迎撃される襲撃者達
「おい、村人共!用意はできているんだろうな」
ニヤニヤと笑みを浮かべた盗賊達が荷車から先行して此方へとやってきた。
「それと今朝、商人の馬車が来ただろう?
その商人の積み荷も馬車ごと寄越しな」
脚を引き摺った男……アルドと名乗った男が奥歯を噛み締めながら盗賊を睨みつける。
そんなアルドを横目に見ながら私は前に出る。
「お!良い女じゃねぇか。なんでこんな田舎にお前みたいなべっぴんが……」
ニヤけながら私の肩に手を置こうとした盗賊だったが、その手は空を切る。
「へ?」
それが盗賊の最後の言葉だった。
「「「な⁉︎」」」
盗賊の仲間達が驚愕する。
目の前の女に近づいた仲間が一瞬でバラバラに斬り刻まれたのだ。
私は【縮地】を使い硬直した盗賊達の中に踏み込んだ。
初めに手前の2人を斬り殺し、慌てて剣を構えようとする盗賊を剣ごと斬り捨てる。
「このアマぁ!」
振り下ろされる剣の腹に左手の甲を添えて僅かにズラし、空振りした剣を踏み付けながら首を刎ねる。
瞬く間に4人を殺した私を見て、荷車の周りに居た盗賊達が急いで弓を取り出し矢をつがえるが遅すぎる。
地面を踏み砕く勢いで接近する私に、鏃を向ける隙すらなくこの世を去る盗賊。
更に氷の棘で数人の盗賊を貫く。
「ひぃい!!」
「ば、化け物⁉︎」
誰が化け物だ。
私を化け物扱いした盗賊を氷漬けにして蹴り砕いた後、腰を抜かしている盗賊の頭に氷塊を叩きつけ気絶させる。
その他にも数人、生かしたまま気絶させ捕らえた後、要らない奴らは全滅させておく。
「まぁ、こんなものかしら?」
「…………マジかよ」
アルドが夢でも見ているかのような表情で盗賊の死体の中を歩み寄ってきた。
「アルドさん。捕虜にした盗賊の捕縛を手伝ってもらえますか?
アジトの場所や別行動の仲間などの情報を喋らせる必要があるわ」
「わ、わかった」
攫ったり女性を縛るつもりだったのだろう。
盗賊の荷車には布やロープが積んであったので、アルドと手分けして盗賊を縛り上げていく。
半数くらいを縛った頃、甲高い笛の音が聞こえてきた。
「笛の音だ!」
「盗賊の別働隊がいた様ね。
アルドさん、この場をお願いします。
もし、抵抗する盗賊がいたら殺して構わないわ」
「俺も……いや、わかった。村の奴らを頼む」
一瞬、自分も行くと言いそうになったアルドだが、直ぐに言葉を飲み込んだ。
そんなアルドに頷いて私は笛の音が聞こえた方に向かって駆け出した。
◇◆☆◆◇
エリー様の指示で中央倉庫で村人達と共に非戦闘員である女性や子供、お年寄りなどを守っていた私は、村の入り口付近から聞こえてくる戦闘音に緊張感を高まらせていた。
いくら元兵士だからとは言え、あのエリー様が負けるとは思えない。
エリー様の奴隷となり、トレートル商会に身を置いてからというもの、ミレイ様に戦闘訓練を付けてもらっているが、私はミレイ様に手も足も出ない。
そして、そのミレイ様よりもエリー様の方が遥かに強いらしい。
なのでエリー様が負けて盗賊が此処まで来る可能性は限りなく低いはずだ。
そして入り口付近が少し静かになった頃、森に面した方角から笛の音が聞こえてきた。
別方向からの襲撃だ!
「行ってきます!皆さんはこの場をお願いします」
「お、おい!嬢ちゃん!」
「危険だ!」
私は、止めようとする村人達を無視して笛の音が聞こえた方へ走り出したのだった。
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(・ω・)ノシ