黒き戦斧④
空になった薬瓶を投げ捨てた私に、スカーレットが迫り、後一歩で【終結の戦斧】の間合いに入ると言うところで、予備動作もなく背後に転移しました。
しかし、わたしはスカーレットが背後に現れた瞬間に反応し【終結の戦斧】の柄を胴に叩き込みました。
「がっは!」
怯んだスカーレットの腕を掴み、片手で振り回して瓦礫や石畳に叩きつけます。
「ぐっ! 【転移】」
掴んでいた感触が消えた瞬間に駆け出し、転移先で体勢を立て直す前に追撃を叩き込むのです。
「何っ⁉︎」
わたしの速度に驚くスカーレットを逃がさない様に踏みつけ、【終結の戦斧】を振り上げて魔力を込めます。
「【遍断ち】」
わたしの最大威力のスキルです。いくら伯爵一位の悪魔でもまともに受ければ只では済まない一撃です。
ですからコレに耐えられたのは意外でした。わたしはまだ僅かに息が有るスカーレットが反撃の為か、はたまた逃走の為か、魔法を使う気配が有ったので妨害する様に蹴り飛ばすと、近くの建物にめり込み止まりました。
「がっ……ば、化物め……」
「悪魔に言われたく無いですね」
「何を……した? その力は、ごほっ……人間の範疇を、超えてい……る」
「ドーピングの様な物ですよ」
わたしは先程飲み干した薬と同じ物を取り出して揺らしました。
この薬は一時的に身体能力を爆発的に上昇させる霊薬《神薬》です。
わたしの魔力に合わせて作った物ですから他人には使えませんし、副作用が強いので使い辛いのです。
「ふふふ……『漆黒』か……いずれ、Sランクに……到達すると、言われる……訳ね」
「わたしを元の場所に転移させるなら治癒のポーションを差し上げましょう」
「…………殺しなさい」
「そうですか」
【終結の戦斧】を一薙してトドメを刺したわたしは、王宮の方に足を向けたのですが、駆け出す前に全身から力が抜けて倒れ込んでしまいました。
「じ……かん切れです……か」
舌も痺れて来ましたね。
《神薬》の副作用です。半日はまともに動けませんし、動ける様になっても戦闘は無理です。
やはりわたしは此処でリタイアですね。
あの悪魔の目的は不明ですが、高位の悪魔が命懸けで動いているのですから、何か大変な事が起ころうとしているのかも知れません。
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