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黒き戦斧①

 side ユウ


「アリスちゃん⁉︎」


 あのイーグレットと言う男が手にしていたシャムシールの切っ先がアリスちゃんの胸から鮮血を滴らせながら生えています。

 不味いですね。アレは致命傷です。

 わたしはとっさに腰の魔法薬に手を伸ばしました。

 この魔法薬ならまだ間に合います。


「あらあら、敵を前によそ見をするなんて。一流の冒険者失格よ」


 ほんの直ぐ近く。少し手を伸ばせば触れる程の距離から烏の声がしました。

 ゾワリと背筋を冷やす感覚に従い戦斧を振り上げると、烏はいつの間にか手にしていたタルワールで受け止めてました。

 更にわたしが無理やり振り抜こうと力を込めたタイミングに合わせてタルワールを手放し掌底を繰り出してきます。それを片手で掴み止めると、掴んだわたしの腕を巻き込む様に身を反転させ、わたしを投げ飛ばしました。


「くっ!」


 強いですね。しかし、どうにかアリスちゃんの所に行かないと!


「向こうが気になるなら此処から離れましょうか?」


 わたしの肩を抱く様にしながら烏が言います。

 速い? いえ、有り得ません。いくら何でもわたしが知覚出来ない程の速さ何て……まさか⁉︎


「しまっ⁉︎」

「【転移】」


 一瞬の視界の揺らぎの後、わたしと烏は街中の広場に投げ出されました。


「空間転移魔法ですか」


 異空間に閉じ込めるタイプではなく現実の場所を移動させる魔法ですね。

 視界の隅にさっきまでいた王宮が見えます。最悪です。

 物理的に距離を離されてしまいました。これではアリスちゃんの治療に間に合いません。


「今すぐわたしを王宮に戻して下さい!」

「くすくす。嫌だと言ったら?」

「時間が有りません。力尽くでも戻して貰います。神器【終結の戦斧】」


 魔力が凝縮され、わたしの身の丈をも超える漆黒の戦斧となります。

 王宮まで走ったとしてもまた【転移】で戻されてしまっては意味が有りません。この場で烏を倒してアリスちゃんの治療に向かわないと!


「出し惜しみはしませんよ」

「面白いじゃない」


 烏は娼婦か踊り子の様な扇情的な服装に顔を隠すベールと言う奇妙な格好をしています。

 しかし、突然そのベールに手をかけ投げ捨てたのです。

 その下から現れたのは実に妖艶で美しい顔でした。黒い眼球に白い瞳、側頭部から生えた巻き角。


「貴女も悪魔でしたか」

「ふふふ、伯爵一位スカーレット・アマリリス。烏と名乗る前はそう呼ばれていたわ」

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