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迷宮と森林②

 6階層も同じような森林だった。

 代わり映えしない光景に、まるで同じ場所をグルグルと回っているような錯覚を覚える。


「なんかさっきから同じような景色ッスね?」


 ティーダも私と同じ感想を抱いたようだ。


「進んだ感じがしなくて疲労倍増ッスよ」

「この次の7階層には魔物が入りにくい安全地帯がある。今日はそこで休む予定だ。

 それまで辛抱してくれ」


 エルザが苦笑を浮かべてティーダを宥める。


 なんだかんだと文句を言いながらも、ティーダは問題なく私達についてきている。

 戦力としては十分だし、アンデッドが出てくるようになれば、ティーダの光魔法は強力な武器となるだろう。


 森の中を進む途中、ユウは目にした木の実や花を少しずつ採取している。

 何か有用な物なのだろうか?


「あ!良い物がありました」


 ユウが嬉しそうに手の平より大きな果実を採取する。

 急いでいるため、立ち止まって採取まではしないが、目に付いた物はどんどん収穫している。


「ユウ、それは何の木の実だ?」

「見たことない木の実ッスね。食べられるんッスか?」

「コレはカカオという木の実ですよ。この大陸の気候では育たない南の果実です。

 食べても甘酸っぱくて美味しいですが、種を醗酵させて乾燥すると薬の材料になるんです」

「カカオ……」


 聞いたことがあるわね。

 南大陸では果実や薬として重宝されているとか……でも、それ以外にも何処かで……確か、ハルドリア王国の古文書だったかしら?

 戻ったら調べてみましょうか。

 なんだか大きなビジネスの予感がするわ。


 それからも小休止を挟みながら、偶にユウに植物の説明を受け、そして魔物を撃退しながら進んでいるとエルザが急に立ち止まる。


「伏せろ!」


 エルザの叫びで反射的に身を屈める。

 すると、頭上を風を切る音と木々を薙ぎ倒す轟音が抜ける。


「な、なんッスか⁉︎」

「ば、馬鹿な!こいつは……」

「コレは大物ですね」

「こんな情報は無かったわよね」


 私達の目の前に現れたのは5メートルを超える巨体で岩の塊のような棍棒を手にした人型の魔物だ。


「ギガンテスだな」

「こんな上層にいるような魔物じゃないですよ」

「下への階段は奴の後ろね」

「仕方ない、倒すぞ」


 振り下ろされる巨大な岩塊を左右に跳んで躱した私達は直ぐに戦闘態勢をとる。


「マジついてきたことを後悔してるッス!

 迷える我らをお導きください【閃光(フラッシュ)】」


 ティーダが掲げた鉄杖の先から強烈な光が走り、ギガンテスの目を眩ませる。


「はっ!」


 エルザが足を斬り付けるが薄皮を切る程度の傷しか与えられない。


「浅いな」

「エルザ、退がって!」


 私の声を聞いてエルザが後ろに跳ぶ。

 それと入れ替わる様に前に出た私を、ギガンテスは拳を握り、殴り飛ばす。


「な、エリー⁉︎」


 攻撃を避けることなく受けた私にエルザが目を見開く。

 しかし、拳を受けた私の体は一瞬で粉々になる。


「あれは……氷⁉︎」


氷人形(アイス・ドール)】を身代わりにギガンテスの腕を駆け上り顔を斬り付ける。


「グブゥゥウ!!!」

「やるな!【剛閃】」


 エルザが隙を晒したギガンテスの足に再び斬りかかる。

【スキル】を使い威力を上げた斬撃は足を深く傷付ける。


「グゥ!」


 ギガンテスがエルザの方を睨みつける。

 しかし、そこに光属性魔法の【光矢(ライト・アロー)】がギガンテスの顔に撃ち込まれる。


 意識が分散したギガンテスの背後に小さな黒い影が猛スピードで迫る。


「【剛断】」


 ユウの【スキル】は振り下ろされる戦斧の威力を格段に上げるもののようだ。

 その一撃でギガンテスの背中は大きく斬り裂かれる。


「グブゥゥウ!!!」


 怒りを露に棍棒を薙ぎ払う。


「か弱き我が身に御加護を【光壁(ライト・ウォール)】」


 ティーダの魔法で作られた光の壁に阻まれた棍棒が止まり、その隙に私は再びギガンテスの体を登り、その大きな口に生える牙の付け根に刃を走らせる。


「はぁ!」


 あまりの痛みに棍棒を手放し両手で口元を押さえたギガンテスの胸にエルザの剣が突き刺さる。


 ギガンテスの巨体が倒れ、土煙と共に地面が揺れる。


「た、倒したッスか?」

「まぁ、いくらギガンテスでも、Aランク2人に私とティーダが相手じゃこんなものでしょうね」

「そうですね。でも思ったより時間を取られてしまいました」

「ああ、しかし、なんだってこんな所にギガンテスが居たんだ?」

「そもそも、情報ではこのダンジョンでギガンテスが目撃されたって話は無いはずよね」

「ん〜なんだか嫌な予感がしますね」


 私達は言い知れぬ不安を感じながら次の階層に進むのだった。

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(・ω・)ノシ

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