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ニセモノ

「うっまぁ〜」


 テーブルの上に並べられた小粒の菓子を口に放り込み、ティーダは感嘆の声を上げる。


 菓子にはいくつもの種類がある。

 クッキーやパンケーキ、ドライフルーツやナッツを包み込んだ物など多岐にわたる。

 その全てに使われている物が、古王国で人気を博していた菓子を再現したチョコレートと呼ばれる物だ。


 苦味と甘味を持つこの菓子は非常に多くの可能性を秘めている。


 数ヶ月の試作によって、完成したチョコレートは、まだまだ研究の余地を残しているが、ひとまずは商品として販売できるレベルに到達した。


 カカオの在庫もそれなりの量を確保している。

 《光の道》は予想以上に優秀で、秘密もしっかりと守っている。

 その為、先日トレートル商会の専属冒険者として契約した。

 今後も毎月一定量のカカオ採取を依頼している。


 そうして完成した試作のチョコレート菓子をタイミングよく帝都に帰って来たティーダや先日レブリック伯爵領から帰って来たルノア、私と試作品を作っていたミレイ、ミーシャと共に試食していた。


「美味しいですね」

「私はこのナッツのヤツが好きです」

「甘さを控えた物も良いですね」


 なかなかに好評だ。


「これ、お酒にも合うと思うッス」

「お酒?」

「はい、私の勘が囁くッス!この濃厚な甘さには酒精がマッチする気がするッス」

「なるほど……料理人に伝えておくわ」

「完成したら是非、私にも味見させて欲しいッス」

「成功したら良いわよ」


 既にトレートル商会内に喫茶部門を設立してあり、店舗の確保や従業員の教育などを始めている。


「これなら行けそうですね」

「ええ、後は試作品をお茶会で貴族に振る舞いこの新しい菓子の噂を広められれば十全ね」

「はい、早速手配致します」

「お願い。それから料理人に言って皇室への献上用のチョコレート菓子を作らせて。

 予算は気にしなくて良いから、最高の物をお願いね」

「畏まりました」




 こうして喫茶店『グリモアール』は無事オープンを迎えた。


 商業区の中でも貴族街に近い場所に位置しており、裕福な商家の娘や御忍びの貴族の子女で賑わっている様だ。


「盛況で何よりね」

「はい、貴族の間でも話題になっている様です」


 私が書類にサインを入れながらルノアと話していると、金貨袋を抱えたミレイが執務室に入って来た。


「エリー様、今月分の金貨です」

「そこに置いておいて頂戴、後で纏めて金庫にしまうわ」

「はい」


 目の前に居たルノアは特に何も反応しない。

 初めの頃は金貨が詰まった袋に目を回していたけど、成長した物だ。


 ミレイが金貨が詰まった袋を机に置くと、中の金貨が音を立てる。


「ん?」


 私は立ち上がり金貨袋が置かれたルノアの机にまで近づいた。


「エリー会長?」


 ルノアが不思議そうに見上げて来るが、今はそれどころじゃない。


 私は金貨を1枚取り出すと、裏、表とマジマジと見る。


「…………ルノア、この金貨を鑑定して」

「え?」


 私はルノアに金貨を手渡す。


「早く」

「は、はい!」


 机に金貨を置いたルノアは金貨に手をかざし、詠唱を始める。


「万物に宿し魂よ 秘めたる姿を我が前に晒せ 

物品鑑定(アイテム・アナライズ)】」


 しばらく目を瞑っていたルノアが驚きの表情で目を見開いた。


「こ、これ!おかしいです!鉱物比率が金貨の物じゃないです!」


 やはり。

 先程、金貨袋から鳴った音が少し妙だった。

 しかし、どう見ても金にしか見えない。


「ミーシャ!秤とナイフを!」

「はい!」


 秤に乗せて重さを測るが、その重さは金貨と同じ、ナイフで表面を少し削ったが金にしか見えない。

 でもルノアの鑑定では金以外の鉱物が混ざっている。


「…………となると」


 私はナイフを振り上げ、魔力を纏わせると金貨に向けて振り下ろした。


 机の上で真っ二つになった金貨の断面を見ると、金の中心に黒くボロボロになった物が見える。

 帝国金貨は金90%銀10%の比率で作られている筈だ。

 こんな芯材が使われている筈がない。


「偽金ね」

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(・ω・)ノシ

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