トリヒキ
「コルト」
朝、目覚めたコルトが商会に向かう用意を済ませ、王都のブランチェ伯爵邸の自室を出ると、現当主である父に呼び止められた。
「おはようございます、父上」
「ああ、これからフリード殿下に任せられた仕事か?」
「はい、ファンネル商会で来客の予定があります」
「そうか……くれぐれも慎重に行動するんだぞ。ファンネル商会はエリザベート嬢が国の為に作った商会だ。
彼女が戻るまで、お前が守らねばならない。
最近はあまり良い噂は聞かないぞ」
「私の力が足りず、ご心配をお掛けしております」
「はぁ、兎に角、お前はフリード殿下が暴走しない様にしっかりと目を光らせておく様に」
そう言い残して足早に立ち去る父をコルトは苦々しく見送った。
ファンネル商会の商会長室にやって来たコルトは不機嫌を隠さず護衛として付いているバアルに声を掛ける。
「バアル、エリザベス商会のマーベリックの調査はどうなった?」
「それなら今朝報告が来たぜ。
やっぱり妙な商会だ。つい最近になってメリーナ王国の王都の一等地に商館を建てて大々的に商売を始めたらしい。
おかしいのはそれまで何処かで活動していた形跡が一切無い事だ。
ポッと現れた癖に資金力に物を言わせて大きく商売をしている。
バックに何か力のある奴が付いているのかも知れねぇな。
商会長のエリザベスとか言う奴の姿は誰も見た事がないらしい。
あのマーベリックって男もそうだ。
今回、ファンネル商会と取引するって言う件で急に現れて責任者になったそうだ」
「怪しいな」
「ああ、経歴も洗ったが、綺麗な物だ。
まるで作り物の様にな」
「やはり取引の件は断るか」
コルトがそう考えていると、ドアの外から秘書が声を掛けて来た。
「コルト様、ビオート商会のベリット様がお見えです」
今日、面会の約束をしていた商人が到着したらしい。
「応接室で待たせておけ」
扉越しに言い付けると、コルトは再びバアルに顔を向ける。
あのエリザベス商会の件が有ってから、初めて面会する人間の素性は調べる事にしていたのだ。
「あ〜ビオート商会のベリットか。
調べているぜ。エリザベス商会と同じメリーナ王国の王都に商館を置く商会だ。
こっちはエリザベス商会とは違って王都で何年も店を出している老舗だな。
ベリットってのも3代目である現商会長の息子で、次期商会長の名前だ」
バアルから調査の結果を聞いたコルトは頷くと待たせている商人に会う為、席を立った。
「お初にお目にかかります。ビオート商会のベリットと申します」
「ファンネル商会のコルトだ。
済まないが予定が詰まっていてね。
手早く用件を話してくれ」
「はい、用件と言うのは勿論取引の申し込みなのですが…………」
歯切れの悪いベリットの言葉に眉根を寄せたコルトは先を促した。
「どうした、さっさと話せ」
「はい、実は先日、こちらの商会にエリザベス商会から取引の打診があったとおききしまして」
「…………それが何か関係が?」
怪しいエリザベス商会の名前が出た事でコルトの警戒心が一段上がる。
「はい、コレは我々が独自に調べた情報なのですが、エリザベス商会はファンネル商会様を潰す為に作られたダミー商会らしいのです」
「…………」
「そこで、どうでしょうか?
我々と組んで逆にエリザベス商会を潰すと言うのは?」
「詳しく話せ」
「はい、そもそも我々は迷惑しているのです。
ポッと出のエリザベス商会がお金をばら撒く様に我が物顔で商売をして市場を荒らしている現状は我が商会にとっても非常に業腹なのです。
しかし、相手は何者かの支援を受けているのか、全く資金が枯渇する様子を見せない。
そこで、奴らの標的らしいファンネル商会様と組んで、逆に奴らの資金を吸い上げてやろうと考えた次第です」
「ほぅ」
なるほど、エリザベス商会の奴らは派手にやり過ぎて地元の商会の恨みを買ったって事か。
バアルの話によればあのマーベリックと言う奴も裏の工作員としては優秀らしいが、商人としては二流以下って事だ。
「詳しい計画は有るのか?」
「はい、勿論です。
先ずは表向きエリザベス商会と取引して頂いて……」
その後、ベリットが話す計画を聞いたコルトは彼と手を組む事を決める。
エリザベス商会の資金を吸い上げる事が出来れば、今の傾き掛けたファンネル商会を立て直す事が出来るかも知れないからだ。
◇◆☆◆◇
「エリー様、予定通りファンネル商会との取引が成立致しました」
1日の仕事が終わり、自室でミレイと珈琲を飲んでいた時、窓から手紙を携えたセイントバードが飛来した。
手紙はマーベリックからで、予定通りファンネル商会との取引が成立したという内容だった。
「計画も大詰めね」
「はい、マーベリックには予定通りしばらくはファンネル商会を儲けさせる様伝えておきます」
「お願いね。それと、計画に関わっている他の人員にも連絡を入れておいて。
決行は2ヶ月後、私も直接乗り込むわ」
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(・ω・)ノシ




