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辺境の紛争

「サージャス王国が?」


 私は戸惑いを浮かべる。

 サージャス王国は、ハルドリア王国の属国であり、王国と名乗ってはいるがその実は王都と街が3つ、いくつかの村がある程度であり、王国や帝国の伯爵領程の規模の小国だ。


 土地はあまり豊かとは言えず、鉱床などの資源にも乏しい。

 主な産業は、美しい湖や手入れの行き届いた森林などを使った観光業。

 周辺の小国だけでなく、王国の王侯貴族も別荘を持っている観光地だ。


 その為、外貨はそれなりに得ているが、その殆どは食料の輸入などに使われているので、あまり軍事力は充実していない。


 そんな国が強大な軍事力を持つ帝国に攻め込んで来るなど、自殺行為に他ならない。

 本来なら『馬鹿な事をする物だ』は鼻で笑う様な愚行だ。


 しかし、今の私にとっては場所とタイミングが非常に良くない。


「ミーシャ、地図を出して」

「はい」


 ミーシャが部屋の棚から取り出した地図を机に広げる。


「不味いわね」


 サージャス王国は帝国と王国の間にある荒野に隣接する形で東側に位置している。

 そこから帝国に攻め入るにはブロッケン渓谷を通るしかない。


 それ以外のルートでは深い森林や大きな山脈に阻まれ軍を進める事は出来ない。


 そしてブロッケン渓谷を抜けた先には私が多額の資金を投資しているトレートル商会の生産拠点となる予定の村が存在している。


 渓谷を抜けた先でサージャス王国軍が生産拠点の村に向かわない可能性も有るが、街道や河などの地形から考えると大規模な軍を進めるなら生産拠点の村が被害を受ける可能性は高い。


「ミレイ、ブロッケン渓谷には砦が有ったわね」

「はい、ブロッケン砦ですね」

「砦の常駐兵力は?」

「軍事機密なので、運び込まれる兵站の量、周囲の町からの情報による推測になりますが、およそ500〜600程かと」

「サージャス王国軍の規模は?」

「こちらも推測になりますが1200、多くても1500が限界でしょう」

「砦に籠城して防衛に徹すれば数日は問題なく戦えそうね」


 3倍近い勢力差が有ると防衛戦でもキツくなるが、ブロッケン砦は渓谷を塞ぐ形で築城された堅城だ。

 そう簡単には落とされないだろう。


「領主であるルーカス様はどう動いているの?」

「何かしらの動きは有る筈ですが、詳しくはまだ……」


 ミレイの言葉を遮る様に窓がコツコツと小さく叩かれる。

 見れば鮮やかな緑の翼を持つ鳥が嘴でガラスを叩いている。


 私が目配せをするとミーシャが駆け寄り窓を開けた。

 すると鳥が部屋に飛び込み、ミレイの腕に止まる。


「レブリック子爵領のスティアからの文です」


 ミレイが鳥の脚に付けられた器具から手紙を取り出して差出人を検めると、レブリック子爵領のトレートル商会本店を預けているグランツの秘書を任せていたスティアからの連絡だった。


「ちょうどこの紛争の件ですね…………子爵様はサージャス王国侵攻の一報を受けて、直ぐに軍を率いて迎撃に出発された様です。

 軍の規模は1800、その内、騎兵50を含む150を先遣として先行させているそうです」

「1800……迎撃には十分な戦力ね」


 迎え討つ防衛戦、練度も小国であるサージャス王国よりも多く、さらに数まで上回るならまず敗北は無い。

 ブロッケン砦で常駐兵と先遣隊が時間を稼いでいる間に本隊が合流すればサージャス王国軍は、なす術もなく追い返されるだろう。


「如何なされますか?」

「………………取り敢えずは静観しましょう。

 順当に行けばルーカス様が追い払って終わりでしょうけど、念の為に情報は小まめに集めておいて。

 何か異変が有れば細かい事でも私に報告を」

「承知いたしました」


 普通に考えてサージャス王国軍の戦力ではブロッケン砦を突破してレブリック子爵領軍を討ち倒す事など出来る筈はない。

 しかし、私は何処か背中がザワザワする様な嫌な予感を拭い切れなかった。

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(・ω・)ノシ


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