、どうにか開けようと体を動かす。
その度に、呼吸は乱れ、いくら空気を取り込んでも息苦しくなる。
いっその事、倒れてしまいたくなるくらいに苦しくって、でも、それも怖くて逃げだしてしまう。
どうにかしないといけないのも分かってる。『分かっている』けど『解かりたくない』。
「出来ないのはしようとしないの言い訳」
そう何度も周りから言われて、どうにかしようとするけど、出口のない迷路に放り込まれたみたいに、どうしたらいいのか分からない。
だから、どうか誰でもいいから私に手を差し伸べてください。