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異国の船員達

 船室の1つに案内された私とミレイはそこで1人の男と面会していた。


 日に焼けた筋肉質の男だ。

 その髪と瞳は、数時間前に会ったユウカ・クスノキと同じ黒。

 だが、彼は東の島国の出身ではなく、南大陸にあるレキ帝国の人間だ。


「お初にお目にかかりますわ、グェン船長」

「ああ、トレートル商会の……エリー会長だったか?」

「ええ」

「まぁ、俺はあまりまどろっこしいことは苦手でな。早速商談と行こう。

 おい、例の荷を持ってこい!」


 グェンはあまり商人的な駆け引きは得意ではないのか、挨拶を早々に切り上げて部下に指示を出した。


 少しして数人の男達が厳重に密閉された上、魔法的な処理がされた木箱を5つ持ってやってきた。


「こいつが注文の品だ。確認してくれ」

「失礼しますわ」


 私が木箱の封印魔法を解き中を検めると、そこには水と共に真珠の様な粒が沢山はいっていた。

 私はそれを数粒手に取り状態を確認すると、直ぐに箱に戻して封印魔法をかけ直した。

 この封印魔法は木箱に刻印されており、一種のマジックアイテムとなっている。


 それから残りの4箱の中も検めて、問題がないことを確認した。


「問題ありません」

「ではこのまま引き渡そう」

「外に馬車を用意してありますからそこにお願い致しますわ」

「わかった」


 グェンは部下に言い付けて木箱を運び出し始めた。


「それにしてもあんな物何に使うんだ?」

「新しい商売のタネですわ。成功するかは分かりませんが」

「ほぅ、商人ってのは色々と考えるんだな」


 グェンが不思議そうな顔をするのを私は軽く受け流しながら、少し気になっていたことを聞いてみた。


「それにしてもグェン船長の船の船員達は皆元気ですわね?」

「ああ?まぁ、海の男だからな。陸のモヤシ共とは違うさ」

「いいえ、そうではありませんわ。

 グェン船長の船は南大陸を出発して西大陸経由でこの中央大陸へやってきたのでしょう?それだけの遠洋航行を行えば船乗り病に罹る者も多いのでは?」


 船乗り病とは長く陸地から離れる遠洋航行を行う船乗りが罹る奇病だ。

 口内の粘膜などから出血したり歯が抜けたりし、傷が治らなくなる恐ろしい病だ。


「ああ、そのことか。

 確かに今までは船乗り病で何人も脱落者を出したこともあったがな。

 コイツのお陰で今回は1人も発症していない」


 そう言ってグェンが部屋の棚から取り出したのは葉野菜を刻み酢漬けにした物だった。


「コレは……ザワークラウトですか?」

「そうだ。コイツを普段から食ってれば船乗り病に罹らねぇんだぜ」

「ほ、本当ですか⁉︎」

「ああ、俺は学がねぇからなんでそうなるのかは知らねぇけどよ。

 俺の国に色んな相談に乗ってくれる大層頭の良い嬢ちゃんが居てな。

 冗談のつもりで相談してみたんだ。

 そしたらこの『ざわーくらうと』っつうのを教えてくれてな。

 なんでも北大陸の偉い学者先生の研究だと、陸にいる時からコイツを食べ続ければ船乗り病に罹らないって教えてくれたのさ」

「そんなことが……コレは大発見ではないですか⁉︎」

「ああ、南大陸では結構広がっているからな。この大陸の海運ギルドにも報告が行っているはずだからそのうち広がるだろうな」


 レキ帝国にはそんな最新の研究結果を理解できる知恵者が居るってことか。


 私は別の大陸に居る識者に少し興味を惹かれながらグェンに代金を手渡した。


「それとコレは頼まれていた品ですわ」

「すまねぇな。この大陸にはあまりツテが無かったもんでな」

「いえいえ、代金はこちらから支払う分から引いてありますわ」


 私が手渡したのは彼から頼まれていた本だ。

 内容は多岐にわたる。

 様々な分野の最新の専門書や研究論文などだ。


「もしかして例の『頭の良い嬢ちゃん』からの依頼品ですか?」

「まぁな。とにかく知識が欲しいらしい。

 俺なんか5ページも読めばよく寝られるってのによ」


 グェンはがっはは、と豪快に笑った。




 その後、船を降りた私とミレイは荷運び用に手配した馬車を帝都の商会に向けて送り出した後、馬車を預けている宿屋へと戻るのだった。

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