迷宮と採掘
新年明けましておめでとう御座います。
本年もどうぞ宜しくお願い致します。
m(_ _)m
壁一面に広がるエマヤ鉱石の鉱脈は、殆ど手付かずの状態で放置されていた。
通常時なら、価値が低く、運ぶ手間が掛かる為、誰も手を出さないのだろう。
「わたしとエルザさんが必要量を採掘しますので、エリーさんとティーダさんは周囲の警戒をお願いしますね」
「ええ」
「了解ッス!」
私とティーダが少し離れてエマヤ鉱石の鉱脈が有る通路へ魔物が侵入しない様に警戒を始めると、ユウとエルザはツルハシを取り出してエマヤ鉱石をガシガシと採掘し始めた。
それから約1時間、ティーダが魔物使いを追い払ってくれたお陰か、道中とは打って変わって魔物は全く現れなかった。
そして声が掛かり、ユウとエルザの元へ行くと、そこには私の背丈の何倍もの高さに積み上がったエマヤ鉱石の山がいくつも出来上がっていた。
流石はAランク冒険者と言ったところか、コレだけの鉱石を採掘していながら、2人とも息切れすらしていなかった。
「これだけ有れば足りるでしょう」
「エリー、頼む」
「了解、神器【強欲の魔導書】」
2人が採掘したエマヤ鉱石を収納出来るか、少し不安が有ったが、わざわざ魔法契約書を使い所有権を明確にしたお陰か、問題無く収納出来た。
「おお……やっぱ凄いな。全部入っちまった」
「便利な能力ですね。わたしのは戦闘以外には使えませんから羨ましいです」
「むむ……上手くやればいくらでもお金を稼げるッスよね。…………私もどうにか同じ様な神器を……」
「はいはい、用事は終わったんだから急いで帰るわよ」
私はパンパンと手を叩いて帰還を促すのだった。
◇◆☆◆◇
「フリード、しばらくの間、お前を政務から外す」
「ち、父上!」
突然、ブラート王の執務室に呼び出されたフリードに突きつけられたのは政務から距離を置き、勉強し直せと言う父王からの通告だった。
「何を言っているのですか!」
「黙れ!コレは決定事項だ。
今一度学び直せ。俺が認めるまで政務への復帰は許さん」
「…………」
「分かったら、退出せよ」
「…………」
フリードは悔しげに頭を下げて部屋を出る。
「クソ!なんでこうなるんだ!!なんで……。
俺の何が悪い!学び直せだと⁉︎
失敗したのは周りが俺の言う事を聞かないからだ!
クソ!クソ!見ていろ!文句を付けられない程の功績を挙げて…………そうだ!そうだな。
この俺が王に成れば誰も逆らわない。
そうすれば父上も俺を認める筈だ」
城の廊下をブツブツと呟きながら歩くフリードを見つけ、声を掛ける者がいた。
「フリード殿下、此方でしたか」
「ん、コルトか」
コルトは伯爵家の次男であり、ロベルトが処刑された後、フリードが重用している男だった。
「どうした?」
「はい、例の件でドンドル大司教様がいらして居ります」
「分かった。応接室だな」
「はい」
フリードは目的地を変えて再び歩き始めながら、声を少し落としてコルトに尋ねた。
「…………それで、コルト。お前に任せていた計画はどうなっている?」
「はい、商会の方のツテを使って進めております。来年には開始出来るかと……」
「それでは遅い。予算を増やしてやるから予定を早めろ」
「え⁉︎し、しかし……」
「良いからやれ!此処で功績を挙げるしか無いんだ!」
「わ、分かりました。可能な限り急がせます」
「任せたぞ」
◇◆☆◆◇
南大陸にある礫帝国の帝都。
板葺きの屋根の建物が並ぶ平民区で1人の少女が数人の男達と話していた。
黒髪を腰の辺りまで伸ばした、美しい少女だ。
歳の頃は15程、つい最近成人したばかりなのだが、この国ではもう少し上に見られる。
黒髪黒目が普通な南大陸では珍しく、彫りが深くハッキリした顔立ちであり、翠の瞳が異国の血が入っている事を物語っている。
「……と言う訳で店のお金を横領しているのは番頭の馬蓮だろうね」
「な、なんだと!」
「やっぱりアイツが犯人か!」
「みんなの話が本当ならそれ以外には考えられないかな」
「わかった。今の話を官に伝えて調べて貰おう!」
「ありがとうな、嬢ちゃん。約束の銀貨だ」
「まいど〜」
少女は男達から銀貨を受け取ると懐にしまった。
「彩暁様!」
「猫蘭?」
男達が去った後、木陰から現れたのは少女より少し年嵩な女だった。
何処か苦労性な雰囲気がある女が彩暁と呼んだ少女の元に駆ける。
「どうしたの、そんなに慌てて」
「慌てますよ!何度も言いますが、勝手に抜け出すのはお止め下さい!」
「ごめん、ごめん、でもボクなら大丈夫だよ」
「彩暁様が大丈夫でも私共には大事なのです!」
「わ、わかった、わかった、猫蘭は心配性だな…………それと、外では敬語、止める約束だよ」
「約束を守れと言うなら、彩暁様こそ、外出時は私に声を掛けると言う約束を守って下さい」
「う……ボ、ボクが悪かったよ」
猫蘭は少し落ち着いたのか、怒りに赤らめていた顔をすこし落ち着けた。
「全く……ああ、それと港に交易船が帰って来ていますよ」
「阮船長の船?」
「はい」
「わかった!港に行こう!」
「阮船長!」
「ん?おお、彩暁の嬢ちゃん!」
「お帰り!それで、どうだった?」
「ああ!嬢ちゃんに教わった『ざわーくらうと』のお陰で今回も死人は出なかったぜ!
中央大陸の商人も驚いていたぞ。
あとコレな。頼まれていた書物だ」
「ありがとう!」
代金を払い本を受け取った彩暁は、阮船長に別れを告げ、猫蘭を伴って帰路に着いた。
少し歩き人目が少なくなる辺りで待っていた馬車に乗り込む。
抜け目がない猫蘭が手配していた馬車だ。
「彩暁様が仰っていた通り、船乗り病は食事によって予防出来るって事ですね」
「そうだね。でもボクは知識を集めて組み合わせた物から答えを導き出しただけだよ。
凄いのはそれらを見つけ出した研究者さ」
そんな話をしているうちに、馬車は平民区を抜け、更に貴区をも越えた。
向かう先は帝区と呼ばれるこの国で最も高貴な人物の支配する領域だった。
厳重な警備が敷かれた門を素通りすると、帝区の一角にある宮へと到着する。
馬車から降りた2人は、慣れた様子で宮へと入って行く。
「彩暁」
繊細な装飾が施された赤い柱が並ぶ廊下を自室に向けて歩いていると、彩暁を呼び止める声が有った。
この宮でその様な事が許される身分の者は多くは無い。
この帝国の頂点にいる帝や皇太子なら可能だが、この宮は彩暁に与えられたプライベートなエリアだ。
先触れも無く帝がやって来るとは考えづらい。
お付きの侍女であり、教育係兼お友達である猫蘭も彩暁に砕けて接する数少ない人物だが、こんな人目のある場所で主を呼び止める様な無礼を働く様な人間では無い。
そもそも、彼女は隣を歩いている。
ならば可能性は1つに絞られる。
「お母様」
彩暁が振り返ると、予想通りの姿が有った。
黒髪に黒い瞳の妖艶な女性だ。
「また抜け出したのね」
「うぅ……」
「全く……苦労を掛けるわね、猫蘭」
「いえ申し訳ありません、玉涼様。私が至らぬばかりに……」
彩暁の母、玉涼は、姿を見せたと同時に平伏していた猫蘭が謝意を示すのを片手を上げて振って止める。
「謝る必要は無いわ。貴女が懸命に止めてくれている事は知っているから。ありがとうね」
「勿体なきお言葉で御座います」
そんな母と侍女の会話を居心地悪そうに聞いていた彩暁だったが、目の前に差し出された物を見て首を傾げる。
「お母様、コレは?」
「貴女に届いた手紙よ」
「手紙?」
彩暁は母が差し出した手紙を不思議そうに受け取るのだった。
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(・ω・)ノシ




